
イラストレーターの福田利之さんと
NAOTの靴でおなじみのloop&loopさんが
あたらしいブランド、
「POSIPOSY(プスプス)」を立ち上げました。
POSIPOSYは、福田さんが手がけてきた
テキスタイルブランド十布(てんぷ)を継承しつつ、
福田さんが描き下ろした絵をもとに、
靴下やハンカチなどのプロダクトを
つくっているブランドです。
どれもかわいい! とにかくかわいい!
TOBICHI東京の展覧会を前に、
プロダクトのもとになった16枚の福田さんの絵と、
POSIPOSYが生まれたときのお話をご紹介します。
お話をうかがったのは、福田さんと
loop&loopの宮川さん、永田さん、坂戸さんです。
福田利之(ふくだ・としゆき)
イラストレーター。
1967年、大阪生まれ。
エディトリアル、装丁、広告、
ムーンライダーズやスピッツのCDジャケット、
絵本、テキスタイルなどなど、
さまざまなビジュアル表現を手がける。
「ほぼ日」では、読み物、商品問わず、
様々なコンテンツにご登場いただいています。
〈福田さんが登場するほぼ日コンテンツの一部〉
・「大福田展」@TOBICHI②
・「カッパとウサギのコーヒーさがし」
・「カッパとウサギのコーヒー屋さん」
・「ゴールデンコーヒーウィーク」@TOBICHI②
・「あなたのためのデザイン。」
・「福田のフォト絵」
〈著作物〉
・『くりさぶろう』(ケンエレブックス)
・『いまからノート』(青幻舎)
・『福田利之といくフィンランド』 (玄光社)
・『福田利之作品集』(玄光社)
・『ぼくはうさぎ』(あかね書房)
・『ふたり』(ミルブックス)
・『福田のフォト絵』(ヴィレッジブックス)
など多数。
loop&loopの代表、宮川敦さんと、
POSIPOSY(プスプス)を担当されている
永田さんと坂戸さんに、
POSIPOSYがはじまったきっかけや
メインアイテムの靴下について
お話しをうかがいしました。
- ほぼ日
- 福田さんとPOSIPOSYをはじめた
きっかけは?
- 宮川
- ちょうどコロナ禍のときに
POSIPOSYがはじまりまして。
はじまるまでのいきさつなんですけど。
ぼく、コロナ禍の前は、
ずっとNAOTのことばっかりしてて。
東京のある社長さんに、
「ちょっと宮川さん、仕事し過ぎやで」って言われて。
「週5日を1日減らして、今の仕事を4日にして
自分時間を1日つくったらいいよ」って言われて、
すぐにはじめてみたんです。
1日、暇になるじゃないですか。
だからぼく、フラフラしてて。
「なんか仕事ないですかね?」って
いろんな人に言っていた時期があったんです。
- ほぼ日
- 宮川さんが1日、暇になったのが
POSIPOSYができたきっかけなんですか?!
- 宮川
- 1日、ぼくの自由時間から(笑)。
- ほぼ日
- 自由時間ができたら、
あたらしい仕事が増えたんですね。
- 宮川
- そう、増えて(笑)。
- ほぼ日
- ああ、そうでしたか。
たしか、コロナの頃はNAOTさんも
たいへんだったような……。
- 宮川
- お店のほうに来るお客さんが減って。
とりあえずどうやって維持するか。
NAOTをどう続けていくかとか。
そんな話ばっかり考えてて。
なんかこう、未来の話、
「来年、こんなことしたいよね、
再来年、こんなことしたいよね」
っていう話は、もう一切、その当時なくて。 - 靴がいつ日本に入ってくるか、
わからなかったですし。
工場もストップして生産がされていないとか。
どんどんみるみるうちに倉庫に物がなくなっていって、
「これ、やっていけるかな?」って。
- ほぼ日
- そういえば思い出しました。
コロナのとき、宮川さん、畑やってましたよね?
NAOTさんにお電話したら
「宮川は、今、おりません。畑に行ってます。」と言われて、
畑をやってるんだ!とびっくりしました。
- 宮川
- 畑もやってました(笑)。
- 永田
- (笑)。
- 坂戸
- (笑)。
- 宮川
- これはもう最後、自給自足だと思って(笑)。
野菜つくって、食べよう。
- ほぼ日
- 趣味じゃなくて、
自給自足のためだったんですか?
