2021年に活動30周年を迎える増田セバスチャンさんは、
日本のKawaiiカルチャーを牽引する世界的アーティスト。

このたび、渋谷PARCO「ほぼ日カルチャん」にて、
イベント『増田セバスチャンと6%DOKIDOKI 1995→2021』
開催することになりました。

このイベントでは、
「Sensational Kawaii(センセーショナル・カワイイ)」を コンセプトに掲げる
増田セバスチャンさんの原宿のショップ
「6%DOKIDOKI(ロクパーセントドキドキ)」をフィーチャー。
26年前のオープン当時の写真や商品カタログ、
商品デザインに使用されたアート作品などを展示します。
また、最新アートグッズやファッションアイテムのほか、
90年代に使用していたデザインの復刻版ポスターの販売も。

今回、イベントに先駆けて、
増田セバスチャンさんと
増田さんのアトリエのマネージャー北村さんに
たくさんのお話を聞きました。
Kawaiiとは何なのでしょうか。
そして、増田セバスチャンさんは
どこへ向かっているのでしょうか……?

[過去のほぼ日のコンテンツ]
増田セバスチャンさんと、糸井重里
増田セバスチャンの 「あっちとこっち」展 のページはこちらから。

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<第4回>


増田セバスチャン、


ニューヨークへ

――
増田さんは現在の活動を経て、
どこへ向かうのでしょうか?
増田
50歳を超えたので、これから徐々に
体力や精神力が衰えてくると思うんです。
いまみたいにフレッシュに活動ができるのは、
60歳か65歳くらいまでなのかな。
糸井さんも、たぶん
そういうことを言っていると
思うんですけど。
――
はい、言いますね。だいぶ前から。
増田
でも、そういう人って元気なんですよね。
――
とても元気です。
「ぜんぜん平気」と言っています。
増田
先輩がそう言っているのなら、
僕もまだまだ大丈夫なのかな (笑)。

  
でもいちおう自分の中で、
この後の10年間をどうするか真剣に考えたんです。
それで、ここ数年準備してきたんですが、
色々整って来年春くらいから実行できそうで。
拠点を増やして、
東京とアメリカの2拠点になる予定です。
まずは暫くニューヨークに行きます。
最後の挑戦ですね。
――
移住を決断された理由は?
増田
世界中にいるKawaiiの子たちが、
いまの僕のエネルギー源ですから。
彼らにアクセスしやすい場所に行こう、と。
それと、日本だと
エンタメ、アート、ファッションみたいに
ジャンル分けされていて、
いろいろなことをやろうとしても
「そんなのエンタメじゃない」とか、
「そんなのアートじゃない」と
決めつけられてしまいがちなんです。
――
ジャンルや肩書がひとつで
わかりやすくないと、やりにくい、と。
増田
はい。
でも、大谷翔平選手みたいに、
ピッチャーもバッターもできるのが
アリになったわけですから、
やっと生きやすい世の中になってきたと思います。
だけど今回は、
そういった邪魔な声をなるべく取り払って、
全力で楽しいことをやりたい
という思いがあって。
――
なるほど、環境を変えて。
増田
僕が最初に原宿に来たときも、
じつはそういう感じだったんです。
地元の友だちに馴染めなかったけど、
原宿の友だちとは話ができた。
そのときの原宿が、
今回ニューヨークになったわけです。
もちろん東京には
6%DOKIDOKIもスタッフもいるので、
活動は続けますよ。
当分は行ったり来たりになると思います。

北村
原宿が好きな子達も、
地元に馴染めないから原宿に来て、
仲間を見つけたと、
同じようなことを言う子が多いですよね。
増田
それがいまや世界にも飛び火して、
ネットを介して、Kawaiiの子たちどうしが
つながり始めたわけです。
――
だから「Kawaii Tribe」なのですね。
北村
はい。
ちなみにさっきから当たり前のように
「Kawaii Tribe」と言っていますが、
そもそもインターネットを介して
新しいTribe(トライブ=部族)が生まれている
という仮説を増田が話していて。
――
「Kawaii族」というような?
増田
そうです。
これは元々ニューヨーク大学で
客員研究員をしていた時に講演で話したことで、
ふつうは土地に由来して
文化、宗教、ファッションができていくものですけど、
ネットを介してもルーツが同じならば
考えかたやファッションって似てくるもの
だと思うんです。
Kawaii Tribeに関しては、
ルーツは原宿という
自由な街の概念を由来としたKawaiiです。
もしかしたら、
それがやがて国になるかもしれないよ、と。

▲2019年の6%DOKIDOKIカナダツアーの様子 ▲2019年の6%DOKIDOKIカナダツアーの様子

――
壮大なお話です。
増田
僕がそれを提示したのが、2018年でした。
日本はともかく、海外はもっと
ジェンダーに対して偏見があったり、
宗教的にこれはだめ、
ということが多かったりする。
でもKawaiiの子たちにはもともと、
ジェンダーも、宗教も、人種も、年齢も関係ない。
自然とすべてを受け入れる風習が、
いち早く達成できているんです。
しかもそこにいる人たちの周りには、
たとえば最先端のテクノロジーを持った人や、
ビジネスに長けた人なんかもいて、
すでにドイツのクリエイティブチームとは
一緒に作品を制作しています。
これからも何かおもしろいことが
できそうなんですよね。
――
わあ!広がりを感じます。
増田
はい。
いまは多くの日本人が、
Kawaiiを表面的にしか見ていないと思うんですよ。
ビジュアルに特徴があるから
そこに引っ張られすぎているというか、
誰もその先にあるものを紹介しきれていなくて。
そこを秋からの展覧会から
徐々に伝えていきたいと思っています。
僕らが日本の風土で作ってきたそれは、
世界に誇るべきものなんです。
だからKawaiiをもっと世界中に持っていきたい。
そうすれば、日本のカルチャーは
もっと世界を引っ張っていけると、
いつも思っています。

[お知らせ]

増田セバスチャンによる展覧会
『Yes, Kawaii Is Art』を大阪・北加賀屋で開催します。
会期:2021年10月30日(土)〜11月21日(日)
くわしくは、こちらをご覧ください。

(おしまい)

2021-09-28-TUE

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