──

今日は代々木公園で、
動物言語学者の鈴木俊貴さんに研究者の仕事について
聞きたいと思います。
鈴木さんはシジュウカラの鳴き声を研究していて
シジュウカラ語の存在を明らかにしたんですよね。

代々木公園にはよく来るんですか？

鈴木

よく来ます。
鳥の観察の授業で大学生を連れて来たことも。

──

こんな都会にも実習ができるくらい
鳥がいるんですね。

鈴木

めちゃめちゃいます。
シジュウカラもいますし、
タカが見られるときもあります。

──

タカもいるんですか！

鈴木

たまにいますよ。

──

こちらは鈴木さんの研究に欠かせないものですね。

鈴木

そうです。
鳥の観察するための基本的なアイテムで、
双眼鏡と、
観察したことをメモする野帳という小さいノートを
常にカバンの中に入れてます。

──

帽子とかジャケットとかも大事ですか？

鈴木

そうですね。
ジャケットは汚れてもいいものを着て、
あとは日よけで帽子をかぶって
森の中を歩くことが多いです。

（ツピーツピー）※鳥の鳴き声

あっ、いま鳴いてるのがシジュウカラっていう鳥です。

（ツピーツピー）

これです。
たぶん、ここから多分60メートル先ぐらいにいる。

（ピーツピ　ピーツピ）

あ、今、鳴き声を変えたのわかりました？　
最初は「ツピー　ツピー」だったのが、
そのあと、「ピーツピ　ピーツピ」というふうに
変えました。
同じ鳥が鳴き声を変えているんです。

──

すごい。
早速シジュウカラの鳴き声が聞こえましたね。

鈴木

彼らは今ちょうど子育ての時期（取材は4月）なので、
オスとメスで家族になり
公園や森の中に縄張りをつくって
卵とかヒナを育てるんですね。

オスがその縄張りを守る役割をしていて、
そのときの声が今の「ツピー　ツピー」。

この「ツピー　ツピー」だけではなく、
「ピーツピ　ピーツピ」としたり
何パターンか出すことができるんですね。

実はヨーロッパにもシジュウカラの仲間がいて、
さえずりのパターンが多ければ多いほど、
早く縄張りを構えることができることがわかっています。

──

バリエーションが多いと
なぜ縄張りを早くつくることができるんですか？

鈴木

それはまだわかってないんです。
だけど、ただ単に「鳥は鳴いてるよね」ということから、
「実は鳴き声には役割がある」ということが
初めて分かったのがこの研究で、
ジョン・クレブスという動物学者が
1970年代に書いた論文で初めて明らかになりました。
それから、
鳥の鳴き声に興味を持って研究する人が
増えたんです。

──

きっかけになった研究なんですね。

鈴木

それまでは鳥などの動物の鳴き声は、
自分の感情が高まって発せられるものだと
ずっと考えられてきたんですね。
例えばシジュウカラの
「ツツピー　ツツピー」という声も、
今日みたいにぽかぽかしている天気のいいときに、
縄張りを守ろうという気持ちが
表れているだけかもしれないと。

で、この「アーアー」と聞こえるカラスの声も、
実はひょっとしたら言葉ではなく、
感情が表れているだけかもしれないと。
ずっとそう考えられてきたんです。

だけど、研究していくうちに、
シジュウカラはいろんな鳴き声を持っていて、
その一つ一つが言葉になっていたということが
わかってきたわけです。

──

それを研究してシジュウカラ語の存在を
解き明かしているのが
鈴木さんですね。

鈴木

あ、そうですね。

──

そもそも
なぜシジュウカラの研究を始めたんですか？

鈴木

僕はもともと生き物が大好きだったんですね。
小さいときから、昆虫を観察したり
魚を捕まえて水槽の中で見てみたりしてました。

──

生き物全般に興味があったんですね。

鈴木

そうです。
高校生のときにこの双眼鏡を買って、
野鳥を観察してみると、
鳥ってすごく面白かったんですよ。

動物学者には、
小学2年生のときからなりたくて
文集に、将来、動物学者になりたいと書いてたんですね。

いろんな動物が好きなので、
動物学者以外の職業を考えたことはなかった。
大学生のときに
何を研究しようかなと考えてたときに、
ちょうどハマっていたのが
鳥の観察で、
鳥を研究してみようと思ったんです。

──

たまたま夢中になっていたのが
鳥だったと。

鈴木

僕が研究してるのはシジュウカラという
日本だと北海道から沖縄まで全国にいる鳥。

彼らがいろんな声を使い分けていることに気がついて、
調べてみたいなと思いました。
大学４年生になると卒業研究というのをやるんですよ。
どの研究者も、それが最初に
本格的に自分でやる研究なんですね。
それで僕はシジュウカラと
長野県にいるコガラとヤマガラの
鳥たちの鳴き声について調べたいと思って研究しました。

やっていくうちにね、
デタラメに鳴いてるんじゃなくて、
言葉になっていると気がつくようになりました。
本当に言葉になっているのかを証明するには
どうしたらいいのか、
いろいろと試行錯誤してきたんです。

代々木公園には、さまざまな鳥たちが集っています。