おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。

>和田ラヂヲさん プロフィール

和田ラヂヲ(わだ・らぢを)

漫画家。日本ギャグ界の至宝。その活躍は漫画だけにとどまらず、大喜利大会・似顔絵・梅干のタネ飛ばし選手権・書籍の挿画・ラジオパーソナリティなど多岐にわたる。

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第4回 VOW、ついにアメリカ進出か。

──
ちなみに、VOWというものについては、
先生は、ご存じだったんでしょうか。
ラヂヲ
もちろん知ってましたよ。
『宝島』と『ビックリハウス』は、
当時のカルチャーの最先端みたいな感じで、
ずっと追いかけてたんで。
地方では、ああいう笑いの好きな人って
あんまりいなかったんです。
『宝島』も『ビックリハウス』も、
読んでる人って
クラスに1人か2人くらいだったと思う。
──
オフビートな感じですもんね。
ちょっと都会的って言ったら変ですけど。
ラヂヲ
そう。ああいうノリの笑いが好きな人は、
たぶん世の中の「主流」じゃないんです。
──
当時の「主流」というと‥‥。
ラヂヲ
テレビのドリフとかひょうきん族とか。
芸人さんのギャグを
そのまんま言ってるお調子者のほうが、
みんなの人気者だったじゃないですか。
ぼくはそうじゃなくて、
ジワジワと
ボディブローっぽく効いてくる笑いが、
好きだったんです。
──
松山の本屋さんで買ってたんですか。
『宝島』とか『ビックリハウス』とか。
ラヂヲ
そうです。大きい書店でも
何冊かしか入ってこないんですよね。
だから、早い者勝ちになるんですよ。
発売日になると。
──
じゃあ、今月は買えなかったりとか。
ラヂヲ
そういう場合は取り寄せてもらって。
──
えっ、マジですか。
そこまでしてくださってたんですか。
何だかうれしいな。
ラヂヲ
ま、『宝島』は‥‥
立ち読みで済ますことも多かったかな。
──
ズコーッ! 
とズッコケさせていただきましたが、
そうですか(笑)。
『ビックリハウス』は買ってたけど?
ラヂヲ
『ビックリハウス』は
情報量が多いんですよ。
──
なるほど(笑)。コスパ的にね。
取り寄せてまで買う甲斐があるぞと。
当時の『宝島』ってB5版ですよね。
ラヂヲ
そうそう。ロックの特集やってたり、
安西水丸さんが4コマ描いてたり。
隅から隅まで読むというより、
興味のあるところだけ読んでた感じ。
『宝島』の場合は。
──
でも、読んでくださっていただけで
十分うれしいです。
ちなみにですけど、
先生の漫画やギャグセンスのルーツで、
いちばん太いのってどこなんですかね。
ラヂヲ
どこだろうなあ。
当然『宝島』とか『ビックリハウス』も
そうなんだろうけど、
わかりやすいところでいえば
「欽ドン」
(『欽ちゃんのどんといってみよう!』)
の視聴者投稿のコーナーとかかな。
──
ああ‥‥萩本欽一さんのテレビ番組の、
視聴者投稿コーナー?
ラヂヲ
まずラジオでやってたらしいんだけど、
ぼくはテレビからなんです。
「バカウケ、ややウケ、ドッチラケ」
とかっていって、
視聴者からのハガキに茶々を入れたり、
あのへんがルーツかもしれない。
──
もちろん「欽ドン」という番組名は
存じ上げていますし、
「バカウケ、ややウケ、ドッチラケ」
というのも聞いたことあるんですが、
世代的には、見たことないんですよ。
欽ちゃんがハガキを読むんですよね。
ラヂヲ
そうなんです。ゴールデンタイムに。
あとは『ビックリハウス』でいえば
「ビックラゲーション」という
読者投稿のコーナーがあったんです。
──
いま先生がFM愛媛でやってるような、
ああいう空気感は、
そのあたりにルーツがありそうですね。
ラヂヲ
そう考えると、
VOWって、欽ちゃんの番組とも違うし、
「ビックラゲーション」とか
他の雑誌の読者投稿コーナーのノリとも
また少し違う感じがしますね。
──
たしかに。
ラヂヲ
ものを申さない感じがあるっていうか。
グイグイこないというか。
──
ああ、なるほど。たしかに
万人ウケするわかりやすさはないです。
ラヂヲ
テンション的にちょっと低めというか、
どうおもしろがるか、
読者に反応を委ねるところがあるよね。
ただ、のちのぼくの不条理な漫画には
つながってると思ってるんですよ。
このVOWの独特のノリというものが。
──
あっ、そうですか。
ラヂヲ
ぼくがデビューしたてのころの作風に
近いような気がする。
──
つまり『イキナリどうだ』とか
『スカの群れ』とかの、初期の作風に。
ラヂヲ
そうそう。看板ネタとかやってたしね。
あれは間違いなく、
VOWからの流れだったと思います。
──
おお~。うれしいです。
ラヂヲ
でも、何て言ったらいいのかな、
爆発的にヒットすることってないじゃない。
VOW的なものって。
──
はい、おっしゃるとおりです。
VOWは天下を取りにいかないですよね。
というか、
VOWが天下を取ったら心配になります。
われわれ人類のことが。
ラヂヲ
そうですね。他方で、
『オースティン・パワーズ』とか観てると、
『VOW』に近いんじゃないかなと
思ったりもする。
だからアメリカの人も、
こういう笑いって好きなんじゃないかな。
──
まさかのVOWアメリカ進出構想!
ラヂヲ
コネチカット州の、ヘンな看板とか。
──
アリかもしれないですね‥‥真剣に。
そこは耕されていないかもしれない。
ラヂヲ
アラスカVOWとか。
──
わはは。今日のシャケがみたいな投稿が
どんどん来るのかなあ。
昨日のオーロラが‥‥とか。
コメント、なんて返したらいいんだろう。
ラヂヲ
メジャーで通用するコメント力が
求められますね。がんばってください。

『VOW 30周年スペシャル』より 『VOW 30周年スペシャル』より

(つづきます)

2025-02-15-SAT

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