店主・土切敬子さんのイチオシである
「味わい鍋」
ほぼ日支店でも販売させていただくことになりました。
数々の鍋を使ってきた土切さんが
この鍋をすすめる理由とは?
販売元の藤栄の井上さん、大野さんにも
同席いただき、
「味わい鍋」のことを、わいわいとうかがいました。

  • ──
    まず。土切さんとこのお鍋の出会いを
    教えてください。
    土切さんがこのお鍋に出会った直後、
    「すごい出会いがあったんですよー!」って
    おっしゃっていたのが印象的でした。
    土切
    そうそう。井上さんがフラッと入ってこられて。
    藤栄・井上
    はい。その日、このお鍋を鋳造している
    山形工場に撮影に行く予定でした。
    出張前に少し時間があったもので、
    前から気になっていた、このお店ツチキリに
    立ち寄ってみたんです。
    土切
    ずいぶん大きな荷物を持ってらして。
    「すごい荷物ですね」
    って話しかけたんでした。
    藤栄・井上
    はい。
    「実は鍋の撮影で山形に行くところで、味わい鍋といいまして」
    と写真をお見せしたんです。
    土切
    聞いたことがあるなと思って、
    見させてもらったら、良さそうだし、
    知ってる形で。
    持ち手の部分に引っ掛けるフックがついていて。
    「その形のエバーウェアというお鍋が
    昔から好きで、今もずっと探しているんですよー」
    なんて話してて。
    ──
    エバーウエアって、どんなお鍋なんですか?
    土切
    スタイリストの堀井和子さんが
    ミルクパンを使っているのを雑誌で見て、
    学生時代に使ってましたね。
    あの頃、ちょっと流行ったんですよね。
    最近になっても時々思い出して、
    探すんだけど廃盤になっているし、
    なかなか手に入らなくて。
    藤栄・井上
    そのときに、
    「あそこにある、梅酒を漬ける瓶を
    デザインした方がデザインされた鍋なんですよ」
    とお伝えしたんです。
    土切
    「え? 密封びん!?
    シマヤン? 島崎先生ですか?」
    って。
    そしたら井上さんが
    「鳥肌が立ちました」
    って。
    藤栄・井上
    はい。もうびっくりして。
    土切さんの先生だったんですよね。
    ──
    持ってきたお鍋が、
    店主の恩師のデザインだったと。
    土切
    教え子といっても、先生は工芸工業デザインで、
    わたしがテキスタイルだったので、
    ちょっと単位をとったくらいなんですけど、
    びっくりでしたね。
    先生のデザインだったら、
    ちゃんと拝見しなくちゃなと。
    藤栄・大野
    その時代、どこの百貨店にも、
    薄いアルミのお鍋がズラーっと並んでいましたが、
    肉厚なアルミ鍋というのは、めずらしかったようですね。
    ──
    この「味わい鍋」は、
    肉厚なアルミ鍋なんですね。
    土切
    そう。当時は、そういう煮込み系のお鍋は
    なかったですね。
    ──
    じゃあ「味わい鍋」は、
    今までなかったお鍋が登場した、
    という感じだったんですね?
    土切
    そうですね。
    それがいつでしたっけ?
    藤栄・大野
    1985年です。約40年前。
    島崎先生は北欧デザインを日本に持ってきた、
    第一人者でもあったすてきな方で。
    あちらの方では主流だった、
    鉄の鋳物ホーロー鍋で作る煮込み料理を食べて、
    「日本にも、コトコト煮込むお鍋があったらいい」、
    「ラタトゥイユが作りたい」
    ってこのお鍋を作られたそうです。
    ──
    40年前に、ラタトゥイユ。
    おしゃれですね~。
    このお鍋もブームになってたんですか?
    藤栄・大野
    そうですね、百貨店で
    実演販売をやったりしていて、
    人気だったそうです。
    当時から今でも使われているという方も、
    多いです。

     

     

