
糸井重里が監修し、企画、設定、全シナリオを手掛けた
RPG『MOTHER』シリーズ。
そのことばをすべて収録した本を
2020年12月に発売したことをきっかけに、
立ち上げたのが「ほぼ日MOTHERプロジェクト」です。
『MOTHER』にまつわるコンテンツや
アイテムをつくっている本プロジェクトのなかから、
代表的なアイテムの
つくり手のお話や現場のようすをお伝えします。
- ──
- 今回作っていただいたリュックのことを
いろいろお聞きしたいんですけれど、まず、素材は?
- 岩上
- うちのリュックの素材は基本的に、
ナイロンかポリエステルなんです。
あとは厚さと、生地の打ち込みとかの種類があるので、
アイテムによって調整しているっていう感じですね。
今回の『MOTHER』のバッグは、
ちょっと厚手の500デニールのナイロン生地を使っています。
この厚さって、70年代とかに多用されていたんですね。
コンセプトが、ちょっとクラシックな雰囲気、
っていうことだったので、イメージ的にはそれかなと思って。
薄手になると、表面もサラッとして、
ちょっと今っぽく、洗練された感じになってくる。
今回はあえて500デニールの生地を使っています。
- ──
- 生地の厚さで雰囲気が変わるんですね。
内側は。
- 岩上
- 内側は210デニールの生地です。
裏地としては、わりと一般的な厚さですね。
色は、中のものが見やすいように、
ちょっと明るめのカラーにした感じですね。
- ──
- 両サイドに長いファスナーがついている形って、
私は初めて見たんですけど、
これって、一般的なものなんですか?
- 岩上
- 一般的には片側ですよね。
でも人によって使いやすさって違うし、
癖みたいなものもありますよね。
あと、置いたリュックから何か取り出すときとか、
どっちもあったほうが便利かなっていうのと、
デザイン的にもおもしろさもあるかな、って。
機能を考えると、どっちか1個でいい、
っていう考え方もなきにしもあらず、ですけど。
僕らは、そこは便利さと、あと、おもしろさで、
わざと両方つけたりっていうこともしますね。
実際、これ、便利だと思うんですよ。
- ──
- すごく便利だと思いました。
それと、ポケットが多いのもうれしいし、
どれもすごく使いやすいなと思ったんですね。
- 岩上
- ああ、よかったです。
- ──
- 両脇のポケットは、水筒とかもスッと入って。
- 岩上
- 傘も入れられますしね。
- ──
- 外側のポケットも、手を入れやすいんですよね。
内側のも、すごく出し入れが楽な感じで、
これは使いやすいなと思いました。
何か秘密があるんですか。
- 岩上
- 実際、それを因数分解して数値化はできてないんですけど。
サンプルができたら、自分らで手を突っ込んでみたりして、
違和感がないところまで調整していくっていう工程が
効いているのかなっていう感じですけどね。
- ──
- なるほど。型通りにつくるんじゃなくて、
実際に試してるっていうところが。
- 岩上
- バッグ本体の口のサイズ感と、
内ポケットの口の比率も、毎回変わったりします。
前回はよくても、この口だと
もうちょっと広いほうがいいねとかって、
都度変わってくるので。
そのへんの細かい修正、
ここ何ミリ広げたほうがいいねとかっていうのを
何度か繰り返して、ベストなのをつくっていく。
そのやり方が効果的なのかなと、
ちょっと思ったりしております。
- ──
- なるほど。たしか、ベースになったのは、
500Dのハイカーパックだったと思いますけれど、
もう、それとは違うものになっているんですね。
- 岩上
- 多少は共通してる部分はあるんですけど、
内側はまったく違います。
ほぼほぼ変わっているんですね、仕様もね。
- ──
- リュックって、大概は、パターンがあって、
そこからの微調整でできるものだと思ってました。
- 岩上
- ああ、そうですか。
僕ら、フォルムもけっこう大事にしていて。
今回は背面にPC用のスリーブを入れたんです。
で、背中のパットって普通、まっすぐいくんですけど、
これは上が三角形になるように削ってるんですね。
まっすぐだと、上の巾着が変なことになって、
たぶん背負ったときにカッコ悪いんですよね。
だから、PCを入れても大丈夫な範囲で、
フォルムも重視してパットを調整しました。
だから、あれは今回のモデルだけのつくり方です。
- ──
- ああ、そうなんですか。
今回のリュックだけの仕様なんですね。
- 岩上
- けっこうイレギュラーな感じの作業はやりましたね。
- ──
- たしかに、フォルム、いいですよね。
ふたの大きさのなじむ感じとか、
全体の収まりがいいなあ、と思いました。
- 岩上
- うれしいです、伝わって。
やっぱりそこは、杓子定規につくっちゃうと、
なんか無責任なフォルムになっちゃうんで、
ちょっとね、大事にしたいなと思っております。
- ──
- 上のフタを閉めるところの、
引っ張って開ける、あの機能っていうのも、
私は初めて見ました。
- 岩上
- マグネットバックルですね。
今回、外しやすくしたいっていう
リクエストをいただいて
マグネットバックルを採用しました。
- ──
- 最初はどう開けていいか迷いましたが、
1回開けて慣れたら、あっ、便利!って。
- 岩上
- そうですね、最初はそう、
外れないのかと思っちゃいますね。
- ──
- アウトドアでも、シティユースでも、どっちもいい。
アウトドアで使うとなったとき、
雨とかには対応できていたりするんでしょうか?
