だいどこ道具の土切敬子さんが
お隣の駅、徒歩で移動できる距離に
新しいお店をオープンさせました。
その名も、「おちゃ道具ツチキリ」。
お店におじゃまして、
お店づくりのお話しをうかがってきました。

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第1回 新しい場所、おじゃまします。

──
新しい「おちゃ道具ツチキリ」のお店オープン、
おめでとうございます!
2024年11月に開店されて。
土切
ありがとうございます!
──
「だいどこ道具」とは別にもう一軒、というのは
なにかきっかけがあったんですか?
土切
「だいどこ道具」のほうが、もう8年に入るんですね。
それでまあ、なんて言うんですか、
なんか、もうちょっと刺激が欲しい(笑)、というような。
──
なるほど(笑)。
土切
何かちょっと違うことをやってみたいなと思ったのと、
「だいどこ道具」のお店も、商品が増え続けて、
もう満杯、ギューギュー詰めになってしまっていて。
──
「だいどこ道具」そのものも増えてきてますよね?
土切
そうですね。
もうぜんぶ溢れちゃってね。
──
ディスプレイしてあるのとは別で、
在庫の置き場もありますし‥‥。
土切
そうなんですよー。
自宅スペースも在庫でいっぱいで。
もうひとつお店があったほうがいいんじゃないかな。
「おちゃ道具」を分けてもいいのかな。
と思って、なんとなく探し始めてました。
──
すぐに見つかったんですか?
土切
今のだいどこ道具から、ちょっと離れて、
最初は吉祥寺で探してたんですけど、
なかなかむずかしくて。
それでお隣の駅の三鷹台もいいかも。と。
このあたりは、静かだし。
今回は、いいご縁があって、三鷹台のここを
お借りしたんですよね。
──
三鷹台に目を向けたら、ここが。
土切
そうですね。
でも、すぐに決まったわけじゃなくて、
最初にいいなと思ったところは借りられなかった。
で、知り合いのカフェの人に訊いてみたら、
「駅の近くにいい空間があるよ」って教えていただいて。
──
じゃあ、ご縁のつながりみたいなことで。
土切
そうなんです、ご縁で。
──
ここはもともとは、どういう場所だったんですか。
土切
ここは、そもそもはガレージの空間なんですけど、
大家さんが、
グラフィックのデザイン事務所として使ってたんですね。
ですけど、コロナの影響で使わなくなっちゃって、
大家さんはご自宅でお仕事されるようになって、
ここはずっと空いていたみたいで。
みんな「もったいないね」って、
話してたんですって。
──
そうなんですね。
外観もすてきで、通りがかったら、
「何だろう?」
って足を止めちゃうと思います。

土切
隣の駅ではあるけど、
あまりこっち方面には来てなかったから
知らなかったんですけどね。
大家さんもあんまり適当な人に貸したくないと
思っていたらしいんです。
──
誰でもいいわけじゃないでしょうね。
土切
それと、大家さんはうちの「だいどこ道具」にも
来てくださったことがあったらしくて。
それで「ああ、ツチキリさんだったらいいかも」って、
なんかそこから始まったことですね。
──
おおー、すごい。まさにご縁ですね。

──
ここは、シュッとした空間ですね。
土切
「だいどこ」は自宅とお店が一緒っていうのもあって、
友だちの家に遊びに来たみたいな、アットホームさ。
もうひとつやるんだったら、
ぜんぜん違う感じの、多少、スタイリッシュというか、
静かな、落ち着いた空間にしたいと思っていたんです。
──
あちらの生活感とは、ぜんぜん違います。
土切
生活感は、ないですね。
せっかくならばと、
気取りたいところもあるんですよね(笑)。
──
気取れてると思います(笑)。
でも、ほどよくて、遠い存在にはなってないです。

