ほぼ日の學校が入る神田ポートビル。
そのビルの地下には、
フィンランド式サウナで有名な
「サウナラボ神田」があります。
ここのオーナー米田行孝さんは、
サウナの聖地「ウェルビー」の経営者で、
最近のサウナブームに欠かせない陰の立役者。
ご近所さんになったのをきっかけに、
フィンランドサウナやサウナラボのこと、
いろいろと詳しくうかがってきました。
聞き手は「ほぼ日」稲崎です。

>米田行孝さんプロフィール

米田行孝(よねだ・ゆきたか)

サウナラボ/株式会社ウェルビー 代表。
日本サウナ・スパ協会専務理事。
フィンランドサウナクラブ(FSC)のメンバー。

1969年名古屋生まれ。
祖父は「神戸サウナ」の創業者。
米田さんが代表を務める
サウナ&カプセルホテル「ウェルビー」は、
名古屋と福岡を拠点に4店舗展開。
本格的なフィンランドサウナが楽しめる施設として
サウナ好きの聖地として知られている。

2018年4月には完全予約制、女性ファーストの
「サウナラボ」1号店を名古屋で開業。
2020年8月に「サウナラボ福岡」、
2021年4月に「サウナラボ神田」をオープン。

フィンランドサウナクラブのメンバーと、
日本最大級のサウナの祭典
「SAUNA FES JAPAN」を主催。

過去に米田さんが登場したほぼ日の記事

>「HoboとSauna」について

HoboとSauna プロフィール画像

HoboとSauna(ほぼとさうな)

ほぼ日のサウナ好きが立ち上げた
サウナブランド「HoboとSauna」。
オリジナルアイテムを販売する他、
サウナにまつわる読みものなど、
さまざななコンテンツをお届けしていきます。

公式サイトはコチラから!

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03 サウナで世界は変えられる。

米田
ぼくは東京みたいな大きな街こそ、
もっとサウナが必要だと思っています。
とくにフィンランドサウナですね。
──
なぜフィンランドサウナなんですか?
米田
フィンランドサウナは、
自然と人をつなげるものだからです。
自然のすくない都市だからこそ、
そういうサウナができる役割は、
もっとあるように思っています。
──
サウナラボって、
まさにそういうサウナですよね。
自然を感じられるサウナというか。

▲サウナラボ神田で行われたワークショップの様子 ▲サウナラボ神田で行われたワークショップの様子

▲この日は「ウィスクづくり・セルフウィスキング講座」のワークショップを開催 ▲この日は「ウィスクづくり・セルフウィスキング講座」のワークショップを開催

米田
そうなるといいんですけどね。
そういうことも含めて、
これはサウナを使った実験なんです。
だから名前も「サウナラボ」なわけで。
──
あ、なるほど。
それで「ラボ(実験室)」という名前を。
米田
ここ「サウナラボ神田」でも、
そういう実験をいくつもしています。
女性側に用意した
内気浴スペースもそのひとつです。
──
小さな森みたいなスペースですね。
本物の土に植物を植えていますよね。
米田
ときどき本物の虫も出るそうで(笑)。
──
まさに自然ですね(笑)。

▲土や植物の香りが漂う内気浴スペース ▲土や植物の香りが漂う内気浴スペース

米田
ぼくはそれでもいいと思うのですが、
虫がキライな人もいるので、
そのバランスはすごく難しいですよね。
ほんとうの森の中って、
当たり前に虫がいるじゃないですか。
むしろ虫たちのいる場所に
人間が勝手におじゃましているわけで。
──
はい。
米田
街の中の暮らしというのは、
「ここからは人間の場所です」という
見えない仕切りがありますよね。
でも、つるつるに磨かれた世界が、
人にとってほんとに快適なのかなって、
ぼくはときどき思うんです。
別に答えがあるわけじゃないけど、
自然と人工的なものとの妥協点を見出せたら、
もうちょっと快適になるかもしれない。
サウナラボという場所では、
そういうことを探っていきたいんです。