- 岩上
- 完全防水じゃないので、大雨に遭ったら
縫い目とかから水が入ると思います。
ですから防水とまでは言い切れないんですけど。
まあ、布地はナイロンなので、
軽い雨ぐらいだったら大丈夫、という感じです。
- ──
- かなり理解できてきました。
なんか、いいところがたくさんで、
楽しくなってきますね。
あと特徴っていうと、どんなところですか。
- 岩上
- ハーネスの形も、
ちょっと変わってると思うんですけど。
ハーネスって、背負うところ。
- ──
- はい、背負いやすそうでした。
- 岩上
- 本体側はちょっとクラシックな雰囲気ですけど、
こっちは、けっこう立体裁断で、
ちょっとハイテクに近いようなつくりで。
そのコントラストがおもしろいかなとは思って、
このハーネスにしてみたところも、
今回の『MOTHER』のリュックの特徴のひとつです。
- ──
- そうなんですね。
- 岩上
- はい。あれをそのまま、
普通のまっすぐのパットが入ってるだけのにすると、
ちょっと物足りない感じもすると思って。
デザイン的にも、機能的にもひと工夫しました。
- ──
- なるほど。
肩に食い込まなくていいなと思ったんですが、
ちゃんと理由があったんですね。
フィットして楽そうだなって、まず感じました。
- 岩上
- よかったです。
それから、背中のところですね。
背中のパットも、真ん中だけに入ってるんですね。
それは、横から風がちょっと入る隙もつくってる、
っていう意味合いもあるんですね。
ちょっと蒸れづらいっていう効果があるので、
真ん中だけにしてます。
- ──
- 実際に外で活動された経験も、
いろんなところに入ってるっていうことですね?
蒸れるとか、暑いとか。
- 岩上
- 50年生きてると、不愉快な思いもして(笑)。
- ──
- 自分がした不愉快な思いを、そこで解消するように。
- 岩上
- そのようにしてる、っていうところですかね。
- ──
- いろいろ勉強になりました。
理想のリュックってひとつではないんですね。
それぞれのシチュエーションに応じた
いちばんいいリュックをつくってらっしゃる、
っていう感じがしました。
- 岩上
- そうですね。
前、石川さんも言われてたんですけど、
十徳ナイフって、便利そうだけど使いづらい。
スプーンもナイフも、いろいろあるんだけど、
ポイントが絞れてないので、
全部が中途半端みたいになっちゃうんですよね。
使い方にフォーカスして、それに寄せているものが
やっぱり一番ベストかなと思って。
そうなると、ちょっとずつ変えていくことが、
必要かなと思いますね。
- ──
- なるほど。
今回つくっていただいたのは、
アメリカの懐かしい形から発想はしているものの、
日頃は街でパソコンを持ち歩き、
たまに赤城みたいな山に行くような、
私たちのためのリュックって言えそうですね。
- 岩上
- そうですね。
外側はけっこう懐かしい感じのフォルムと、
温かい感じの仕上がりですけど。
内側とハーネスはけっこう、
しっかり今っぽい仕上げになっているので。
おもしろいまとめになったかなとは思っています。
- ──
- すごくおもしろい話をうかがいました。
ありがとうございます。
(おわります。)
2026-05-22-FRI




