
あしかけ6ヶ月間にわたって
阪本順治監督の最新作
『せかいのおきく』の制作現場に
お邪魔する機会を得ました。
主演は、黒木華さん。
共演に寛一郎さん、池松壮亮さん。
テーマは、なんと「う○ち」です。
4月28日(金)の公開初日まで、
ひとつの映画がうまれていく
そのようすを、
不定期でレポートしていきます。
担当は「ほぼ日」奥野です。
ふだんは乗らない電車に乗っている。『せかいのおきく』の初日の初回を観るためだ。向かっているのは、新宿の映画館。上映開始は午前11時。個人的な話で恐縮であるが、少々トイレが近い体質のため、劇場や寄席では端っこの席に座るようにしている。万が一にそなえての、予防的措置だ(その『万が一の事態』は、ほとんど来ないが)。でも今日は、いつもなら絶対に取らない「ど真ん中・真正面」を予約している(最後までトイレの話‥‥)。
去年のはじめくらいだったか、「こんど、こういう映画があるんですよ」と教えてもらい、おもしろそうだと思った。幼少時、身近に「肥溜め」があったので、なんとなくの親近感があったのかもしれない。企画のベースに、サーキュラー/バイオエコノミーの研究があるということも興味深かった。こう書くと、何となくそれらしいが、単純に「江戸時代の『う○ち』の行方の話」が、おもしろそうだったのだ。そこから「循環社会」のことを調べたり、阪本順治監督の未見の作品を観たり、京都・太秦の撮影を見学させてもらったり、山根貞男さんとコーヒーをご一緒する僥倖を得たり、編集作業やフォーリー、最終ダビングの作業にも立ち会わせていただいたり‥‥。
映画そのものは、初号試写を含め、もう3回も観ている。当然、どんな話かは知っている。だから、映画館で観なくとも、この無責任な気まぐれ連載を終えることはできた。でもやっぱり、映画館で観なきゃ終われないと思った。
はじめてのときは、やはり長屋の場面、あふれる「う○ち」の大騒動が印象に残った。とくに、石橋蓮司さん。何度でも見たくなるような台詞と演技だった。二度目は、佐藤浩市さんが最後に見せた娘への思いの深さに気づき、心が震えた。三度目は、ひどい仕打ちをされた池松壮亮さんが抱いたであろう「やりきれなさ」と、それでも、声を失った黒木華さんへかける言葉にぐっと来た。4回目の今日は、何を感じるだろう。とにかく、この日がやってきたのだ。
最後に、まったくの門外漢をにこやかに受け入れてくださった阪本組のみなさんに感謝します。おかげで自分にも、忘れられない映画ができました。それでは、楽しんできます。
(終わります)
2023-04-28-FRI
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脚本・監督:阪本順治
出演:黒木華、寛一郎、池松壮亮、
眞木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司
2023年4月28日(金)よりGW全国公開
配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア
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