──

最近のプロレスを観てると、
みなさん個性がバラバラで、
そこがまたおもしろいなって思います。

馬場園

個性、すごいですよね。
いい人や悪い人だけじゃなくて、
太陽のような人やいぶし銀の人、
己の技術をひたすら突き詰める人がいたり。

元井

試合前のアピールのしかたも、
いろんなタイプにわかれるんですよね。
リング上で名前を紹介されるとき、
棚橋弘至選手なんかは
会場のお客さんを見わたしながら
ビシっと決めポーズをとったりするし。

──

まさに「正義のヒーロー」って感じですね。

元井

そんな棚橋選手と対照的なのが、
石井智宏選手です。

馬場園

私、石井選手のことが大好きなんです。
ほんとにかっこいい！

写真：©新日本プロレス　

元井

そもそもリング上で名前が呼ばれるときって、
プロレスラーにとっては
いちばんのアピールポイントなんです。
それなのに石井選手は、
自分の名前がアナウンスされても
まったく微動だにしない（笑）。

馬場園

そうそうそう（笑）。
もうね、リングに上った瞬間から、
いや、入場した瞬間から
戦いがはじまっているんですよ。

元井

対戦相手をずっと睨んだまま、
ただゴングがなるのを待ってる感じですよね。

馬場園

そしてゴングがなったら、
全力で相手とバチバチにやりあって、
終わったらすぐに引き上げる。

元井

その感じがまたシブくてかっこいい。

馬場園

やっぱりプロレスって、
同じタイプばっかりでもおもしろくないし、
それぞれの個性のぶつかりあいこそが、
プロレスの醍醐味って感じがしますよね。

──

素朴な疑問なんですが、
そういうリングでのキャラクターって、
誰かにアドバイスされるものなんですか？

馬場園

そもそも人に言われてやることって、
やっててたのしくないし、
うまくいかないと思うんです。
だから結局は自分がやりたいことをやって、
それでうまくいけばいいけど、
それだとお客さんからの
賛同が得られない場合もあるでしょうし。

元井

そこはすごく難しいところですよね。

馬場園

そういう難しさも含めて、
「これで行くんだ」って決めるのは、
やっぱり自分なんでしょうね。

──

ちなみに、おふたりは
どういうタイプの選手が好きですか？

馬場園

私はもともと天龍源一郎さんみたいな
「男の中の男」みたいな、
そういう戦い方をする人が好きなんです。
なのでやっぱり、
そういう哲学を受け継いだ石井選手かなー。

──

先ほど話に出た石井選手ですね。

馬場園

もともと石井選手って、
天龍さんと長州力さんという
プロレス界のレジェンド２人の愛弟子なんです。
その２人の教えを引き継いでいるから、
やっぱり試合を観れば観るほど、
私も石井選手になりたいって思います。

──

石井選手になりたい！

馬場園

石井選手っていくつになっても
おごらない方なんです。
常に新人のきもちのまま、
いつも前を向いていらっしゃる。
現状に満足しないで、
自分のやるべきことをひたすらやる。
己のスタイルを突き詰めるタイプです。
だから私も、石井選手のような人に
なりたいなって思います。

──

はー、それくらい好きなんですね。

馬場園

もう、試合中の殺気がすごいんです。
わざと胸を出して「来い！！」って感じで、
相手とバッチバチにやりあうんです。
背筋が凍るくらいかっこいいですから。

▲バッチバチにやりあう石井智宏選手。　写真：©新日本プロレス　

──

元井さんはいかがですか？　

元井

私は、もしなれるとしたら
高橋ヒロム選手になってみたいですね。

馬場園

あの人はもう、天才ですよね。
天才で多才というか。

▲必殺技「TIME BOMB」を出す前の高橋ヒロム選手。　写真：©新日本プロレス

元井

謎なところが多い方なんですけどね。
これ、ヒロム選手の描いたものなんですが、
イラストがまた独特で。
「どういうこと？」みたいな絵を描きます（笑）。

馬場園

プロレス界の岡本太郎なんじゃないかって（笑）。

元井

試合後のコメントひとつとっても、
ヒロム選手の世界観って
他の人にはない独特なところがあります。
チャンピオンベルトと会話したり、
後楽園ホールの壁に向かって
「いつもありがとう」って話しかけたり。
試合でも予想外の動きをするので、
ハマっちゃう方は多いと思います。

馬場園

いまでこそヒロム選手って、
チャンピオンになるくらいすごい方ですが、
新日本に入団したころって、
そこまで認められてなかったみたいなんです。
練習生時代も落ちこぼれだったそうで、
クビになりそうなくらい
練習にも全然ついていけなかったって。

元井

そうそうそう。

馬場園

そういう時期に
内藤哲也選手が遠征から帰ってきて、
「俺で良かったらプロレス教えるよ」
みたいなやりとりがあったそうです。
それでプロレスラーとして生き延びたっていう。

元井

そう思うと歴史がありますよね。
そのあとふたりは同じユニットに所属して、
どちらも新日本の人気選手になるわけですから。

馬場園

いまでこそ仲間みたいな関係ですが、
ヒロム選手にとっての内藤選手って、
プロレスの師匠みたいな存在なんでしょうね。

元井

ちなみにヒロム選手は試合のとき、
両腕に白いテーピングを巻くんですが、
いつもそこにメッセージが書かれています。

──

メッセージ？　
お客さんに向けてですか？

元井

というよりも、
京都での試合だったら「八ツ橋」とか。

──

「八ツ橋」！

元井

仲間だったEVIL選手が裏切ったときは、
テーピングにいっぱい
「どうして？ どうして？」
って書いていました。

──

思ったことがそのまま出るんですね‥‥。

元井

そういうのばっかりかと思うと、
大事な大会の決勝戦のときは、
手のひらに「夢」という字が書いてあったり。

──

おぉー、かっこいい。

元井

ヒロム選手はそういう独特のやり方で、
いつも観客の想像力を刺激してくるんです。

写真：©新日本プロレス