
南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。
糸井重里(いといしげさと)
コピーライター
株式会社ほぼ日会長
雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。
南伸坊(みなみしんぼう)
イラストレーター
エッセイスト
蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。
篠原勝之(しのはらかつゆき)
ゲージツ家
作家
鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。
- 糸井
- つげ義春さんがガロで
『ねじ式』を描いたときは、
誰が編集を担当してたの?
- 南
- 高野(慎三)さんですね。
- 篠原
- あ、『ねじ式』な。すごかったな。
- 糸井
- いまごろになってさ、
なんであんなものが出てきたんだろうって、
あらためてショックだよね。
- 南
- あれが出るまえも、
つげさんの漫画はすごくおもしろくてね。
つげさんだけの作品を載せた
ガロの増刊号が出ることになって、
『ねじ式』はその増刊号のための
描き下ろしだった。
- 糸井
- その増刊号っていうのは、
彼のためにできたの?
- 南
- そうそう、1冊分、全部つげさん。
- 糸井
- じゃあ、のびのびと描いたのかな。
あんまり気にせず、好きに。
『紅い花』とか、『海辺の叙景』とかも
それに載ってたっけ?
- 南
- そうそうそう、
のちの作品集に入ってるような代表作は
ぜんぶあの増刊号にある。
- 糸井
- ぼくは一読者として、
つげさんはずっと読んでたけど、
やっぱり、すごかったよね。
- 南
- 俺も浪人のころでさ、
あの絵はギョッとしたな。
ガラッと変わってて。
- 篠原
- 俺も、つげさんの漫画見て憧れてさ、
伸坊が編集長だったときに
ガロで何本か描かせてもらったな。
- 南
- うん。
- 篠原
- つげさんに憧れてな、ペンで描いてね。
でも、描いてすぐ、
自分はこの道は違うなってわかった。
- 糸井
- でも、クマちゃんも憧れたんだね。
すごいな、つげさん。
- 篠原
- うん。やっぱり、『ねじ式』はすごかったな。
- 南
- 『ねじ式』って、
つげさんはホントに
見た夢を描いただけ、
みたいに言うんだ。
- 篠原
- 読んでるほうは、びっくりしたけどな。
- 糸井
- びっくりしたよね。
どうしてと思った。
- 篠原
- 庭に汽車が来るんだよな。
- 糸井
- 来るよ、なんでも来るよ。
- 南
- 細い路地をね。
ムリヤリ通ってくる。
- 篠原
- 蒸気機関車が、おおーっと‥‥。
- 糸井
- もう、血が出てるしさぁ、
眼医者があるしさぁ‥‥。
当時すでにシュールレアリスムっていう
概念はあっただろうけど、
漫画であんなことをよくやったよね。
- 南
- そうだよね。
- 篠原
- あれ、もとになった、
目の写真かなんかがあるんだよな。
- 糸井
- だから、頭のなかで、
イメージでコラージュしたわけだね。
- 南
- つげさんは夢のリアリティを出すのが
ムチャクチャうまいんだよ。
- 糸井
- 『ねじ式』を描いて、
なにか解放されちゃったってことだよね。
おもしろかったものなあ。
でも、ガロっていうのは不思議な雑誌だね。
クマちゃんみたいな人にも読まれてたし、
地方で俺も読んでたし。
あれ、部数的には
そんなに行ってなかったんでしょ?
- 南
- 最盛期でも5万部だったって話だから、
そんなには売れてないけど、
ものすごく読まれてはいたよね。
- 糸井
- ああー。
- 南
- たとえば、ひとりの高校生が1冊
クラスに持ってくるとみんなで読むとか、
そういう形で読んでる人は
多かったんじゃないかな。
- 糸井
- 少年サンデー、マガジンのようではないけども。
- 南
- もう、ぜんぜん(笑)。
- 篠原
- ガロを出してた青林堂って、
材木屋の2階にあったじゃない?
- 糸井
- そうそう、材木屋の2階。
編集部の真下の柱がさ、
かまぼこ板みたいなもので支えられてるんだよ。
あのかまぼこ板を蹴っ飛ばすと
たぶんガロの編集部は崩れたと思う。
- 南
- ははははは。
なんか浮いてんだよね、1階の柱が。
そこに、こう、
かまぼこ板が差し込んである。
糸井さんが発見したんだよね、
あのかまぼこ板。
- 糸井
- びっくりしたよ。
え‥‥これで立ってるの? って。
- 南
- はははははは。
(60年代末から70年代にかけての話です。)
2026-03-16-MON
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写真・山口靖雄(MountainDonuts)
これまでの「黄昏」シリーズ
黄昏
黄昏放談
黄昏 日光・東北編
黄昏 あちこち編
黄昏 スカート編
黄昏 ブータン編






