日々のできごとを記してみたり、
これからのことに思いをめぐらせてみたり。
手帳をひらくだけで、
じぶんとじっくり向き合う時間がうまれます。
そこに、おいしいお菓子と心地いい空間があれば、
さらに「いうことなし」だと思いませんか?
気まぐれに更新する「東京甘味手帳」は、
手帳タイムを過ごすのにぴったりな
東京のおいしいもの&お店案内です。

写真:川原崎 宣喜

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page_21 朝の光の中のチーズケーキ 近江屋洋菓子店

 
ガラスの扉を開けると、
青く塗られた高い天井。
近江屋洋菓子店の空間は
いつ来てもなんだか懐かしい気持ちになる。

 
いつもは午後に
ふらっと立ち寄ることが多いけど、
きょうは朝一番にやってきた。
店内に、焼き立てのパンが
次々と並べられていく。

 
朝はこんなにもたくさんのパンが
並んでいるなんて知らなかった!
友達の、新しい面を知ったみたいな気持ち。

 
ケーキも続々とやってくる。
ガラス越しにさす朝の光と
澄んだ空気の中で、
パンとケーキがどんどん並んでいく
この光景は、
なんだか活気にあふれていて、
すがすがしい気分になる。

 
あちらは巨峰、
こちらにはマンゴーが!
ああ、目移りしてしまう。

 
迷いに迷って選んだのは、
チーズケーキ。
そのシンプルなたたずまいに
ぐっときてしまった。

 
フィルムを外す。
ケーキを食べる喜びがさらに高まる、
たいせつな儀式みたいな瞬間。

 
ふんわりとしたスポンジ、
チーズクリーム、
またスポンジ、
いちばん下にクッキー生地。
ぐっとフォークを入れて‥‥。

 
ああ、やわらかくておいしい。
軽やかであっさりとしたスポンジに、
甘みと酸味のバランスのとれた
チーズクリーム。
これは何個食べても飽きない味。

 
このフォトジェニックなケーキ、
書き残さずにはいられない。

 
あっという間に食べきってしまった。
ケーキの下に敷いてある紙パーチ。
このストライプ柄、手帳とおそろいなんだ。

 
今日、もうひとつのお目当てはこれ。
びんいっぱいのフルーツポンチ!
プレゼント用に箱入りのほうを選ぶ。

 
この鮮やかな色!
きらきらと光を放っているように
錯覚してしまうほど。

 
キュートな包み紙でくるまれて、
目にもとまらぬはやさで
リボンがかけられる。

 
こんなすてきなものを
持って歩いている。
それだけで心が浮き立つ。

 
まだ午前中だけど、
今日はいい日確定だ。

 

近江屋洋菓子店

1884年創業、いまのビルが建って60年。
この地が「連雀町」と呼ばれていた頃から
この店を構えていた老舗の近江屋洋菓子店。
ことし2か月かけてビルの修繕工事を終えましたが、
お店の雰囲気は以前のまま、
あたたかく私たちを迎えてくれます。

お店と同じビル内の工場で
毎朝つくられているケーキは
昔ながらのレシピで作られたものと
新作とが入り交じって並びます。
どちらも流行に左右されない、
そしてフレッシュな材料を使ったものばかり。

受け継がれたレシピを守りながら
新しいチャレンジもしかける
5代目店主・吉田由史明さんは
「いまは製菓学校があって
レシピも均一化されていることが多い。
けれど先代、先々代のレシピを見ると、
かなり独創的でおもしろいんですよ」と笑います。

毎朝市場で仕入れてくる
季節のフルーツを使った商品も
ふんだんに用意されています。
「いまは1年を通じてフルーツが手に入る。
そんな時代だからこそ、
旬の味をたいせつにしています」

朝にはたくさんのパンが並び、
近隣に住む人々やビジネスマンが
朝ごはんやランチ用のパンを
買い求めていきます。

長く人々に愛され続ける、
生活に根ざした洋菓子店です。

※撮影のため特別に店先をお借りしましたが、
現在、イートインは行っていません。

◎チーズケーキ  350円

チーズ風味のスポンジにはさまれているのは
さわやかな味わいのチーズクリーム。
底にはクッキー生地が敷かれています。

「ぼくが遡れるのは3代目までですが、
その頃にはすでにあったようですから、
60年は経っていると思います」
とは5代目店主・吉田さんの言葉。
シンプルだからこそ材料には気を使い、
材料の配合も残されたレシピから変えずに
作られているのだとか。

ちなみに近江屋洋菓子店には
こちらのチーズケーキのほかに
レアチーズケーキ、ベイクドチーズケーキも
あります。
このベイクドチーズケーキは
実は5代目が生み出した新顔。
3種類を食べ比べてみるのも
楽しいかもしれません。

◎フルーツポンチ  3000円
(箱入り 3150円)

色とりどりのフルーツが
おおきな瓶に詰め込まれたフルーツポンチ。
4〜5人分は十分にある大容量サイズです。
フルーツは
季節によってどんどん変わりますが、
常時10〜15種類もの旬のフルーツが
ぎっしりと入っています。
おおきくカットされたフルーツの酸味と、
さらりとした甘さのシロップがマッチした、
近江屋洋菓子店の看板商品です。

近江屋洋菓子店

東京都千代田区神田淡路町2-4
営業:9:00〜18:00
休み:なし
電話:03-3251-1088
※現在、イートインは行っていません
https://www.ohmiyayougashiten.co.jp/

天井の高い店内は、朝の光と焼きたてのパンのいいにおいでいっぱい。お目当のお菓子をオーダーするお客さんの声をBGMにいただいた、素朴で軽やかなチーズケーキ。視覚・嗅覚・聴覚・味覚、全部が喜ぶ朝になりました。

(次回は、近江屋洋菓子店から目と鼻の先の喫茶店。芸術の秋にぴったりのお店です。)

2021-09-30-THU

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