2023年春、ほぼ日は自転車を販売します。
自転車メーカー、
「トーキョーバイク」さんとのコラボモデルです。

「トーキョーバイク」で人気の車体に、
ほぼ日オリジナルのカラーリングをほどこしました。
フレームには、ほぼ日がたいせつにしている
「ONLY IS NOT LONELY」ということばも。

山を走るのが「マウンテンバイク」なら、
東京を走るのが「トーキョーバイク」。
もちろん、東京だけでなく、あなたの街でも。

「速さ」や「移動」のための機能よりも、
なんでもない日常にたのしい変化を加えるような
「かろやかさ」や「ここちよさ」をたいせつにする‥‥。
そんな「トーキョーバイク」の自転車のありかたに、
わたしたちほぼ日は、ときめいたのでした。

清澄白河にある店舗にお邪魔して、
「株式会社トーキョーバイク」代表、
金井一郎さんにお話を聞きました。

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第3回

便利なだけの道具じゃない。

───
急に「そもそも」の質問なんですが、
金井さんはどういう経緯で
トーキョーバイクをはじめられたのでしょう? 
金井
ぼくは、もともとサラリーマンで、
オートバイメーカーの営業をやっていました。
で、たまたまその会社の先輩が独立して
自転車の仕事をはじめたんですね。
───
先輩が自転車のお仕事を。
金井
それで、その先輩のお手伝いのようなことを
するようになったんです。
自転車に興味をもつようになったのは、
それがきっかけですね。

───
ということは、最初から
自転車好きというわけではなかった。
金井
はい。オートバイが好きで、
それを扱う仕事に就いてましたので。
でも、先輩の手伝いをしているなかで、
自転車への関心が出てきて、
自分で自転車好きの人に向けた
ウェブ通販の会社をはじめようと思ったんです。
と、思ったのはいいけれど、
「あれ? ぼくは自転車マニアじゃないぞ」
と気づきまして(笑)。
───
その段階で気づいたんですね(笑)。
金井
そうですね(笑)。
ただ、そういう素人目線からすると、
そのころの自転車業界はこぞって
マニアに向けたものばかりを
作ろうとしているように見えたんです。
───
初心者には敷居が高いような。
金井
ええ。
ぼくはそこにはちょっと乗れないな、
という気持ちがありました。
そんなときにふと、
「トーキョーバイク」という名前を
思いついたんです。

───
まず名前が出てきた。
「トーキョー」という単語は
どういうインスピレーションで? 
金井
「街」ですね。
───
街。
金井
マニアではない一般の人が
街を自転車で走ったら
いままで見えてなかった部分が
見えてくるだろうし、
毎日の暮らしも静かに豊かに変わるだろうな、
と思ったんです。
それで自然と、
自分が暮らしている街、
「トーキョー」ということばが浮かびました。

───
マニアではなく、生活者の視点ですね。
金井
山を走るのが「マウンテンバイク」なら、
東京を走るのが「トーキョーバイク」だろうと。
すぐにホームページの
ドメインで使えるかどうかを調べて、
まだ誰も使っていなかったので、
「これだ!」と決めました。
───
ネーミングが浮かんだ段階でもう、
「街乗りをたのしむ」というコンセプトは
決まっていたんですね。
金井
そうでした。
それが1999年、メッセンジャーの人たちが
スポーツバイクで街中を走る姿を
よく見かけるようになったころです。
───
ああ、あのころ‥‥。
かっこいいスポーツバイクが
道路にたくさんあらわれた記憶があります。
金井
あの時期、
「自転車で街をたのしむ」ということは
ほとんど言われていませんでした。
───
それが、いまに続いている‥‥。
(あらためて店内を見渡す)
当時からこの場所にお店を? 
金井
いえ、最初は谷中にお店がありました。
清澄白河に移ってからは谷中が支店になって、
いまは、中目黒と吉祥寺にも直営店があります。
───
ああー、どこも
街歩きがたのしそうな場所です。
金井
ちなみに、
清澄白河のこの場所にお店をだしたのは、
場所探しをしているときに
ふらっと入ったクラフトビールのお店が
すごく雰囲気がよくて、
「この街とは仲良くなれそうだなぁ」
と思ったのが決め手になったんです。

───
やっぱり、「街」が最初に。
自転車に乗るだけじゃなくて、
そこでの暮らしをたのしむことを
すごくたいせつに考えているんですね。
金井
その部分がないと、
自転車はただの便利な道具になっちゃうんです。
トーキョーバイクは、
自転車だけでも、
乗る人だけでも成り立ちません。
「街」というコンテンツが必要なんです。
───
お話をうかがっていて、
「自転車は便利なだけの道具ではない」
という感覚がどんどん強くなっています。
金井
繰り返して恐縮ですが、
自転車で毎日の暮らしがちょっとでも
たのしくなったらいいなと思っています。
たのしむためには、
デザインもたいせつだし、
色だって好きなのを選びたいですよね。
───
そうなんです、
「自分だったらどれを選ぶかな?」
と思いながら自転車を見ていく感じが、
ちょっと洋服を選ぶのに似ていると思いました。
好きなデザインを身につけて、お出かけする。
金井
そうですね。
「あの人、いつも気持ちよさそうに
自転車に乗ってるよね」
なんて言われたら、
ちょっと気分いいじゃないですか。

───
ちょっとどころか、
かなり気分よくなりそうです(笑)。
金井
(笑)。
───
最後にひとつ。
今回、自転車に「Only is not Lonely」
という英文を入れていただきました。
これは創刊して数年後からずっと、
ほぼ日の基礎にあることばなんです。
「たったひとりということは、孤独ではない」
というような意味で、
英文法としてはまちがっているらしいのですが、
糸井重里が「ほぼ日」につけた
コピーとしてだいじにしています。
参考にこちらをお読みください。
「東日本大震災のこと。」のなかで、
糸井重里があらためて「Only is not Lonely」について、
思うところを記しています。
金井
すてきなコピーです。

───
今回の企画に、
このコピーがすごく重なるので
フレームに入れていただくことにしたんです。
金井
自転車って、誰かといっしょに
走るのもたのしいんですが、
ひとりで乗るのが最高にいいんですよね。
ぼくもよく、気が向いたときに
ふらっとひとりで近所を走るんです。
───
ひとりの時間に、自分でこいで、
目的もなく近所を走る。
見逃していたものに気づく。
‥‥かなり、
この自転車がほしくなりました。
金井さん、
きょうはありがとうございました。
金井
こちらこそありがとうございました。

乗ってみました!

このお話をうかがったあと、
インタビュアーの「乗ってみたい気持ち」は、
当然ですが最高潮に達していました。
短い時間でしたが、試乗させていただきました!

「わ、ほんとにこぎはじめが軽い!」「わ、ほんとにこぎはじめが軽い!」

「スーっと進むー!」「スーっと進むー!」

▲スーッと、走っていってしまいました。▲スーッと、走っていってしまいました。

▲お店のまわりをぐるっと回って戻ってきました。▲お店のまわりをぐるっと回って戻ってきました。

「こーれは、かなり、いいぞ~!」「こーれは、かなり、いいぞ~!」

結局この乗組員は、
ほぼ日とのコラボモデルの発売を待てず、
別な車種のトーキョーバイクを店舗で購入しました。

(以上。トーキョーバイク・金井一郎さんへの インタビューを終わります)

2023-05-26-FRI

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