※本についてはこちらをどうぞ

うれしいお知らせです。
ほぼ日刊イトイ新聞の奥野武範が担当した
数々のインタビューコンテンツが
1冊の本にまとまることになりました。
本は星海社さんから出るのですが、
インタビューアーを軸にした本になるなんて、
なかなかないことだと思います。
ここは、胸を張って「本が出ます!」と
言いたいところなんですが‥‥
ま、奥野本人は言いづらいんじゃないかと。
そこで、何人かの乗組員で、
著者と本を応援する文を書くことにしました。

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担当:平野慎也(ほぼ日)

深海から、宇宙まで。

ほぼ日編集部のミーティングで
共有事項がひと段落すると、
奥野武範さんは必ず、こう切り出します。
「あ、いいですか。」

奥野さんという先輩は、
とにかく何かを持ってくる人です。
最近気になっている写真集であったり、
以前から注目していた会社であったり、
過去に取材した人の近況であったり、
時には自分が出演するライブであったり、
何はなくとも、何かあるのです。
自分のことを語りたがる人ではないのだけれど、
おもしろいと思ったことは、
照れくさそうに笑いながら説明してくれます。
「おっくんのコーナー」とも呼ばれる
その時間が成り立っていることで、
奥野さんの企画はより幅広く、
より深いものになっているのだと思います。

奥野さんは何かを持ってきてくれる、
そこに甘えてはいけないよと言われるのが
編集部でもっとも若い平野です。
今日は奥野さんの仕事について思うことを
僭越ながら書かせていただきます。

奥野さんが担当するインタビューは、
とにかく数が多いです。
『インタビューというより、おしゃべり。』
にも掲載されているなかでも、
誰もが知っている大御所俳優から、
有名人とは言えない91歳のパンク直し職人
「巴山くんの蘇鉄。」のハヤマくんに至っては、
本の帯に書かれた肩書が「友人」ときました。
画家の山口晃さんの次を飾るのが「友人」ですよ。
ただ、この「友人」へのインタビューが
人気の読みものになっているという事実が、
奥野さんの為せる技であり、
同時に「ほぼ日」の特徴でもあります。

以前、奥野さんに相談する機会があって、
企画の幅について訊いたことがあります。
いろいろなジャンルの読みものを担当してますが、
どうやって取材対象を選んでいるんですか。
という企画初心者みたいな質問に対して、
奥野さんの答えは明確でした。

「訊きたいことがひとつでも見つかれば、
取材を申し込んでいいと思ってる」
といった答えです。

身体がふわっと軽くなった気がしました。
あっ、それでいいんだ。
ジャンルや有名無名を問わず、
興味があれば取材に行くべきだ、
という基本的なことを
ひたすら続けているんだろうと。
取材対象者に訊きたいことが
本当にひとつだけでないことは
奥野さんのインタビューを読めばわかります。
それに、取材当日は質問内容ばかり考えて、
うわの空になっていることを知っているので
好奇心を持つことを教わったのだと解釈しました。

奥野さんの好奇心は幅広く、
(この本には掲載されていないけれど)
空を見上げれば宇宙まで。
海に潜れば深海まで。
洞窟の奥スリランカの刑務所
コスタリカの昆虫妖怪の世界
ふらっと「ほぼ日」を訪ねただけなのに、
想像もしていなかった場所へ導いてくれるのは、
奥野さんの好奇心があってのことかもしれません。

「あ、いいですか。」
からはじまる企画の説明で、
どんな人かピンとこなかったかたでも、
奥野さんが取材と編集をして
「ほぼ日」に掲載されたその瞬間、
その人のことが気になってしまいます。
ぼくにとって縁遠いと思っていた領域も、
奥野さんというフィルターを通すことで、
手の届きやすいものに感じられる。
クオリティに対する信頼感があるからこそ、
「担当は奥野です」が成り立っているのだと
イチ後輩であるぼくは思います。

ちなみに奥野さんの本
『インタビューというより、おしゃべり。』
が出ることを発表した日も、いつもと同じように、
ミーティングが終わる頃に
「あ、いいですか。」と切り出しました。
「自分のことで恐縮なんですが、
ぼくの本が出ることになりまして」
という報告が続いたのですが、
照れくさそうに笑う奥野さんに
チームのみながツッコミを入れるので、
本の内容についてどんなことを話したのかは、
あまりよく覚えていません。

自宅で過ごす時間も延びたことですし、
奥野さんという名ガイド役に
連れて行ってもらう旅をぜひ体験してみてください。
『インタビューというより、おしゃべり。』
きっと、いい時間になるはずですから。

(ほぼ日 平野慎也)

(次の乗組員につづきます。)

2020-05-08-FRI

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  • <本について>

    『インタビューというより、おしゃべり。
    担当は「ほぼ日」奥野です。』
    奥野武範

    星海社
    ISBN: 4065199425
    2020年4月26日発売
    ※更新時27日と記していましたが、ただしくは26日です。
    訂正してお詫びいたします。(2020年4月22日追記)
    1,980円(税込)

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