人生の冴えないワンシーンを絵に描いて、
日々、Twitterに
アップしている人がいます。
イラストレーターの大伴亮介さんです。
いくつかの作品に共感し、
インタビューしにうかがいました。
桜の季節の井の頭公園という
居心地最高のシチュエーションもあって、
インタビューというより、
ただのおしゃべりになってしまいました。
春の陽気と、初対面の大伴さんと、
その日の自分の波長が、
なんだか妙に合ってしまったんですよね。
どうぞのんびり、お付き合いください。
担当は「ほぼ日」奥野です。
- ──
- ちなみにワンシーン画の活動には、
ご家族は、どのような反応を?
- 大伴
- 妻は完全スルーです。
不気味なほど何も言ってきません。
- ──
- 作品集も出版されているわけだし、
毎日、Twitterで
作品を発表してるじゃないですか。
- 大伴
- はい。
- ──
- それでも、頑なに口を閉ざして?
- 大伴
- そうですね。
- ──
- 見守ってくれているのかなあ。
- 大伴
- どういう気持ちかわかりませんが、
興味を示すそぶりはゼロです。 - そのかわり、
母親はいろいろと言ってきますね。
あのシーンはおもしろかったとか、
あのシーンはつまらなかったとか。
- ──
- へえ、お母さん。
- 大伴
- あの、「エモい」ってわかります?
- ──
- なんとなく、場合によっては。
- 大伴
- ワンシーン画に対して
「エモい」って言われるケースが
たまにあるんですが、
いまいち、ぼくにはわからなくて。 - エモいですか、これ。
- ──
- エモいかは、わからないけど‥‥。
- 大伴
- どういうのが「エモい」んですか。
- ──
- わからないです。
ご自分では、どう思っていますか。
- 大伴
- 「エモそうだな」とは思います。
- ──
- あはは、「エモそうだな」って。
- たとえば、作品集の
最後からひとつ前のページの星空は、
見ようによってはエモいかも。
- 大伴
- 星空だから。‥‥そうかも、エモいかも。
- ──
- だけど、この作品集は、
それで終わらせないところがいいですね。 - さっきの「自転車のサドル」という、
エモのかけらもないシーンで終わってる。
- 大伴
- はい。
- ──
- 「ああ、エモかった」で終われば、
一定のファンがつきそうになるところを。
- 大伴
- この作品集を音楽のアルバムと考えたら、
星空は、最後のほうに収録された
壮大なバラード、
みたいな気持ちで入れたんですよね。
- ──
- 竹内まりやで言えば「駅」みたいな。
- 大伴
- 7分くらいある曲だと思います。
- ──
- 作品集には、何作入ってるんですか。
- 大伴
- たぶん70ちょっとくらいです。
- ──
- 発表していないシーンのストックは、
どれくらいあるんですか。
- 大伴
- 絵に落とし込む前の「シーンのタネ」
みたいなものでしたら、
まあ‥‥少なくとも1000以上は。
- ──
- 永遠に出版できるじゃないですか。
そんだけあったら。
- 大伴
- 生きていると、増えていくんです。
- ──
- とても大げさに言っていいですか。
- 大伴
- はい。
- ──
- 大伴さんのワンシーン画って、
「現生人類が生きた証」
であると言ってもいいと思う。
- 大伴
- 大げさですね。
- ──
- やっぱり、そうですかね。
- でも、いまの人類がいったん滅んで、
次なる人類たちが、
この本を、地層の奥から発掘したら。
- 大伴
- ええ。
- ──
- 前の人類は、
こういう日常を生きていたのかって、
思うと思うんです。 - こういうシーンを「エモい」と、
こういうシーンを「残念だ」と
感じていたのか‥‥って思うと思う。
- 大伴
- ああ、そういう意味でいうと、
石器時代のワンシーンや、
未来のSFワンシーンも、
イメージするのは、たのしいですね。
- ──
- 自分は、すこし神経質なところがあって、
ハンガーに掛けられたジャケットが
ちょっとナナメってて、
どっちかの肩が落ちてたりすると、
布団に入って寝てても、
どんなに寒くても、
わざわざ起き上がって直したりしてます。 - 大伴さんも、
けっこうそういうタイプじゃないですか。
- 大伴
- ちがいますね。
- ──
- あ、ちがいますか。そうですか。
- 大伴
- ただ、ハンガーまわりで言うと、
こういう感じが、ものすごくイヤです。
- ──
- あーーーー、わかる。
何でしょう、このイヤさの正体って。
- 大伴
- なんで1個だけこっち向きに掛けた?
- ‥‥みたいな、
ちょっと不安な気持ちになりますね。
- ──
- 発見しだい、ただちに直しますよね。
- 大伴
- 直しますね。
- ──
- やっぱりすこし神経質っぽい感じが、
あるんじゃないかなあ。
- 大伴
- んー、そうなのかなあ。
- 生理的にダメなシーンと言えば、
スタンドを下ろしたまま、
自転車に乗っている人ですけど。
- ──
- 危ない‥‥乗っている人の行く末を、
案じているんですか。
- 大伴
- そんなやさしさじゃないと思います。
ただただ、生理的に気持ち悪いだけ。
- ──
- やはり、お聞きしていると、
ネタ切れしそうな感じはありませんね。
- 大伴
- どんどんたまるんです。
ちょっとしたことばっかりなので。
- ──
- 一生を捧げられますね。
- 大伴
- ワンシーン画にですか‥‥そうですね。
- ──
- ストックが1000以上もあって、
それを死ぬまでアップし続けてたら、
死んでも、
そののちに評価されると思いますよ。
- 大伴
- えっ、死後ですか。
- ──
- いや、「少なくとも」という意味です。
- 大伴
- 評価されるのが死後ってイヤだなあと、
ずっと思ってたんですけど。
- ──
- 少なくとも、ぼくは評価しますよ。
- こんな絵を毎日描いていた人がいたと、
まわりの人に語り継ぎたいです。
- 大伴
- ぼくより長生きする前提ですね。
- ──
- いや、そういうわけじゃないけど。
- 大伴
- じゃあ、死んだら評価してください。
- ──
- はい、します。死んだ次の日にします。
誰よりもはやく。
- 大伴
- お願いします。
- ──
- いやいや、いまのは冗談ですけどね。
- だって、いま生きてらっしゃるけど、
おもしろいと思ってる人、
現に、いっぱいいるじゃないですか。
- 大伴
- ハハハ。何の言いわけですか。
- ──
- ともあれ今後も応援させてください。
- 大伴
- ありがとうございます。
がんばりすぎずに、続けていきます。
- ──
- 人生はワンシーンの連続ですもんね。
- 大伴
- そうそう。
- 歯を食いしばって見つけるものでも
ありませんし。
- ──
- ですよね。
- 大伴
- ぼくは、ただ、人生のワンシーンを、
切り取ってるだけ‥‥ですから。
ど れ く ら い、身 に 覚 え あ り ま す ?
日替わり!ワンシーン画 SLIDE SHOW
006
(おわります)
2019-08-10-SAT
-
書籍
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ワンシーン画や
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2019年8月19日(月)午前11時まで。
当選された方にのみ、
2019年8月20日(火)中に
メールでご連絡いたします。