こんにちは。
喫茶店とマッチが好きな、ほぼ日のです。

喫茶店マッチが好き! という気持ち一つで
連載した「喫茶店マッチが好きだから」では、
神保町の喫茶店やマッチ工場など
「喫茶店マッチ」にまつわるあれこれをめぐりました。
その後も、喫茶店めぐりは続けており、
どこかへ出かける時はSNSで近くの喫茶店を検索するのが、
習慣になっています。

いつものように喫茶店を探しているなかで
偶然タイムラインのおすすめに出てきた
1枚のイラストが目に止まり、
わあ! と、トキメキを感じたのが、
画家・塩谷歩波さんの「純喫茶図解」でした。

実際に建物を計測して描かれるだけでなく、
こだわりのインテリアや、テーブルに置かれたコーヒーカップ、
そこに訪れる人びとまで細かに描きこまれた喫茶店の魅力が
ぎゅぎゅっと詰まったイラスト。
みていると、実際に喫茶店で過ごしている時の気持ちを
思い出すような‥‥。
そんなイラストを描かれる塩谷歩波さんの
アトリエへおじゃましたあと、
図解を描くため、一緒に喫茶店へ行ってきました。

トキメキだらけの純喫茶図解の世界。
全5回です。

>塩谷歩波さんプロフィール

塩谷歩波(えんや・ほなみ)

1990年生まれ。東京都出身。

建築事務所、銭湯の番頭兼イラストレーターを経て、
画家として活動。
「アイソメトリック」という建築図法を中心に、
銭湯や純喫茶、ホテルなどさまざまな建築物の
内部まで細やかに描く作品を製作している。
2019年『情熱大陸』(毎日放送)に出演、
2022年には、自身がモデルとなったドラマ
『湯上がりスケッチ』が放送された。
著書に『銭湯図解』(中央公論新社刊)
『湯あがりみたいに、ホッとして』(双葉社刊)
『純喫茶図解』などがある。

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第1回  図解で描く「野生のデザイン」。

むかえ
今日は、塩谷さんの著書、
『純喫茶図解』も持ってきました。
塩谷さん
どうもありがとうございます。
うれしいです。
むかえ
私は『純喫茶図解』をきっかけに
塩谷さんを知ったんですけど、
そもそも、図解を書き始めたきっかけは
何だったのでしょうか? 

塩谷さん
きっかけは、新卒で入った
設計事務所で働き始めてから
1年半くらいした時、
ちょっと体調を崩してしまって。
休職中、同じように休職している
先輩に連れられて銭湯に行ってみたんです。
そしたら、すごく気持ちがいい空間で、
はまったんですよ。
「銭湯って面白いんだよ」っていうのを
同じように休職していて
銭湯に行ったことがない友達に教えたくて、
図解を描いたのが始まりです。
むかえ
友達に銭湯の魅力を伝えたくて描かれたのが、
図解だったんですね。

△画像を押すと拡大して図解を見られます。 △画像を押すと拡大して図解を見られます。

塩谷さん
銭湯の面白さって、もちろんお風呂に入って
「気持ちいいな」っていうのもあるんですけど、
建築をやっている人からすると、
ちょっと民俗学っぽいようなイメージもあって‥‥。
今まで誰も取り上げていなかったけれども、
その銭湯ならではの様式美みたいなものがある。
それを伝えたくて、絵にしたっていう感じですね。
むかえ
「誰も取り上げていない部分を伝えたい」
というのは、
初めて塩谷さんの作品を見た時に
すごく惹かれた部分でした。
銭湯だったら、入浴をしに来ている人の様子も
描いているのが、すてきだなと思いました。
塩谷さん
ありがとうございます。
むかえ
はじめは銭湯を描かれて、
その後、なぜ純喫茶を描こうと?

