
あしかけ6ヶ月間にわたって
阪本順治監督の最新作
『せかいのおきく』の制作現場に
お邪魔する機会を得ました。
主演は、黒木華さん。
共演に寛一郎さん、池松壮亮さん。
テーマは、なんと「う○ち」です。
4月28日(金)の公開初日まで、
ひとつの映画がうまれていく
そのようすを、
不定期でレポートしていきます。
担当は「ほぼ日」奥野です。
朝9時、東映京都撮影所。あいにくの雨。始発で自宅(東京)の最寄り駅を出て品川、新幹線。すぐに寝てしまい、京都まで直通運転。瞬間移動。そこから山陰本線に乗り換え、太秦へ。駅から走る。受付で手続きを済ませ入構パスを受け取ると、すでに俳優さんはじめオールスタッフが所内神社に集合し、安全祈願の儀式がはじまろうとしているところ。どうにか間に合った。と、にわかに雨脚が強くなる。テントへ逃げ込む。そこへ神主さん登場。正装。マスク。衣冠を雨風に晒しながら祝詞をあげ、これからはじまる撮影の安全を祈願。総勢50人は集まっていただろうか、すべてのスタッフが頭を垂れている。近くにいた男性に話を聞くと、これがあるのとないのとでは「だいぶ気持ちがちがうと思う」とのこと。続いて、玉串奉奠(ほうてん、という言葉を初めて知った)。企画・プロデュースの原田満生さん、阪本順治監督、俳優の寛一郎さん、池松壮亮さん、撮影の笠松則通さんが、順々に「玉串」を「奉奠」していく。最後にプロデューサー原田さんから挨拶。2年ほど前に「循環型社会」をテーマにかたくるしくない映画をとの思いで動き出した企画だということ、撮影中はとにかく事故がないように気をつけましょうということ。気づけば、雨が少しやわらいでいる。
その後、同じ撮影所内の「厚生会館」2階へ移動。スタッフ全員の「顔合わせ」を部屋の隅で見学。撮影部、照明部、録音部、美術部、演出部‥‥映画のプロフェッショナルたちが勢揃い。門外漢の引け目(?)からか、どの人にも何か匂い立つものを感じる。ひとりひとりが簡潔に、次々と自己紹介していく。そのよどみない流れが、自分のところでピタと止まる。うわ、とひるんだが「本日から取材で入っている奥野と申します、じゃまにならないところにおりますのでどうぞ宜しくお願いします」と、どうにか言った。最後はふたたび原田プロデューサーの言葉。「撮影は2週間で終わります。みなさん、どうぞ楽しみながら、くれぐれもご安全に」。一本締め。それぞれが、それぞれの持ち場へ。きゅっと集まり、きゅっと散る。さすがはプロだ、無駄がない(と、門外漢は妙に感心する)。
映画の撮影現場に取材で入るのははじめてだが、とにかく「安全を守ること、事故のないよう気をつけること」を繰り返していたのが印象的だった。これから追いかけるのは、江戸時代の「う○ち」をめぐる物語のはず(いまのところ、まだよくわかっていない)。ジャッキー・チェンとかイーサン・ハントが出てくるような映画じゃないと思う。のに、何度も「安全」を繰り返す。映画の現場とは、そういうものなのだろうか。明日からの撮影を前に、門外漢のだらしない背筋も伸びる思い。
(つづきます)
2023-03-20-MON
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脚本・監督:阪本順治
出演:黒木華、寛一郎、池松壮亮、
眞木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司
2023年4月28日(金)よりGW全国公開
配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア
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