ほぼ日の20年以上蓄積された読み物のなかから、
いろんな人にいろんな切り口で
「音楽のプレイリスト」をつくるみたいに、
おすすめのコンテンツを選んでしまう企画です。
去年の年末にはじめてやってみたところ、
たいへん好評だったので、今年もいろんな人に
お願いしてつくってもらいましたよー。
12人の方がつくった「ほぼ日のプレイリスト」、
年末年始にのんびりおたのしみくださいー。

前へ目次ページへ次へ

12.柳瀬博一さんのプレイリスト

名編集者としての「ほぼ日」

 >柳瀬博一さんプロフィール

「ほぼ日」は、私にとって
「編集」という仕事のセンパイであり、先生です。
現在、私は東京工業大学で教鞭をとっていますが、
2018年まで、私は日経BP社で
長年編集者をやっていました。
「ほぼ日」と糸井重里さんと出会ったのは
1999年のことです。
90年代半ばに社内に書籍編集部門ができて、
そこに配属され、
何の経験もネットワークもないところから、
手探りで著者と出会い、
自分なりに知恵を絞って編集した2つの本、
『社長失格』『流行人類学クロニクル』が、
糸井さんの目にとまり、
「今日のダーリン」で取り上げていただいたんです。
それまでけっして熱心な読者ではなかったんですが、
改めて、「ほぼ日」をじっくり読むことにしました。
そこで発見したわけです。
編集のセンパイを。
編集の先生を。
「ほぼ日」のコンテンツです。
「ほぼ日」には、有名人も、無名人も、乗組員も、
おんなじ大きさで登場しました。
お年寄りから高校生まで出てきちゃう。
そして、それぞれが全部異なる面白さを放っている。
世間の物差しをいったん外す。
そのうえで、それぞれのひとから出ている
「面白い光線」のありかを探って、
その光線をそれぞれの著者から発射させる。
うわ。これが、「編集」か。
以来22年間、私にとって
毎日タダで読める編集のセンパイ、
編集の先生である「ほぼ日」の連載の中から、
「ここを学んだ!」というシリーズを5本を紹介します。


ポートレートを撮る、
撮られる、ということについて。
操上和美 養老孟司 糸井重里

【異なる個性をぶつけて、新しい何かを引き出す。】

糸井重里さんの「対談力」のすごさは、
一見共通点のなさそうな
「すごいひと」たちを引き合わせて、
誰もみたことのない「コンテンツ」を
引き出すところにある、といつも思ってます。
これ、実際にやるとおっかないので、まずできない。
まったく異なる二人に挟まれながら、
糸井さんが飄々と、なにもしてないようにみえて、
二人から何かを引き出す。
真似したい! と思ったまま、
25年過ぎて、結局できませんw
その最新傑作が、解剖学者の養老孟司さんを
写真家の操上和美さんが撮る!
というこのセッションです。
対談の面白さは、養老さんのポートレートの
すばらしさを見れば一目瞭然です。


こう見えて報道系。
ポスト梅佳代カメラマン、
アニ登場!

【新しい『肩書き』を著者に!】

見立てのすごさ。
報道系としての梅佳代の自己発見。
それがこの対談の面白さです。
梅佳代さんが「報道」なんだ、
「ジャーナリズム」なんだ、という見立てが、
アニさんとの対話で浮かび上がる。
いやあ、うなりました。
ちなみに2011年3月(震災直前の日だ、たしか)
「ブルータス」とほぼ日の日芸でやったイベントで、
会場に大の字になって寝転がっていた当時2歳児の娘、
梅佳代さんにブルータス誌上で「報道」されました。


東京の居酒屋でくだをまく!?
エチオピアの鮫島さんと、
岩手の酒井さん。

【天才インタビュアー、奥野さんの技を見よ。】

私がひそかに「ほぼ日」の編集の先生と
勝手にヴァーチャル師事しているのが、奥野武範さんです。
ちなみに(が多いですが)、このコンテンツを選んだのは、
エチオピアでカバンやお財布、
ジャケットにいたるまで最高のシープスキンをつかった
皮革製品を製造販売する企業、
アンドゥアメットを経営する鮫島弘子さん、
お友達だったりするので(笑)。
よく知っている方なので、余計、この対談の面白さ、
新しさがわかります。


担当編集者は知っている。

【センパイ編集者たちの技、学びました。】

私が最初に「ほぼ日」に登壇したのがこのコーナーでした。
武田徹さんの『流行人類学クロニクル』のお話をしました。
書籍の編集者が登場して、
話題のあの本がどうやってつくられたかを明かす。
今では定番となっているこうした編集者のコンテンツ、
それをスタートとほぼ同時に連載化したのが
「ほぼ日」でした。
このとき、対応くださったのが、
糸井さんの担当編集者でもあった
筑摩書房の鶴見智佳子さんで、
いまでは僕の本の編集もしてくださる「ダチ」です。
さまざまな編集者の技を学ぶ、最高のシリーズです。


明日の神話 再生プロジェクト

【ジャーナリズムとプロジェクトを合体させる】

渋谷の駅の構内を歩くと、
突然姿を表す巨大な壁画「明日の神話」。
岡本太郎さんのこの巨大な作品は、
いまや当たり前のように渋谷のアイコンになっていますが、
1960年代終わりに、メキシコで描かれたこの絵が、
なぜ渋谷の永遠の象徴となったのか。
岡本太郎さんを過去の偉人ではなく、
常に更新され続ける「新しいクラシック」として
渋谷駅構内に「明日の神話」を設置するまでのプロセスを
アーカイブした。
クラウドファウンディングの先駆けであり、
プロジェクトそのものであり、
プロジェクトを記録したジャーナリズムでもあり、
全部ひっくるめて「作品」でもある。
究極の「編集」仕事です。

2022-01-05-WED

前へ目次ページへ次へ