ＡでＢだからＣ、なのか。
それとも、Ｃなんです。なぜならＡでＢだから。
なんの話をしてるんや、と思っていらっしゃることでしょう。
講演です。人様の前で話をする際、
何をどの順番で伝えればいいのか。
解決をできないままに今日も悩んでいる田口です。

おかげさまで、講演の機会をいただくことが増えました。
僕は野球のプロなので、
たぶん野球に関しては意外とすんなり話すことができる。
たぶん。
もしかしたら選手は
「田口さん何言ってるのかさっぱりわからない」
と言うかもしれませんが、
そんなこと言われたら悲しいので感想は聞かない。

とにかく、コーチ時代は
野球という共通の言語を交えながら、
多少時間をかけながら、
「僕が伝えたい何か」を伝えようとしていました。
多くの場合、支障となるのは
年齢差によるジェネレーションギャップ。
例えばエラーが絡んだ時、
昭和なら「オノレコラボケえ何しとんねん！」
一択（の場合が多い）。
それが時を経て、
叱られ慣れていない、褒めて育てる、
という風潮の中で生きてきたイマドキの選手に
そんな台詞は申し上げられないのです。
ドン引きするか、
凹むか泣くかさあどうなるかわかりませんので言わない。
その代わり、「どうした？ 珍しいな、何かあったんか？」
などと、優しいセリフの上に、
さらに粉砂糖を振りかけてみる。
実際のところ「田口さんはそんなに優しくない」
と思われていたかもしれないけれど、
そんなことも知ったら悲しいから聞かない。
あ、怠慢プレーの場合は別ですが、
伝え方というのは難しいものです。

で、何が書きたいかというと、
冒頭のＡやらＢやらに戻るわけですが、
講演の機会をいただいたとき、
「相手が共通のバックグラウンドを持たない」
「年齢も性別もまちまち」
「1対1ではなく、1対100とか200とか」という状況で、
しかもその講演のテーマが
「野球の技術ではなく、
野球の経験から得たものを会社の組織作りに活かす」
といった内容だったりして、
さらに「1時間で」などと時間も限られると、
それはもう、どうしたらいいんでしょう。
相手が野球の話を求めていても、
そこにいるのが親だけとは限らない。
親と選手が混ざっていたら、
どちらをメインに話を進めるべきなのかわかりません。
会社員の方を相手にしても、
「上司の、部下に対して」の目線なのか、
「部下の、組織の一員としての」目線なのか、
どちらをメインで話していいかわからない。
立場の異なる人が混ざっていたら、
全員が納得する話をするのはとても難しいのです。

さらに、限られた時間の中で、ＡなんですＢなんですと、
「一番言いたい結論」を先延ばしにするべきなのか。
でも、途中で話があちこちに飛んでしまい、
気づいたら終了時間になっていて、
「Ｃなんです」という結論を
お伝えできないままに終わってしまう可能性が多分にある。
結局アイツ何が言いたかったんや、と、
お客様はモヤモヤしたままお帰りになるでしょう。

じゃあ最初に「Ｃなんです！」と
肝の部分をドーン！と出すべきなのか。
しかしそのあとお客様は、
「なぜならＢだから」「そしてＣだから」と、
僕の説明を辛抱強く聞いてくださるのでしょうか。
寝てしまうかも。

などと色々考えていると、講演があるたびに、
普段は睡眠時に滅多に夢を見ない、
もしくは覚えていない僕が、誰かを相手に
必死で何かを説明している夢を見たりするのです。
何万人の前で野球ができても、講演は別物なのです。
「テレビに出てるじゃないですか」と言われますが、
スタジオにはそんなにたくさん人はいません。
けれど講演は違う。
みんながたぶん、僕だけを見つめています。
頷いてくれると嬉しくなるし、難しい顔をされると焦る。
あくびされたら泣ける。見えているのです。
僕にはかなり遠くまで見えていて、
ダイレクトに伝わってくる温度感が、
講演の醍醐味でもあり、恐ろしさでもあると言えましょう。