▲サウナラボ神田の共有スペース。テーブルの上には、泥がついたままの木の根っこ。 ▲サウナラボ神田の共有スペース。テーブルの上には、泥がついたままの木の根っこ。

──
サウナラボは全国に3店舗ありますが、
コンセプトはどこも同じなんですか?
米田
基本のコンセプトだったり、
自然体験としてのサウナというのは、
どこのサウナラボも同じです。
ただ、サウナラボ神田があるのは、
世界トップクラスの大型都市「東京」です。
他の都市より人口密度は高いです。
──
自然もすくないですしね。
米田
もちろん東京にも公園があったり、
街路樹もたくさんあるので、
意外と「植物」は多いように思います。
でも、そういう街の植物から
野生味を感じることってないんですよね。
野生ってギョッとするじゃないですか。
──
ギョッとします。
ちょっと怖さを感じるときもあります。
米田
ありますよね。
ぼくは人間が自然より上にいる、
みたいな発想は傲慢だと思っています。
人間は自然より強いとか、
自然はコントロールできるものだとか、
そんな考えはかんたんに覆ります。
ぼくらはそういうの、
たくさん経験してるじゃないですか。
──
はい。
米田
自然を削って、高いビルを建てたとしても、
それは自然より強いわけじゃなくて、
ほんとうはグニャグニャの土の上に
なんとなく建物が乗っかってるだけです。
それが事実なんです。
さっきもいいましたが、
なにも都会的な暮らしをやめて、
自然に帰ろうという話じゃないんです。
もうちょっと自然に寄り添って、
謙虚な気持ちになったほうが
もっと生きやすくなるんじゃないかなって。

──
フィンランドの人たちって、
そういう自然との付き合い方が
すごく上手そうなイメージですよね。
米田
日本人だってそうですよ。
──
日本人もですか?
米田
フィンランドと日本って、
じつは大きな共通点があるんです。
何かというと、森。
──
森。
米田
日本はかなりの森林大国ですが、
フィンランドはそれ以上で、
森の中に住んでいるという意識があります。
国土面積の7割以上が森林で、
その割合は世界で一番だそうです。
──
おー、さすがムーミンの国。
米田
さらにフィンランドでは、
「森は国民のもの」という考えがあります。
他人の土地や財産に損害を与えない前提で、
森に入る自由が認められていて、
森の中でキャンプをしたり、
ベリーやキノコをとるのも自由。
──
それはすごいですね。
そういう発想は日本にはないです。
米田
そこは日本と大きく違いますが、
自然と共に暮らしているという感覚は、
フィンランド人も日本人も
共通してもっているように思います。
あと、日本人はお風呂が好きですが、
お風呂のルーツをたどると、
それこそ「蒸し風呂」なんです。
──
サウナってことですか?
米田
日本式のサウナですね。
日常的にお湯に入るようになったのは、
だいたい明治以降といわれていて、
それまでは蒸し風呂が主流だったそうです。
──
そういう意味では、
日本も立派なサウナの国なんですね。
米田
そんな歴史的背景もあって、
サウナラボ神田は他のお店よりも
「和」の要素を多く入れています。
室内を畳敷きにした「IKEサウナ」や
瞑想ができる「から風呂」というサウナも、
じつは日本文化を意識したものです。
──
そういう和のサウナがあると、
日本人はとくにリラックスできそうですね。
米田
東京の人がここのサウナに入って、
じぶんを見つめて、じぶんを取り戻して、
本来の力を発揮できるようになれば、
日本はもっといい国になると思うんです。
いや、サウナそのものが
世の中を変えるってことじゃないんです。
こういうサウナをつくることで、
街の人たちをどんどん元気にできたら、
間接的に世界を変えられるんじゃないかなって。
ぼくは本気でそう思っているんです。

(つづきます)

2021-07-29-THU

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