
前回の『生活のたのしみ展』で
「全国ミュージアムショップ大集合!のお店」
をやったら大賑わいだったんですが、
その店に、ミュージアムグッズ愛好家の女性が、
遊びに来てくれたんです。
彼女の名は、大澤夏美さん。
ミュージアムグッズが大好きなだけでなく、
ミュージアムグッズの観点から
「博物館学」の研究もされている、とのこと。
おもしろそうなにおいがする‥‥。
というわけで、北海道のご自宅にお邪魔して、
全国から集めたミュージアムグッズを
「大じまん」していただきました。
「こんなグッズが売ってるなら行きたい!」
と、グッズきっかけで
ミュージアムに行きたくなることもあるんだ。
担当は、ほぼ日の奥野です。
全12回のロング連載、お楽しみください。
大澤夏美(おおさわなつみ)
ミュージアムグッズ愛好家。
- ──
- 大澤さんの活動を見ると、
さまざまなミュージアムショップに
行ってらっしゃるようですが、
「高尾ビジターセンター」とかまで
カバーなさってますよね。
- 大澤
- はい。
- ──
- つまり、登山をする人たちが立ち寄る
インフォメーションみたいな?
- 大澤
- そうですね。
- ──
- そんなところにまで、
するどく目を光らせているんですか!
- 大澤
- はい(笑)。
- わたしは「博物館」が守備範囲なので、
美術に限らず、
ビジターセンターもチェックしてます。
- ──
- たしかにグッズ、売ってそうですけど。
- 大澤
- 売ってます、売ってます。
解説イベントもあって、楽しいですよ。 - インタープリター、つまり解説者の人と
みんなで一緒に山を回って、
ほら、こーんな葉っぱが落ちてますよ、
こんな生き物がいます、
みたいなことを教えてもらったりして。
- ──
- そういうツアーにも参加しつつ、
グッズをチェックしてる。
- 大澤
- 解説員の方のガイドの内容を、
かたちにしたグッズがあるんです。 - たとえば、これ。
ムササビの食痕のピンバッチとか。
- ──
- えっと、葉っぱに穴が‥‥。
- 大澤
- ムササビって、
葉っぱの真ん中のやわらかい部分だけ
食べるんです。 - だから、ムササビが住んでいる森では、
真ん中に穴があいた葉っぱを見かけるんです。
その「食痕」をピンバッジにています。
- ──
- つまり、真ん中がおいしいってこと?
- 大澤
- そうなんでしょうね、きっと。
- 葉っぱを半分に折って食べるんですよ。
だから、穴があいちゃうんです。
- ──
- イチゴの頭だけ食べるみたいな。
- われわれ人間の場合、
それやったら怒られそうだけど、
ムササビの場合はピンバッジになっちゃう。
- 大澤
- そうそう、ムシャムシャって。
- だから、一発でわかるんですね。
あ、ムササビいたんだなって。
- ──
- おもしろいなあ。
- ムササビをピンバッジに‥‥じゃなく、
食痕のほうをグッズ化してるんですね。
- 大澤
- むしろ、ここのビジターセンターでは
生き物そのものは、
そんなにグッズにはしてない気がする。 - 本物とは山で出会って観察してねって、
そういうことなのかも。
- ──
- 同じシリーズの中に
「カケスの羽」っていうバッジもあります。 - こんな羽が落ちてるんですか。
高尾山には。
- 大澤
- らしいですよ。
- こんなにもきれいな羽が落ちていたら、
拾って大切にしますよね。
- ──
- まさしく「山のお宝シリーズ」ですね。
- あとは「シカの角」ピンバッジ。
たしか1年に1回、取れるんですよね、
シカって。こんな立派なツノが。
- 大澤
- はい。こっちは旅するチョウのピンバッジ。
アサギマダラ。 - このチョウは、長い距離を移動するんです。
海を超えて、
台湾のほうまで行った記録もあるとか。
- ──
- え、そんなに飛び続けられるんですか。
- 大澤
- このチョウを見つけたら連絡をくださいね、
という、
研究対象の個体であることがわかるように
個体に印をつけてるんです。
- ──
- つまりどこからどこまで飛んだかのが
わかるように。
本当だ、記号らしきものが書いてある。
「599」「TAKAO」って。 - 海を超えて飛び続けるってすごいなあ。
翅(はね)を休める場所もないでしょうに。
- 大澤
- たしか「鬼滅の刃」の胡蝶しのぶさん、
あのキャラのまわりに飛んでいるチョウが、
このアサギマダラだとも言われています。
- ──
- あっ、そうなんだ! あの、髪飾りの。
- でも、葉っぱになぜ穴が空いてるのか、
聞かなきゃわからないことですよね。
で、聞いて知ると、なるほど~となる。
- 大澤
- ガイドさんの知見という財産が
活かされていて、
本当にすてきなグッズです。
- ──
- ピンバッジ以外には、どういうものが?
- 大澤
- たとえば山に生えている植物、
この時期にはこういうのが見られるよ、
という手ぬぐいとか。
山での学びにつながるようなグッズで、
かつ、買ってすぐに使えて便利。
- ──
- 手ぬぐいに、植物の絵が描いてあると。
- 大澤
- 山の植物の図鑑になっていたりします。
- 手ぬぐいって、やっぱり人気なんです。
コレクターの方もいますし。
あと、ミュージアムまわりには
フィールドワーカーの人も多くて‥‥。
- ──
- つまり「実用品」としても、
便利に使われているってことですね。
- 大澤
- はい。考古学も、植物も昆虫も動物も、
研究者はみんな使います。
濡らしてもすぐに乾くし、本当に便利。
- ──
- 前回の「生活のたのしみ展」でも、
手ぬぐいって、
各ミュージアムから
すごくたくさん集まってきちゃって
こんなに売れるのかな‥‥と思っていたら、
すごい売れました。
そのときに、いまさらながら、
手ぬぐいの人気を思い知りました。 - たのしみ展への出店者側の人たち、
とくに飲食店をやってらっしゃる人たちも、
買いに来てくださったんです。
お店で使うんです‥‥って言って。
- 大澤
- ああ、わかる。巻いたりとかね。
ニーズあるんですよね、手ぬぐいって。
(つづきます)
2025-07-30-WED
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取材では、時間の許すかぎり、大澤夏美さんの
お気に入りのグッズを見せていただいたのですが、
それでも、まだまだほんの一部。
保管庫には、丁寧に梱包され仕分けされたお宝が、
ぎっしり詰まっていました。
大澤さんの2冊のご著書には、他にもたくさんの
魅力的なグッズが、制作にいたる物語とともに
紹介されています。
気になった方は、ぜひチェックしてみてください。
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