
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
和田ラヂヲ(わだ・らぢを)
漫画家。日本ギャグ界の至宝。その活躍は漫画だけにとどまらず、大喜利大会・似顔絵・梅干のタネ飛ばし選手権・書籍の挿画・ラジオパーソナリティなど多岐にわたる。
- ──
- ちなみに、VOWというものについては、
先生は、ご存じだったんでしょうか。
- ラヂヲ
- もちろん知ってましたよ。
『宝島』と『ビックリハウス』は、
当時のカルチャーの最先端みたいな感じで、
ずっと追いかけてたんで。 - 地方では、ああいう笑いの好きな人って
あんまりいなかったんです。
『宝島』も『ビックリハウス』も、
読んでる人って
クラスに1人か2人くらいだったと思う。
- ──
- オフビートな感じですもんね。
ちょっと都会的って言ったら変ですけど。
- ラヂヲ
- そう。ああいうノリの笑いが好きな人は、
たぶん世の中の「主流」じゃないんです。
- ──
- 当時の「主流」というと‥‥。
- ラヂヲ
- テレビのドリフとかひょうきん族とか。
芸人さんのギャグを
そのまんま言ってるお調子者のほうが、
みんなの人気者だったじゃないですか。 - ぼくはそうじゃなくて、
ジワジワと
ボディブローっぽく効いてくる笑いが、
好きだったんです。
- ──
- 松山の本屋さんで買ってたんですか。
『宝島』とか『ビックリハウス』とか。
- ラヂヲ
- そうです。大きい書店でも
何冊かしか入ってこないんですよね。 - だから、早い者勝ちになるんですよ。
発売日になると。
- ──
- じゃあ、今月は買えなかったりとか。
- ラヂヲ
- そういう場合は取り寄せてもらって。
- ──
- えっ、マジですか。
そこまでしてくださってたんですか。 - 何だかうれしいな。
- ラヂヲ
- ま、『宝島』は‥‥
立ち読みで済ますことも多かったかな。
- ──
- ズコーッ!
とズッコケさせていただきましたが、
そうですか(笑)。 - 『ビックリハウス』は買ってたけど?
- ラヂヲ
- 『ビックリハウス』は
情報量が多いんですよ。
- ──
- なるほど(笑)。コスパ的にね。
取り寄せてまで買う甲斐があるぞと。 - 当時の『宝島』ってB5版ですよね。
- ラヂヲ
- そうそう。ロックの特集やってたり、
安西水丸さんが4コマ描いてたり。 - 隅から隅まで読むというより、
興味のあるところだけ読んでた感じ。
『宝島』の場合は。
- ──
- でも、読んでくださっていただけで
十分うれしいです。 - ちなみにですけど、
先生の漫画やギャグセンスのルーツで、
いちばん太いのってどこなんですかね。
- ラヂヲ
- どこだろうなあ。
当然『宝島』とか『ビックリハウス』も
そうなんだろうけど、
わかりやすいところでいえば
「欽ドン」
(『欽ちゃんのどんといってみよう!』)
の視聴者投稿のコーナーとかかな。
- ──
- ああ‥‥萩本欽一さんのテレビ番組の、
視聴者投稿コーナー?
- ラヂヲ
- まずラジオでやってたらしいんだけど、
ぼくはテレビからなんです。 - 「バカウケ、ややウケ、ドッチラケ」
とかっていって、
視聴者からのハガキに茶々を入れたり、
あのへんがルーツかもしれない。
- ──
- もちろん「欽ドン」という番組名は
存じ上げていますし、
「バカウケ、ややウケ、ドッチラケ」
というのも聞いたことあるんですが、
世代的には、見たことないんですよ。 - 欽ちゃんがハガキを読むんですよね。
- ラヂヲ
- そうなんです。ゴールデンタイムに。
- あとは『ビックリハウス』でいえば
「ビックラゲーション」という
読者投稿のコーナーがあったんです。
- ──
- いま先生がFM愛媛でやってるような、
ああいう空気感は、
そのあたりにルーツがありそうですね。
- ラヂヲ
- そう考えると、
VOWって、欽ちゃんの番組とも違うし、
「ビックラゲーション」とか
他の雑誌の読者投稿コーナーのノリとも
また少し違う感じがしますね。
- ──
- たしかに。
- ラヂヲ
- ものを申さない感じがあるっていうか。
グイグイこないというか。
- ──
- ああ、なるほど。たしかに
万人ウケするわかりやすさはないです。
- ラヂヲ
- テンション的にちょっと低めというか、
どうおもしろがるか、
読者に反応を委ねるところがあるよね。 - ただ、のちのぼくの不条理な漫画には
つながってると思ってるんですよ。
このVOWの独特のノリというものが。
- ──
- あっ、そうですか。
- ラヂヲ
- ぼくがデビューしたてのころの作風に
近いような気がする。
- ──
- つまり『イキナリどうだ』とか
『スカの群れ』とかの、初期の作風に。
- ラヂヲ
- そうそう。看板ネタとかやってたしね。
あれは間違いなく、
VOWからの流れだったと思います。
- ──
- おお~。うれしいです。
- ラヂヲ
- でも、何て言ったらいいのかな、
爆発的にヒットすることってないじゃない。 - VOW的なものって。
- ──
- はい、おっしゃるとおりです。
VOWは天下を取りにいかないですよね。 - というか、
VOWが天下を取ったら心配になります。
われわれ人類のことが。
- ラヂヲ
- そうですね。他方で、
『オースティン・パワーズ』とか観てると、
『VOW』に近いんじゃないかなと
思ったりもする。 - だからアメリカの人も、
こういう笑いって好きなんじゃないかな。
- ──
- まさかのVOWアメリカ進出構想!
- ラヂヲ
- コネチカット州の、ヘンな看板とか。
- ──
- アリかもしれないですね‥‥真剣に。
そこは耕されていないかもしれない。
- ラヂヲ
- アラスカVOWとか。
- ──
- わはは。今日のシャケがみたいな投稿が
どんどん来るのかなあ。
昨日のオーロラが‥‥とか。 - コメント、なんて返したらいいんだろう。
- ラヂヲ
- メジャーで通用するコメント力が
求められますね。がんばってください。
『VOW 30周年スペシャル』より
(つづきます)
2025-02-15-SAT