- 宮川
- もう、どうやって生きるかを真剣に考えて(笑)。
- 永田
- さつまいもさえあれば(笑)。
- ほぼ日
- さつまいもさえあれば。
- 永田
- あれば、生きていける(笑)。
- 宮川
- 生きていけるっていう(笑)。
- 永田
- みんなでやってました(笑)。
- ほぼ日
- うわあ。宮川さんだけではなくて
みなさんで畑をやっていたんですか。
- 永田
- 毎日当番制で。
- 宮川
- うん。でも、それはよかったよね。
- 永田
- おもしろかったですね。
- 宮川
- だから、まあ、NAOTができないってなったら、
もう自分たちでとりあえずできることをやろうと。
- ほぼ日
- へぇ、すごい。
やっぱり地に足が着いてますよね。みなさん。
- 宮川
- いやいや(笑)。
追い詰められているだけです。
「どうしよう」って。
- 永田
- どう生き抜こうかっていう。
- ほぼ日
- どう生き抜くか‥‥
みなさんからはいつもエネルギーを感じます。
で、話を戻しますが、
宮川さんが「仕事ありませんか?」と
コロナ前に聞いて歩いていた頃‥‥。
- 宮川
- 東京で福田さんが原画展をやられてたんです。
ぼく、すごい、福田さんの絵が昔から好きで。
初日のオープン前から入口前に待機して。
オープンと同時にバーッて入って。
すぐ、好きな原画をゲットしたんですけど、
その時、福田さんに
「1日フリーになるから、なんか一緒にお願いします」
ってお話ししたんです。
後日、福田さんが奈良に来てくださったんですよ。
「新しいプロダクト、一緒にやりませんか?」と。
福田さんに声かけてもらえるなんて、
むちゃくちゃ光栄なことやな、と思って。
「やります!」って。
ノープランで、ノリだけではじまりました(笑)。
- ほぼ日
- 具体的に何をしよう、ではなくて、
「一緒にやりましょう」
「おー!」がスタートなんですね。
- 宮川
- そうなんです。
で、何をつくるっていう段階になったときに、
ぼくたち、靴をやってるっていうのもあって。
かわいい柄の靴下が欲しいなって。
福田さんの絵が靴下の形になったら、
すごいルンとするんじゃないかなとか。
これ履いてNAOTの靴と一緒に出掛けてもらったら、
1日、きっとご機嫌だなって。
- 永田
- 福田さんの絵のポストカードとか、
ブワーっていっぱい並ぶ姿がすごいかわいいくて。
同じように靴下が並んでいたら、
きっとすっごくかわいいと思って。
- 宮川
- かわいい。想像するだけで気分が上がるんですよ。
男のおじさんのぼくでも、上がる(笑)。
- 一同
- (笑)。
- 永田
- 靴下って、奈良が全国一の生産量ですし。
最初、福田さんはワンピースを
つくりたいっておっしゃっていて。
靴下にピンとこられてなかったですけど。
- 宮川
- ぼくはワンピースやりたくないって言ってた。
- 永田
- (笑)。
- 宮川
- もういきなりスタートから、意見が違って(笑)。
- ほぼ日
- お互いちゃんと自分の思いを
はっきり伝え合えるんですね。
- 宮川
- はっきり言ってます(笑)。
- 永田
- (笑)。
- 坂戸
- (笑)。
- ほぼ日
- いい関係ですね。
- 永田
- そうなんです。
で、福田さんの絵を
靴下に落とし込んだデザインをお見せして、
いけそうって思ってもらえたと思います。
- ほぼ日
- なるほど。
- 永田
- つくってみたらすごいかわいいのができて。
あの細かい表現ができる工場さんって、
なかなか限られているんですけど。
偶然出会って。
- 宮川
- たくさんの工場に断られたんですよ。
いろんな工場に、
「はじめまして」でメールするんですけれども、
ぼくたちは実績もないし、断られ続けて。
はじまってすぐに、頓挫しかけてました(笑)。
- 永田
- そうなんです。
- 宮川
- そして、進めていくうちに、
福田さんのあの絵を靴下にするには、
キメの細かい編みができる
ハイゲージの機械を使わないと無理だとわかって。
- 永田
- その機械を持っている工場は、
奈良でも数カ所なんですよ。
- 宮川
- 諦めかけてたんですけど。
なんどもねばって。
- 永田
- ハイゲージの機械を持っている工場さんに
見学行って、サンプルを作ってもらえるまでになって。
でも、どうしても思うようなものができない。
猫ちゃんの顔は崩れるし‥‥。
- 宮川
- 「やっぱり無理や」ってなって。
- 宮川
- もう最後に、もう一回、お願いしてみて、
ダメやったら、もう諦めようと思って。
- 永田
- 気持ちを伝えたら、
「まあやってみましょう」みたいな感じで言ってくださって。
福田さんの細かい線を
靴下に落とし込む技術ってむずかしくて、
そこの工場でも、おひとりしかそれができないんですね。
それが社長さんなんですけどね(笑)
社長さんが「やってみる」って直接やってくれたから、
やっと実現したっていう。
- 宮川
- うん。
- 永田
- そんな感じでプロダクトが
一個できただけでもう(笑)。
- 宮川
- もう胸いっぱい(笑)。
- 永田
- できた!(笑)。
- 宮川
- 一個目、できた!
(つづきます)
2024-03-03-SUN
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