前回の『生活のたのしみ展』で
「全国ミュージアムショップ大集合！のお店」
をやったら大賑わいだったんですが、
その店に、ミュージアムグッズ愛好家の女性が、
遊びに来てくれたんです。
彼女の名は、大澤夏美さん。
ミュージアムグッズが大好きなだけでなく、
ミュージアムグッズの観点から
「博物館学」の研究もされている、とのこと。
おもしろそうなにおいがする‥‥。
というわけで、北海道のご自宅にお邪魔して、
全国から集めたミュージアムグッズを
「大じまん」していただきました。
「こんなグッズが売ってるなら行きたい！」
と、グッズきっかけで
ミュージアムに行きたくなることもあるんだ。
担当は、ほぼ日の奥野です。
全12回のロング連載、お楽しみください。
大澤夏美（おおさわなつみ）
ミュージアムグッズ愛好家。
- ──
- 大澤さんは、専門学校でも
教えてらっしゃるとのことですけど、
どういった科目を？
- 大澤
- ゲームのプランナーや
eスポーツのプロゲーマー、
イラストレーターになりたい学生に、
モノづくりとか
デザインの話をしたりしています。
- ──
- いろんなことをなさってるんですね。
- 大澤
- プロゲーマーになりたい学生に、
「遊んでる暇あったらゲームしなさい」
って言ってます（笑）。
- ──
- たまたまなのか、eスポーツをやっている人が
まわりにいないんですけど、すごく人気ですよね。
- 大澤
- なりたい職業ランキングのトップ10に
eスポーツの選手が入ることもあります。
でもそこに、
学芸員とかはなかなか入らないです。 - だから、学ぶことがたくさんあります。
若い世代が
カッコいいと思っているもののなかに、
ヒントはある。
わたしは、そのヒントを
ミュージアムに持って帰ろう、という
気持ちがあるんです。
- ──
- なるほど。教えつつ、学びつつで。
- 大澤さん自体は北海道が拠点で、
どこかの博物館に属してるわけでなく
フリーでらっしゃいますよね。
- 大澤
- ええ。
- ──
- 東京とかのミュージアムに就職して‥‥
という道もあったと思うんですが、
いまの立場で、
全国のミュージアムを盛り上げたいと
活動してらっしゃる。
- 大澤
- まず、いわゆる「業界」の真っ只中に
どっぷり浸かってしまうと、
ミュージアムに行かない人の気持ちが
わからなくなっちゃうような気がして。 - 子どものころに動物園に行ったっきり、
みたいな人って案外多くて、
どうすれば、そういう人たちにも
ミュージアムに来てもらえるかなあって
よく考えているんです。
- ──
- なるほど。
- 大澤
- あとは、「文化盗用」みたいなことにも
敏感でいたい。 - たとえば
伝統的な文化をグッズ化するときには、
当事者じゃない人たちが
グッズをつくることへの意識って、
しっかり持ってなきゃいけない。
北海道にいると、そのあたりに、
センシティブになれると思っています。
- ──
- 消費のど真ん中にいるより、
ちょっと外から業界を見ているほうが、
いろんなことに意識的でいられる。
- 大澤
- もちろんね、東京のミュージアムにも
意識をしている人は
たくさんいるんですけど、
わたしの場合、消費の側だけにいたら
無自覚になっちゃいそうで。 - 北海道は、多文化ということについて
身近に考えさせられる場所だと、
わたしは思っています。
そういう意味で、北海道にいることで、
「繊細さ」みたいなものを
保っていられるというのはあるかなと。
- ──
- いま、美術とかアートって流行ってる、
んですかね‥‥？
- 大澤
- おしゃれな場所って思われてますよね。
それが、めっちゃうれしいです。 - わたしは、ミュージアムをフラットに
気軽に楽しんでほしいので、
理由は何でも、
おしゃれというきっかけでももちろん、
来てもらえれば最高です。
- ──
- ぼくも最初は、何だか知的で
おしゃれっぽいよね‥‥というイメージを
美術館に対しては持ってました。 - 行ってみたら、たしかにそうなんだけど、
それ以上に「おもしろかった」んですが。
- 大澤
- アートが好きになって、
美術館へ行く人はとても増えたので、
博物館にも行ってほしいです。 - 歴史も、自然も、動物園も、
みんな楽しいよって、伝えたいですね。
- ──
- 誰かが何かを、おもしろいとか
大切だと思って展示しているわけだし、
その目で見たら、
本当に「何でも楽しめる」んですよね。
- 大澤
- そう。そういうことを伝えていくのが
自分の仕事かなと思います。 - 博物館の方々も、いろんなアイデアで、
みなさんに来ていただくために、
いろいろがんばってらっしゃいますし。
- ──
- ワークショップを開催したり。
- 大澤
- そう。トークイベントもあるし、
出前授業みたいなこともやっています。 - 所蔵物をレプリカにして貸し出せる
キットなんかもあって、
学校の先生が
授業のために申し込んだら、
借りることができたりとか。
- ──
- そのミュージアムのある地域や、
住んでいる人たちとのつながりとかも、
いまっぽいキーワードですよね。
- 大澤
- 大事だと思いますね
- たとえば、福岡市博物館さんだったら、
金印って覚えてます？
- ──
- はい「漢委奴国王」って書いてるやつ。
志賀島から出てきたんでしたっけ。
- 大澤
- その金印のスタンプが
ミュージアムグッズで売ってるんです。 - 精度が高いので、学校の先生が買って、
授業で見せたりとかしてるんです。
ミュージアムグッズを授業で使ってる、
という声がけっこうあります。
- ──
- つまり、ちゃんとつくっていればこそ、
学術的な裏付けがなされていればこそ、
授業でも使えるってことですね。 - こんなのが畑から出てきたんだよ、と。
最高だなあ。
- 大澤
- そこがミュージアムグッズのいいところ。
- あと、ふだんは美術館にしか行かないけど、
さっきの河童のトートがかわいいから、
もりおか歴史文化館へ行ってみようかとか。
- ──
- グッズをフックに訪れる。ありますよね。
とくにあの河童のトートは本当に素敵だし。
- 大澤
- そういう「垣根」を、スッと超えてくれる。
それがミュージアムグッズなんです。 - みんなの大事なミュージアムだよねって、
グッズの視点からも
言えるようになったらいいなと思ってます。
（つづきます）
2025-08-07-THU
-
取材では、時間の許すかぎり、大澤夏美さんの
お気に入りのグッズを見せていただいたのですが、
それでも、まだまだほんの一部。
保管庫には、丁寧に梱包され仕分けされたお宝が、
ぎっしり詰まっていました。
大澤さんの２冊のご著書には、他にもたくさんの
魅力的なグッズが、制作にいたる物語とともに
紹介されています。
気になった方は、ぜひチェックしてみてください。
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