──

ちなみに、ヒバゴンに対して、
その付近のみなさんの肌感覚としては
どんな感じだったんですか。

たとえば子どもが親に
「悪いことをしたら、ヒバゴン来るぞ」
みたいに脅されて、
恐怖におののいていた‥‥みたいな。

TOBI

たぶん、それを言われていたとすれば、
広島市とか、
もっと都会のほう子たちだと思います。

三上

なるほど。

──

都会のほうには、ビビりが効いてた。

TOBI

ぼくらはぜんぜん。怖くはなかったし、
ナメてたくらいですけど、
近所のタニヒラさんが見たというので、
信憑性じたいは、まあ、感じてました。

最初期のヒバゴン着ぐるみ。提供：庄原市企画振興部商工観光課観光振興係

──

何となく、そんなのがいるのかな、と。

TOBI

だから、小学校１年生のときの
夏休みの自由研究で、
タニヒラさんに独占インタビューしたんです。

三上

ははは、素晴らしい。カッコいいなぁ。
「ムー」より早いですね。

──

タニヒラ氏からは、どんなコメントが。

TOBI

そのときの状況を、詳しく聞きました。

「どのあたりで目撃したんですか！？」
「駅へと抜ける県道のカーブの先かな」
「なるほど‥‥」
とか取材して、学校に提出しました。

──

おお。

TOBI

あの「世界的にも有名なヒバゴン」の
第４番目の目撃者に
直接コンタクトしたっていうことで、
そこそこ褒められ、
必要以上に鼻高々になって、それで‥‥。

──

うん。

TOBI

２年生の夏休み、もう１回やったんです。

──

どうして（笑）。

TOBI

そしたら１年前とまったく同じことしか、
言わないんですよ。

──

そりゃそうでしょう（笑）。

三上

新たな個体を目撃しないかぎりは、ねえ。

──

ただ、でも、
２９人の目撃者がいるとわかってるのは、
誰かがカウントしてたわけですよね。

三上

ヒバゴン課‥‥類人猿係でも、
情報収集やデータ集計をしてただろうし。

そういや「ムー」編集部にも
ヒバゴン関連の膨大な資料がありました。
もう紙袋いっぱいに、何袋も。

──

さすがは「ムー」編集部。

三上

当時の編集部が蒐集したんだと思います。
引っ越しのときに捨てちゃいましたが。

──

編集長！（笑）

TOBI

でも、どこかに「夢」を感じていた‥‥
というのかなあ。

その後、ぼくも大きくなって
広島市内から東京へ出ていくんですけど、
「ヒバゴンが好きでした」
みたいな人に、たまに会うことがあって。

三上

ああ、いるでしょうね。

当時のインパクトはすごかったですから。
地元新聞はトップニュース扱いだったし。

──

編集長、いわゆるＵＭＡが、
こういう経過をだどることっていうのは、
けっこう、あるんですか？

三上

こういう経過。

──

つまり、ある時期に目撃情報が集中して、
その後パタリと消え、
ほとんど忘れ去られていく‥‥みたいな。

ネッシーとか雪男って、
目撃されなくても忘れないと思うんです。

三上

まぁ‥‥さっき夢って言ってましたけど、
人間って、そういう「不思議な存在」が
今もどこかで生きているんじゃないのか、
だとかね、
ヒバゴンの子孫が‥‥みたいなことをね、
やっぱり「思いたい」んですよ。