    土切
    このお鍋、無水鍋なのに片手鍋で軽い。
    というところが、いいなと思って。
    ごはんを炊くのも、やってみたら
    とってもおいしく炊けて。
    ごはんを炊くならやっぱり両手鍋のほうが
    雰囲気が出ますけど、
    片手でもできないことはないですね。
    なんでもおいしくできちゃいますよ。
    ──
    わたしも土切さんがそこまで言うなら、
    と試してみたんです。
    鉄のフライパンと、味わい鍋で
    同時にれんこんを炒めてみたり、
    色々やってみましたが、
    味わい鍋だとみずみずしい気がして。
    水分が保たれている感じなのかな、
    分厚いから蓄熱もすごくって。
    藤栄・井上
    そうなんです。
    わたしも余熱でゆで鶏を作ろうとしたら、
    すごいかたくなっちゃったんです。
    この鍋は、とにかく冷めないんですよね。
    それがいいところなのですが、
    余熱料理のときには、
    いつもより短めがいいですね。
    ──
    ものすごい蓄熱パワーなんですね。
    土切
    だから、炊いたごはんも冷めなくていいんですよね~。
    藤栄・井上
    ウォーターシール効果というんですけども。
    フタの重量と、
    フタと本体の間にたまった水、
    これは鍋の中の蒸気なんですが、
    それがシールのような役目をして、
    密閉されるんです。
    そうなることで鍋の中の温度が保たれて、
    水分が逃げないので、
    無水調理に使えるということなんです。
    土切
    わたし一番はじめにやった料理が
    チャーハンだったんです。
    重いから振れないかなと思ったんだけど、
    全然振れたんですよね。
    だからやっぱり軽いんだなって思って。
    フタが重いだけで、本体は意外と。
    ──
    たしかに全然振れる重さですね。
    あとは、どんなお料理がいいんでしょう?
    土切
    肉じゃがとか、かぼちゃとか煮物もいいですよね。
    フッ素加工されてるので、こげも気にしなくていい。
    はじめに炒めて、煮込むようなものにも
    すごくいいです。
    焼き目をつけてから作るような、
    カレーなんかでもステンレスの鍋だと、
    ちょっと焦げちゃったりもあると思うんだけど、
    そういうのはないですよ。
    あとは、りんごのスライスを入れて、砂糖を入れて、
    そのままほっておけば、
    簡単にコンポートなんかもできちゃいます。
    ──
    こげる心配がないから。
    土切
    そう。そのりんごコンポートを教えてくださったのが、
    近所のお料理教室をやっている先生で。
    先生にこのお鍋を使ってもらったら、
    とっても気に入ってくださって。
    少し高齢の方なんだけど、
    「わたしはもう、この鍋ひとつでいい!」
    っておっしゃってましたよ。
    ──
    なんと。
    土切
    気に入って、色んなお料理を試されていて。
    レシピまで考えてくださって。
    ツチキリの店頭では配布させてもらってます(笑)。
    料理に慣れてない方とか、
    ひとり暮らしを始める方とか、
    まず1つめというのにもオススメですよね。

    ▲先生のレシピで作った、ペンネ。
    茹でずに、お鍋にソースとお水を入れて作ります。

    ──
    かと思えば、料理教室の先生でも満足。
    それを聞いて、
    わたしも義母にプレゼントしたら、
    すごくよろこんでくれて。
    「こういうのが欲しかった!」
    って。
    土切
    ご夫婦だけだったら、片手鍋ひとつあったら
    だいぶ重宝するでしょうね。
    先生も、
    「料理を散々やってきた人で、
    もう簡単にしたいだけど美味しく作りたい。
    っていう人にもってこいなのよ」
    と言ってました。
    ──
    洗うのも、さっときれいになるし、
    楽ですよね。
    まずひとつ買うなら、どっちのサイズをすすめますか?
    土切
    まずは、片手かな。少しお安いですし。
    これがあれば、フライパンにもなるし、
    鍋にもなるしでね。
    藤栄・井上
    フライパンにもなるといえば、
    22cmの両手鍋も実は、
    ひっくり返して餃子を焼けますというのを
    うたっています。
    ──
    ひっくり返す?
    藤栄・井上
    フタの部分が、浅いフライパンになるんです。
    ──
    ええ?
    土切
    ちょっとおもしろいですよね(笑)。
    藤栄・井上
    餃子や目玉焼きを焼いて、
    本体をかぶせることで、蒸されてちょうどよいという。
    やってみてください(笑)。

