たくさんの出会いを大切にし、
能登とのつながりから防災士となり、
自分にもできることを日々、
ひとつずつ積み重ねている常盤貴子さん。
その飾らないうつくしさに心が惹かれます。
日常のおもしろいと思うことから、
未来に向けて今どう動くかまで、
とても気さくに、お話いただきました。
担当は「ほぼ日」下尾(しもー)です。

>常盤貴子さんプロフィール

常盤貴子(ときわ・たかこ)

1991年に女優デビュー。『愛していると言ってくれ』『Beautiful Life』(ともにTBS系)など数々のヒットドラマのヒロインを演じる。2004年に映画『赤い月』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、2015年に『野のなななのか』で高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。現在、KBS京都・BS11・TOKYOMX『京都画報』にナビゲーター、NHK Eテレ『おとな時間研究所』に司会として出演中。フォトエッセイ『小さな幸せで満たす日々』が主婦と生活社より発売。

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ヘアメイク|ナライユミ スタイリスト|梅山弘子 衣装協力|Le pivot

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第1回 わたし、タケノコやってます

──
常盤さんが大切にされているものが、
たくさん散りばめられているこの本は、
読んでいて、こちらまで
満たされたような気持ちになりました。
常盤
ありがとうございます。
今まで点と点だったことが、
最近わりと線になってきて、
いろんな人と出会って、
自分が見てきたものを
紹介するいい頃合いだと思ったんです。

──
まずは私が佐賀県唐津市出身なので、
本の中に唐津焼の話が出てきたのが
気になったんですが。
どうして唐津焼がお好きなんですか?
常盤
唐津は、大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』
という映画の撮影が、唐津でのロケだったので、
1カ月ぐらい、ずっと滞在していたんです。
その間に唐津焼の工房(窯)に行かせてもらったり、
たくさんの器にふれたりする中で好きになりました。
その後、慎太郎さんにも、
いろいろと教えていただきました。 
──
矢部慎太郎さんは、東村アキコさんの漫画
『銀太郎さんお頼み申す』のモデルでもあり、
器や着物など、和の造詣が深く、
唐津にも『久吽(きゅううん)堂』という
器のギャラリーをお持ちですね。
どういうご縁で、
慎太郎さんと出会われたんですか?
常盤
もともとは、北海道の知り合いが
慎太郎さんのご実家のお蕎麦屋さんに
食べに行こうと誘ってくれて行ってみたら、
すごくすてきな骨董の器が売られていたんです。
「なんだこの審美眼は!?」と衝撃を受けて、
それから、ずっと気になっていました。
その後、仕事場の近くで開催されていた
『慎太郎ごのみ うつわ展』に行ったことで、
初めてお会いしました。
その人に合った器を勧めてくださるんですが、
それが、すごく刺激的で。
私の場合は、ヨーグルトを
毎朝食べるのにちょうどいいお皿とお伝えして、
選んでいただきました。
こういう器でヨーグルトを食べたら、
すてきなんじゃないかしらと言っていただいたお皿は
自分では選ばないタイプだったけれど、
確かにおもしろいっていう新たな提案をしてくださって。
すごくいい出会いだったので、
それからずっと慎太郎さんを追うようになりました。
──
器自体は、もともと好きだったんですか?
常盤
もともと好きですね。
一人暮らしを始めた頃は、
実家から持ってきたものや、
「どうしてこれを買ってしまったんだろう?」
というもので、溢れていたんですが、
そこから徐々にいろいろな器を見るようになって、
20代後半ぐらいから、
ちゃんと自分が好きなものを買うようになりました。
──
器を彩る料理についても
大切にされてるような気がするんですが、
日々ご自身で料理はつくられるんですか?
常盤
はい、人並みに。
──
すごいですね。
常盤さんは日々つくる料理とは別に、
1年に1度は必ずタケノコを煮るそうですが、
どうして数ある料理の中から、
タケノコを煮ることを選んだんですか?
常盤
まず私の中で、
タケノコを煮るということを
忘れちゃいけないということが、
大事な大前提なんです。
1年間忙しく過ごしていると、
そんなことを思っていたことも忘れてしまいます。
私は20代の頃、ずっと連続ドラマを連投していて、
正直かなりすさんだ生活をしていたんです。
ある日、こんなことではいけない、
ていねいに料理をする日をつくろうと思いました。
そして自分自身が忘れないようにするために、
毎年、その日を誕生月にしようと決めました。
4月生まれなので、春の食材を使いたいけれど、
コゴミとかってなんか地味じゃないですか。
コゴミに悪いけど(笑)。
もっと人にバーンとインパクトのある、
「ええっ、すごいですね!?」と言われるような
春の中でも、すごくスター性のある
タケノコがいいんじゃないか、
という発想だったと思います。

──
そうだったんですね(笑)。
でもそれで、どんなに大変なときも、
毎年思い出してタケノコを煮ているんですね。
常盤
そう。1年に1回でいいから、
その1日だけ、頑張りさえすれば、
「料理はあまりできないんですけど、
 タケノコやってます」
と絶対言えるというのは、
すごく使えるなと思って(笑)。
タケノコって、
かなりレベル高いじゃないですか。
──
そうですね。
タケノコ、やれないです、私。
やり方すらわかりません。
常盤
でもね、実はさっき
ショッキングなことを聞いてしまって。
すごく簡単な調理方法があることを知ったんです。
まずタケノコを全部むいちゃうんですって。
それで、お水にちょっとご飯粒を入れて煮ると、
タケノコのお粥ができちゃう。
アンド、タケノコも湯がけちゃう。
──
同時に?
常盤
同時に!!
私のこの何十年はなんだったんだろう?
っていう衝撃的な1日です、今日。
もうたぶん来年からは、
私も、そのやり方でやります。
──
え、じゃあ私みたいに、
普段全く料理をしていなくても、
教えていただいたやり方で
タケノコのお粥をつくれれば、
「私、タケノコやってます」
って言ってもいいんでしょうか。
常盤
やってます。全然。堂々と言ってください。
そしたら「え?タケノコやるんですか?」
って言われるから。一目置かれちゃう(笑)。
──
とっても便利ですね。
常盤
うん。おすすめです(笑)。

(つづきます)

2025-09-19-FRI

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  • 小さな幸せで満たす日々(主婦と生活社)

    この本を読んで、常盤貴子さんのことが、
    とても身近に感じられるようになりました。
    常盤さんの大切にされている、
    モノやコトが散りばめられていて、
    気がつけば、本に出てくる、
    いろんなものまで買ってしまいました。
    読み終わると、
    こちらまで満たされた気持ちになる一冊です。

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