だからこそ隣町にヤマゴンが出たわけで。

TOBI

なるほど。

三上

比婆からはいなくなったけれども、
今も人知れず、
この中国山地のどこかに
息を潜めているのかもしれない‥‥。

だから、そんなふうに、
記事の締めで書いたりするんだけど。

TOBI

そこに、含み‥‥「希望」を残して。

──

それは、ぼくらの側に
どこかで
生き残っていてほしいという気持ちが、
あるってことでしょうか。

三上

そうかもしれません。

──

実は明智光秀が天海だった説のように。

TOBI

源義経のチンギス・ハーン説のように。

三上

こういう獣人のジャンルのＵＭＡって、
世界各地に例があるんです。

コーカサスの獣人アルマス、
ヒマラヤの雪男イエティ、
アメリカのビッグフット、
インディアンに伝わるサスカッチ‥‥。

TOBI

比婆のヒバゴン‥‥。

──

世界中にいるんですね。
ヒバゴン的な何かって。

三上

東南アジアでも、
身長の低い‥‥１メートルに満たない
リトルフットという生物が、
たびたび目撃されてきています。

フローレス人、
学名ホモ・フローレシエンシスという
「原人」の化石も出ている
インドネシアのフローレス島では、
身長１メートル未満の何者かが
山に棲んでいて、
ときどき
人間の赤ん坊をさらって食うっていう、
まことしやかな伝説があって。

──

こわい！

三上

あるとき、ついに堪忍袋の緒が切れた
島の住民が、
全員焼き殺してしまったっていう言い伝えも
あったりするんです。

つまり、そういう未確認動物が、
いまだに生き残っている可能性はある。
雪男なんかも、ひょっとしたら、
ネアンデルタール人の末裔かもとかね。

TOBI

そうなんですか。そんな説が。

三上

ネアンデルタール人の絶滅の時期って、
２万年とか３万年前とされてるわけで、
時間的には、
生き残っていたとしても、
まったく不思議ではないと思いますよ。

──

いわゆる「地質年代」で言ったら、
数万年なんて「一瞬」ですものね。

三上

あるいはね、真偽は定かでないけれど、
アメリカでは、
ビッグフットが
ＵＦＯの中に入ってったって目撃談が、
実は、何件か寄せられているんです。

──

ＵＭＡとＵＦＯが掛け算に！

三上

日本でもやってるけど、
アメリカのヒストリーチャンネルって
人気のチャンネルでは
『古代の宇宙人』という番組もあるし。

TOBI

『古代の宇宙人』。

──

『古代の宇宙人』？

三上

『ANCIENT ALIENS』っていう。

TOBI

こんどは「古代＋宇宙人」ですか。

三上

ようするに、
宇宙人は古代の地球に訪れていたという。
文明の発祥とか、
ピラミッドなどの巨大建造物にも、
宇宙人たちが関与しているんじゃないか、
みたいな話を紹介していく番組で。

そのなかで、アメリカのビッグフットも、
宇宙人が連れてきた生物で、
エイリアンアニマルなんだって言ってて。

──

ははあ。

三上

だから‥‥想像力を大きく膨らませれば、
ヒバゴンだって、ひょっとしたら。

TOBI

宇宙人の！？

三上

宇宙から連れてこられたペットで、
そこらへんを散歩させていたら逃げ出して。

──

TOBIさんのご近所さんたちに目撃されて。

三上

あわてて宇宙人がつかまえて
ＵＦＯに押し込んで宇宙に連れて帰って、
もういないとか。

──

動物園からの脱走説でも、
大親分さんちのペット説‥‥でもなく。

はあ‥‥。

三上

とにかく、あのあたりというのは、
さっきの葦嶽山ってピラミッドもあるし、
イザナミの墓だってあるんです。

比婆山系って、昔からの聖地なんですよ。

──

霊験あらたかな土地だったんですね。

TOBI

盆地だから、朝、霧が出たりもするし。
熊野神社もあるし那智の滝もあるし、
「もののけ姫」のようなタタラ場の跡や、
やまたのおろちの神楽が残っていて、
ぼくも中学で神楽部だったんですが‥‥。

──

もともと「出やすい土地柄」ではあったと。

ヒバゴンにつながる伝説だったり
思わせぶりな言い伝えはなかったけれども。

TOBI

何かがありそうな雰囲気だけは、全部ある。

三上

山を越えたら、出雲文化圏だし。

──

それは「期待」してしまいそうですね。

三上

そうでしょう。

人間というのは、そうやって、
不思議な存在を「期待」してしまうんです。