土切
でも最初はね、じつはちょっと怖かった。
シックで落ち着いた暗めのイメージっていうのが、
私自身、好きなのかどうなのか(笑)。
よくわからなかったんです。
でもね、「だいどこ」との対比はつけたかったし、
それと、ギャラリー的な役割もつけたかったので、
生活空間から離れた感じの方がいいなと思って。
──
なるほど。
土切
「だいどこ」でも、ギャラリー的な展示は
何度もやってるんですけど、
周りのものが目に入って、ゴチャゴチャしちゃうんですね。
だから、こういう、見た目も静かっていうか、
ちょっとスッとしたところのほうが、
ギャラリースペースとしては合ってるのかな、って。
──
お茶の時間っていうのも、お料理や食事とは違う、
いったん、切り離すというか。
オンとオフみたいな存在という気もします。
土切
うん、うん、そうですね。
普段の、家庭料理のときとは違う。
そういう空間にしたらいいかな、って。
──
ちょっと贅沢な時間を楽しめるような、
そういう感じのお店だと感じます。
今回の内装をお願いしたのが、
沖縄のルフト(Luft)さんだそうで。
土切
そうです。
すてきな店舗を手掛けられていて、
前から存じ上げていました。
「だいどこ道具」でも扱っている
醤油差しとか、
料理関係のプロダクトも作ってらっしゃるし。
ラワン材のようなカジュアルな素材を
シックに使うのを得意とされていて。
──
合うかもなと?
土切
知り合いのかたを通して訊いてもらったら、
「やります」って言ってくださって。
沖縄拠点の方々なので、
東京と離れてるのが、ちょっと心配だったんですけど
月に何度も東京に来てらっしゃるし。
ルフトさんはおふたりでやってらして、
女の方なんですよ。
それで打ち合わせなんかでも、話しやすかったですね。
聞いてみたら、私と大学も、学部も一緒で。
「先輩」って言ってくださって(笑)。
──
そういうことがあると、話しやすくて、
距離が近くなりますね。
土切
そうそう。大家さんも女の人なので。
やりやすかったです。
──
なんだか、すごく楽しそう。
土切
ここって、最初はガレージだったわけですよね。
それを大家さんがグラフィックの事務所にしてた空間。
雰囲気がもう出来上がってるし、
たいしてお金かからないかな~。
なんて思ってたんですけど(笑)。
やっぱり、ものすごくいろんなことを提案してくださって。
ああ、なるほどなぁと思って。
でも、ピシッとやっていただいて、こんな異空間に。
よかったなと思ってますね。
──
やっぱりプロの目線ですね。
土切さんご自身が決める部分もあったんですか。
土切
サイドの棚を4段か、3段にするか、すっごい悩みました。
「だいどこ」はね、5段ぐらいあるんですよ。
収納量を考えると、3段じゃ足りないかな、とか。
でも、5段あっても、一番上はお飾りみたいになっちゃう。
じゃあ、いらないのかなと思って。
ひとつひとつのモノがよく見えるほうをとった感じです。

──
そういうところも、「だいどこ」との違いですね。
土切
あと、棚の幅もね、すごい考えたんですよ。奥行き。
デパートなんかだと、もっと広いんですよね。
「おちゃ道具」ってモノが小さいからねぇ。
最初はすごく深い棚を提案されてたんだけど、
それだと、おさまりが悪いんじゃないかなと思って、
狭くしてもらったんです。
でも、これでよかったと思ってます。

──
一列に置かれていて、
すっきりと道具がよく見えて、ギャラリーっぽいですね。
あ、下の段だけちょっと深くなってますね。
土切
うん、そう。下の方はちょっと深くしてもらいました。
棚の奥行きは、ほんと悩みましたねー。
──
悩んだ時間が、こんなふうに
できあがったんですね。
こっちも、在庫は一緒に並べないことにされたんですね。
土切
スッキリさせたいし、
それはあっちと同じにしました。

──
今、並んでるのは、
「だいどこ」から持ってきたものですか?
土切
基本的にはそうですね。
ちょっと増やしましたけど。
──
たしかによく見ると、見覚えがありますけれど、
ぜんぜん違うものに見えるような気がします。
のびのびしてる。
土切
そう。向こう(だいどこ道具)が多過ぎたんですよね。
ほんとに私、こういうシックな空間に慣れてなかったから、
ここに合うものが私に集められるのかな。
って、ちょっと不安なところもあったんですけどね。
──
なじんでますね、元からのものも。
違和感を感じません。
鉄瓶とか、ガラスのサーバーとか、
ちょっとボリュームのあるアイテムも、
ゆったり並んでいて見ごたえがあります。
こういうのもこれから広がっていきそうな。
土切
そうですね。
やかんも、なかなかいいのがなくてね~。
──
いいのが見つかったら、ここに並ぶんですね。
あ、スパイスミルがなぜここに?
土切
そこはね、チャイのコーナーなんです。
チャイを入れる道具として、スパイスミルとか、
鍋とか木べらが置いてあります。
この店の中だと、
鍋がちょっととうとつですよね。
──
チャイコーナー、なるほど!
これからの展開も楽しみですね。

(つづきます)

撮影:長野陽一

2025-02-12-WED

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    おちゃ道具ツチキリ
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    東京都 三鷹市井の頭1丁目27-1
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