塩谷さん
『銭湯図解』を描き終わった後に、
銭湯以外も描きたいなと思っている中で、
自分はやっぱりレトロなものが好きだな、と。
あと、建築家がデザインしていないけれども
すごくすてきな空間に惹かれるんです。
それを私は「野生のデザイン」と
よく言ってるんですけれども。
むかえ
「野生のデザイン」。
塩谷さん
はい。
専門家が設計したものではなくて、
人の営みの中で自然に育ってきたような空間ですね。
それが純喫茶にも銭湯にも
よくあるなと思っていたし、
純喫茶はさらにその世界観が育まれていて、
描いてみたら面白いんじゃないかなと思って、
描き始めたんです。

むかえ
『純喫茶図解』は、イラストだけでなく
文章も塩谷さんが担当されていますよね。
あとがきに書かれていた「考古学」じゃなくて
「考現学」っていうのに、すごく興味があって‥‥。
具体的には、どういった学問なのでしょうか。
むかえ
考現学は自分が大学の時に研究していた分野で、
考古学と対になるような学問です。
はじめたのは、今和次郎という、
最初は民俗学をやっていた人なんですけれど。
むかえ
民俗学をやっていた人がはじめたんですね。
塩谷さん
「考現学」がうまれたのは、
ちょうど関東大震災の時期だったんですね。
その時に、震災で瓦礫になった中から
「バラック」と呼ばれる、
ひとまずそこにあるもので作った家というのが
結構いっぱい出てきたんですよ。

塩谷さん
そこには、人間が住まう
最低限のもので原始的な力がある。
それを書き留めようしたのが最初です。
やっぱり暫定的なものなので、
すぐなくなるっていうのはわかっているから、
それをスケッチして残すことで、
今後に生かそうっていうような
考え方があったんですね。
むかえ
なるほど。
塩谷さん
考古学って昔あった建物を復元したりとか
研究することだったりするんですけど、
考現学は、そうじゃなくて、今あるもの、
かつ、ちょっと失われるかもしれないもの。

むかえ
ああ、そうなるとまさに銭湯だし、
純喫茶ですよね。
塩谷さん
そうなんです。それを書き留めて、
さらに未来にどうつなげるかっていうような
分野なんですよね。
純喫茶も銭湯も、建物の老朽化や
後継者不足っていうのもあったり‥‥。
むかえ
なくなるもの、なくなりかけてしまうもの
を残したいという思いが、
塩谷さんの作品をみていると
伝わってきます。
塩谷さん
ありがとうございます。
むかえ
作品が息づいている感じというか‥‥。
人が、建物の中で楽しそうに
過ごしているっていうのが、
はじめて拝見したときから
惹かれる部分だなと思っているので‥‥。
塩谷さん
そうですね。

むかえ
すみません! 
塩谷さんの作品の好きなところを話すと
止まらなくなってしまいました(笑)。
塩谷さん
いえいえ、ありがとうございます(笑)。
でも、ほんとうにやっぱり人がいないと、
建物のよさって絶対見えないので。
建築をやっている身からすると、
ここにこういう人が回遊してほしいとか、
居心地よく感じてほしい
っていうことを考えて設計しているので、
人がいなかったらあんまり意味がないんですよ。

(つづきます)

2026-05-19-TUE

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  • 画家・塩谷歩波さんの
    純喫茶図解を中心とした展示
    「トキメキの純喫茶図解展」を開催します。

    これまで描かれた数々の『純喫茶図解』、
    そして、塩谷さんの原点ともいえる『銭湯図解』の
    原画展示を行います。

    会場では『純喫茶図解』グッズの
    販売もおこないます。

    東京建築祭開催中の「神田ポートビル」でも
    『純喫茶図解』の展示をおこないます。

    △神田ポートビルの2階「ほぼ日の學校」©️ゆかい

    神田ポートビルの2階「ほぼ日の學校」にて
    「純喫茶図解」の原画17点の展示をおこないます。
    東京建築祭の期間限定で一般公開中の
    神田ポートビルは、
    元印刷会社をリノベーションした
    建物としてのおもしろさもたっぷりの会場。
    ぜひ、東京建築祭とあわせて
    「トキメキの純喫茶図解展」をおたのしみください。

    『純喫茶図解』

    コンテンツ冒頭の図解「Coffee Shopギャラン」や、
    ほぼ日の本社がある神保町の純喫茶「さぼうる」など、
    塩谷歩波さんが2年間かけて描いた
    18軒の「純喫茶図解」がまとまった
    イラストエッセイ集です。

    お求めはこちらから。