
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
和田ラヂヲ(わだ・らぢを)
漫画家。日本ギャグ界の至宝。その活躍は漫画だけにとどまらず、大喜利大会・似顔絵・梅干のタネ飛ばし選手権・書籍の挿画・ラジオパーソナリティなど多岐にわたる。
- ──
- 先生とVOWを見るのは、おもしろいなあ。
- ただ単純にわははと笑うだけじゃなく、
さらに深堀りしてくださるから、
見慣れたこのネタの奥に、
まだこんなおもしろさが隠れていたんだ!
みたいな発見があります。
- ラヂヲ
- お題を出されている感じがするんですよ。
- ──
- なるほど。さすがは大喜利の人だ。
- ラヂヲ
- 他にも正解があるんじゃないかみたいな。
- 相手が出した答えに対して、
じゃあ、どういう答えを返すかというね、
ついそんなふうに考えちゃうんです。
- ──
- そうか‥‥このおもしろさは、
VOWと大喜利が融合してるからなのか。
- ラヂヲ
- 奥野さんの好きなネタは、どれですか。
ちなみに。
- ──
- そうですね、いろいろあるんですが、
たとえばこの、
政経の教科書に載ってたって写真とか。
- ラヂヲ
- ああー、これね。
『VOW7』より
- ──
- この膝の角度と曲げ具合が、
すべてを物語っているじゃないですか。 - こんなに遠くから見ても、
絶対にアレだとわかるってすごいなと。
- ラヂヲ
- ぼくは、いまあそこで用を足してたら、
数分後、
この人たちのところに流れてくるよな、
ということが気になったかな。
- ──
- たしかに!
- つまり、被害に遭う直前の人々の姿が、
克明に記録されたドキュメントタリー。
ピュリッツァー賞ものですね。
ちなみに膝をこんなふうに曲げるのは、
どうしてなんでしょうか。
- ラヂヲ
- われわれ「水滴」をピシッと切るため、
終了後に上下運動するわけだけど、
そのためじゃない? - 本能的なものなのかな。
犬や猫もお尻を下げて用を足すもんね。
- ──
- ぼく自身は、いちおう社会人ですし、
ここしばらく「外で」っていうのは
ないんですけれども、
たぶん身体では覚えてると思うんです。
- ラヂヲ
- この膝の角度を。
- ──
- はい。ちなみにマンガで描くときにも、
こういう感じになるんですか?
- ラヂヲ
- だいたい後ろ向きで描くんじゃないかな、
ぼくの場合は。斜め後ろとか。 - だから、ここまで膝を曲げる描写には
ならないと思いますね。
- ──
- こんなふうに真横から描いてしまうと、
描いてはいけないものまで、
描かざるを得なくなってしまいますし。
- ラヂヲ
- そうなんですよ。
- あと、すごいなと思ったのは、
歌舞伎町のキャバクラの開店祝いかな。
「ジョン・レノンより」って。
- ──
- 「小野ヨーコ」さんに宛てたやつ。
『VOW 30周年スペシャル』より
- ラヂヲ
- きっと「小野ヨーコさん」が実在の人物で、
それ以外でふざけてるんでしょうね。
「株式会社イマジン」も含めて。 - 笑えるかと言ったらそうでもないんだけど、
「ジョン・レノン」という
墨の筆文字は「強いな」と思ったんです。
- ──
- いま‥‥稲妻のように思い出したんですが、
ぼくの父親が亡くなったとき、
それは2008年なんですが、
先生が、葬儀にお花をくださったんですよ。
- ラヂヲ
- ええ。もう、そんなに前なんですね。
- ──
- そこに「和田ラヂヲ」と書いてあった。
木の板に墨の筆文字で。 - 親戚は田舎の高齢者が多いわけですが、
「和田ラヂヲ」さんって‥‥と、
軽くザワついていたのを覚えています。
東京ではたらいていると、
いろんな人と
おつき合いがあるんだねえと言われました。
- ラヂヲ
- いつも、ちょっと迷うんですよ。
和田ラヂヲでいいのかなあって。 - でも、和田ラヂヲで送らなかったら、
わかんないかもしれないし。
- ──
- そうですよね。
- ぼくは和田ラヂヲさんからお花が来て
うれしかったです。
- ラヂヲ
- ああ、ペンネームの強さってあるよね。
- 明治時代の女の人とか
カタカナの名前の人が多かったから、
案外、昔の人かと思われてたりしてね。
- ──
- トメさんとかクマさんとかの流れで、
ラヂヲさん。なるほど。
- ラヂヲ
- こちも味わい深いですよ。セコム。
- ──
- はい。
- ラヂヲ
- ‥‥セコムですよね? あの。
- ──
- だと思います。
『VOW 30周年スペシャル』より
- ラヂヲ
- これは、ぼくが漫画で
料理を描くときの方法に似てるんです。 - サラダを描いたときとか、
矢印を引っ張ってサラダと書くんです。
なぜなら「サラダに見えない」から。
それに近いなと思いました。
- ──
- たしかに、セコムに入ってるようには
見えないです‥‥というか、
この貼り紙のせいで、
逆に、もっと見えなくなった気もする。
- ラヂヲ
- 泥棒に対するトラップかもしれません。
- ──
- うまい!
- 「セコムしてませんよ〜」と見せかけて、
「セコムしてますよ!」
- ラヂヲ
- ともあれ、
これで効くんならこれでいいですよね。 - これで済むんなら、これで。
- ──
- 通常、セコムさんと契約すると、
あのシールをもらえるわけですけれども。
- ラヂヲ
- つまり、シール待ちの可能性もあるのか。
- 来週まで届かないから、
それまではこれで泥棒をしのごう‥‥と。
無理か。
『VOW9』より
(つづきます)
2025-02-14-FRI