「これも言いたい」「あれも言いたい」などと欲張っても、
講演は生き物。
話があらぬ方向に進んだり、
盛り上がったり盛り下がったりして、
準備していたものの10分の1も言えないことだって
何度もありました。
「これや！」と準備段階ですごくいいアイデアが浮かび、
興奮状態で慌ただしくメモをした結果、
踊り狂っている自分の字が
後から判別できないこともありました。
毎度毎度、講演のたびに反省ばかりの日々。
ともあれ、見知らぬ同士が同じ時間を同じ場所で共有する、
一期一会のご縁ということで、
僕の今後の成長を、暖かく見守っていただければ幸いです。

それにしても、言葉とは本当に難しい。
先日も、「田口さん、エンダイどうしますか」
と聞かれたので、
「なんでもいいですよ！」と答えたところ、
「何でもいい、んですか‥‥？」
と、不思議そうなリアクションが。
「エンダイご自分で決めていただいた方がいいんですよ」
「いや、僕は本当になんでもどんなんでも大丈夫なんで！」

相手の方は、「演題」つまり、講演の内容は
どんなものにしましょうか、と問うていました。
僕は、「演台」つまり、講演の時に自分の原稿などを
置く台のことだと思っていました。
誤解が解けるまでの１分ほど、
「俺はどんなことだって喋れるぜ」的な、
自信たっぷりな偉そうなやつだと
思われていたのは間違いありません。

2025年９月７日　田口壮

ほぼ日は！
皆さんからのメッセージ、
全て嬉しく拝読しております。
今日もこの場をお借りして、
少しずつですがお返事させてください。
いつもありがとうございます。
壮より

●オクロックスさん
いいタイトルですね！
音楽とスポーツは、運命共同体だと思っています。

●ムーチョさん
球場イベントもさることながら、最高のおもてなしは
やっぱり臨場感。賛成です。

●みーこさん
水本コーチ、通称ヘッドは強面ですがお菓子大好きです。

●北高の純さん
飛び込むなり25メートル行きました!
息継ぎしてなかったでしょ？
50メートルならもうアウト。

●3年目の佐々木さん
そうです私があの１塁にいた人です。
誕生日メッセージ、ありがとうございました

●タナボタばんざいさん
「ほぼ日甘いもの部」の設立賛成です。
なんの権力もないですが。
全世界の甘いもの品評会をしてみたい。

●弥生ちゃんと田口おじさんさん
感覚的には娘です。質問にはなんでも答えてあげたい。

●いろはさん
その心がけ、僕も見習っていきます。

●まるいつきさん
あれ以来車洗ってません。ドロドロ。

●旧姓Nさん
諸々お知らせは出せましたか。
暑い中の引越しお疲れ様でした

●YUJIさん
YUJIさんの想いもまた、お父様に必ず届いていると思います。
次のビックリ、また教えてくださいね！

●Sさん
そんな気持ちで見守ってもらえているお義母さんは幸せですね。

●福笑いさん
父ちゃんもわかっとる。

●Iさん
「ごめんね」も含めてお母さんは理解の上で見守ってくれています。

●TRさん
外野の一部に集結したオリックスファンの声の大きさに感動しました。
森下選手は、入団後のオープン戦から
「いい雰囲気持ってるなあ」と思っていたら本当にいい選手でした。

●Toshi7さん
僕も、皆さんからのメールに背中を押されています。感謝。

●あんちゃんさん
息子さんのプレーの一瞬一瞬は宝物ですね。
田口坂は下から上に駆け上がってください。

●Nさん
テレビでも、どこででも、いつ見ても、
やっぱり高校野球はいいですね！

●ころもさん
貴重な経験。記憶って奥底に残っているんですね。
僕も母ちゃんに語りかけ続けます。