    ▲フタにも、フッ素加工が施されています。

    ──
    いろいろチャレンジしてみたいですね。
    ほぼ日では扱わないのですが、
    18cmというさらにちいさいのも、
    あるんですか?
    藤栄・井上
    そうなんです。
    18cmと22cmがはじめからあって、
    グッドデザイン賞もとっているのですが、
    間のサイズがほしい、と
    お客様の声を受けて後からうまれたのが、
    片手の20cmでした。
    土切
    食が細くなってきた
    高齢の方とか、やっぱり20cmだと大きいみたい。
    それぞれに需要がありますね。
    ──
    なるほど、ごはんだと、
    それぞれどれくらい炊けるんですか?
    藤栄・井上
    20cmで3合、
    22cmで4合ですね。
    もうひとつ、両手特深22cm(※)というサイズも
    あるんですが、それは6合です。
    (※両手特深22cmは、ほぼ日では取り扱いません)
    ──
    ごはんを炊くにも、
    この蓄熱で
    おいしく炊けるんでしょうか。
    土切
    そうでしょうね。
    藤栄・井上
    正確に言うと、
    しっかり蓄熱されて、
    熱の伝わり方がまろやかなので
    おいしく炊ける。ということです。

    ──
    なるほど。
    炊飯は沸騰してからどれくらいですか?
    土切
    といだら、お米の10%増量した水を入れて、
    沸騰してから弱火で15分。
    火を止めて5分むらせば、おいしく食べられます。
    炊飯器よりも、はやいです。
    ──
    魅力的です。
    お鍋でごはんを炊くということを、
    ハードル高く感じる方もいるかもしれませんが、
    「味わい鍋」なら、こげの心配もないし、
    楽ですね。

     

    藤栄・井上
    このお鍋、だいぶ長持ちすると思います。
    今は「再加工・修理サービス」というものを
    しているんですけれど。
    ご年配の方からのご依頼も多くて。
    ──
    どれくらい使ったものが依頼されるんですか?
    藤栄・井上
    もう、20、30年という方も。
    ──
    そんなに?
    藤栄・井上
    こびりついてたものが、かたく残っていたり、
    内側がはげたりとか。
    それでも使い続けてくださってて。
    うちのこのサービスだと、
    一度塗装をすべてはがして、
    きれいにしてからフッ素と塗装をかけるので、
    新品同様になります。
    クオリティも、新品同様。
    ──
    それはうれしいですね。
    捨てるのはしのびないですし。
    藤栄・井上
    そうですね。
    このお鍋、ほんとうにていねいに作られていて。
    一点一点手作りみたいなもので。
    職人さんも「鋳造はだれだれ」「塗装切削はだれだれ」と
    決まった方がされていて。
    土切
    じゃあ、たくさん作れないから、
    たくさん売れたら困っちゃう?
    藤栄・井上
    じつは、製造元の文化軽金属鋳造さんは、
    「また職人を増やしたい」とおっしゃてます!
    職人さんがご高齢になり、
    川口のほうの鋳造工場は閉めましたが、
    大きな炉が4つ、そのままになっているんです。
    だから、味わい鍋がたくさん売れたら、
    ここに全国から職人さんを集めて、
    もう一度、炉に火を入れたい。とおっしゃっていました。

    ──
    その炉に、火をまた入れられるように、
    微力ですが、販売させていただけたら。
    土切
    使えば、気に入ってもらえると思います!
    イチオシです。
    ──
    そうそう、そういえばほぼ日にも、
    20年くらい、買い替えながら使い続けるという人が
    いたんです。
    土切
    そういう方にはぜひ、修理サービスも
    紹介したいですよね。
    安心して使えます。
    ぜひ、わたしの推し鍋を、
    お試しくださいねー!

    おしまいです。
    土切さん、藤栄の井上さん、大野さん
    ありがとうございました!

     

     

    「味わい鍋」