
こんにちは。
喫茶店とマッチが好きな、ほぼ日の
です。
喫茶店マッチが好き! という気持ち一つで
連載した「喫茶店マッチが好きだから」では、
神保町の喫茶店やマッチ工場など
「喫茶店マッチ」にまつわるあれこれをめぐりました。
その後も、喫茶店めぐりは続けており、
どこかへ出かける時はSNSで近くの喫茶店を検索するのが、
習慣になっています。
いつものように喫茶店を探しているなかで
偶然タイムラインのおすすめに出てきた
1枚のイラストが目に止まり、
わあ! と、トキメキを感じたのが、
画家・塩谷歩波さんの「純喫茶図解」でした。
実際に建物を計測して描かれるだけでなく、
こだわりのインテリアや、テーブルに置かれたコーヒーカップ、
そこに訪れる人びとまで細かに描きこまれた喫茶店の魅力が
ぎゅぎゅっと詰まったイラスト。
みていると、実際に喫茶店で過ごしている時の気持ちを
思い出すような‥‥。
そんなイラストを描かれる塩谷歩波さんの
アトリエへおじゃましたあと、
図解を描くため、一緒に喫茶店へ行ってきました。
トキメキだらけの純喫茶図解の世界。
全5回です。
- むかえ
- 今日は、塩谷さんの著書、
『純喫茶図解』も持ってきました。
- 塩谷さん
- どうもありがとうございます。
うれしいです。
- むかえ
- 私は『純喫茶図解』をきっかけに
塩谷さんを知ったんですけど、
そもそも、図解を書き始めたきっかけは
何だったのでしょうか?
- 塩谷さん
- きっかけは、新卒で入った
設計事務所で働き始めてから
1年半くらいした時、
ちょっと体調を崩してしまって。
休職中、同じように休職している
先輩に連れられて銭湯に行ってみたんです。
そしたら、すごく気持ちがいい空間で、
はまったんですよ。
「銭湯って面白いんだよ」っていうのを
同じように休職していて
銭湯に行ったことがない友達に教えたくて、
図解を描いたのが始まりです。
- むかえ
- 友達に銭湯の魅力を伝えたくて描かれたのが、
図解だったんですね。
△画像を押すと拡大して図解を見られます。
- 塩谷さん
- 銭湯の面白さって、もちろんお風呂に入って
「気持ちいいな」っていうのもあるんですけど、
建築をやっている人からすると、
ちょっと民俗学っぽいようなイメージもあって‥‥。
今まで誰も取り上げていなかったけれども、
その銭湯ならではの様式美みたいなものがある。
それを伝えたくて、絵にしたっていう感じですね。
- むかえ
- 「誰も取り上げていない部分を伝えたい」
というのは、
初めて塩谷さんの作品を見た時に
すごく惹かれた部分でした。
銭湯だったら、入浴をしに来ている人の様子も
描いているのが、すてきだなと思いました。
- 塩谷さん
- ありがとうございます。
- むかえ
- はじめは銭湯を描かれて、
その後、なぜ純喫茶を描こうと?
- 塩谷さん
- 『銭湯図解』を描き終わった後に、
銭湯以外も描きたいなと思っている中で、
自分はやっぱりレトロなものが好きだな、と。
あと、建築家がデザインしていないけれども
すごくすてきな空間に惹かれるんです。
それを私は「野生のデザイン」と
よく言ってるんですけれども。
- むかえ
- 「野生のデザイン」。
- 塩谷さん
- はい。
専門家が設計したものではなくて、
人の営みの中で自然に育ってきたような空間ですね。
それが純喫茶にも銭湯にも
よくあるなと思っていたし、
純喫茶はさらにその世界観が育まれていて、
描いてみたら面白いんじゃないかなと思って、
描き始めたんです。
- むかえ
- 『純喫茶図解』は、イラストだけでなく
文章も塩谷さんが担当されていますよね。
あとがきに書かれていた「考古学」じゃなくて
「考現学」っていうのに、すごく興味があって‥‥。
具体的には、どういった学問なのでしょうか。
- むかえ
- 考現学は自分が大学の時に研究していた分野で、
考古学と対になるような学問です。
はじめたのは、今和次郎という、
最初は民俗学をやっていた人なんですけれど。
- むかえ
- 民俗学をやっていた人がはじめたんですね。
- 塩谷さん
- 「考現学」がうまれたのは、
ちょうど関東大震災の時期だったんですね。
その時に、震災で瓦礫になった中から
「バラック」と呼ばれる、
ひとまずそこにあるもので作った家というのが
結構いっぱい出てきたんですよ。
- 塩谷さん
- そこには、人間が住まう
最低限のもので原始的な力がある。
それを書き留めようしたのが最初です。
やっぱり暫定的なものなので、
すぐなくなるっていうのはわかっているから、
それをスケッチして残すことで、
今後に生かそうっていうような
考え方があったんですね。
- むかえ
- なるほど。
- 塩谷さん
- 考古学って昔あった建物を復元したりとか
研究することだったりするんですけど、
考現学は、そうじゃなくて、今あるもの、
かつ、ちょっと失われるかもしれないもの。
- むかえ
- ああ、そうなるとまさに銭湯だし、
純喫茶ですよね。
- 塩谷さん
- そうなんです。それを書き留めて、
さらに未来にどうつなげるかっていうような
分野なんですよね。
純喫茶も銭湯も、建物の老朽化や
後継者不足っていうのもあったり‥‥。
- むかえ
- なくなるもの、なくなりかけてしまうもの
を残したいという思いが、
塩谷さんの作品をみていると
伝わってきます。
- 塩谷さん
- ありがとうございます。
- むかえ
- 作品が息づいている感じというか‥‥。
人が、建物の中で楽しそうに
過ごしているっていうのが、
はじめて拝見したときから
惹かれる部分だなと思っているので‥‥。
- 塩谷さん
- そうですね。
- むかえ
- すみません!
塩谷さんの作品の好きなところを話すと
止まらなくなってしまいました(笑)。
- 塩谷さん
- いえいえ、ありがとうございます(笑)。
でも、ほんとうにやっぱり人がいないと、
建物のよさって絶対見えないので。
建築をやっている身からすると、
ここにこういう人が回遊してほしいとか、
居心地よく感じてほしい
っていうことを考えて設計しているので、
人がいなかったらあんまり意味がないんですよ。
(つづきます)
2026-05-19-TUE
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画家・塩谷歩波さんの
純喫茶図解を中心とした展示
「トキメキの純喫茶図解展」を開催します。これまで描かれた数々の『純喫茶図解』、
そして、塩谷さんの原点ともいえる『銭湯図解』の
原画展示を行います。会場では『純喫茶図解』グッズの
販売もおこないます。東京建築祭開催中の「神田ポートビル」でも
『純喫茶図解』の展示をおこないます。
△神田ポートビルの2階「ほぼ日の學校」©️ゆかい神田ポートビルの2階「ほぼ日の學校」にて
「純喫茶図解」の原画17点の展示をおこないます。
東京建築祭の期間限定で一般公開中の
神田ポートビルは、
元印刷会社をリノベーションした
建物としてのおもしろさもたっぷりの会場。
ぜひ、東京建築祭とあわせて
「トキメキの純喫茶図解展」をおたのしみください。『純喫茶図解』
コンテンツ冒頭の図解「Coffee Shopギャラン」や、
ほぼ日の本社がある神保町の純喫茶「さぼうる」など、
塩谷歩波さんが2年間かけて描いた
18軒の「純喫茶図解」がまとまった
イラストエッセイ集です。お求めはこちらから。

