
糸井重里が監修し、企画、設定、全シナリオを手掛けた
RPG『MOTHER』シリーズ。
そのことばをすべて収録した本を
2020年12月に発売したことをきっかけに、
立ち上げたのが「ほぼ日MOTHERプロジェクト」です。
『MOTHER』にまつわるコンテンツや
アイテムをつくっている本プロジェクトのなかから、
代表的なアイテムの
つくり手のお話や現場のようすをお伝えします。
- フルカーボンで、独特な開閉の機構を。
- ──
- この傘で、がんばったぞ、っていうポイントは?
- 山口
- いくつかあるんですけど、一つはこの持ち手。
折り畳み傘の持ち手って、薄っぺらいものとか
握りにくいものが多いんですけど。
- ──
- そうですね、丸っこかったり小さかったりしますね。
- 山口
- そこの形状を独自にデザインを起こしまして、
しっかりホールドできるようにしてます。
- ──
- 大きな穴が開いているのは、軽くするためですか?
- 山口
- その狙いもあるんですけど、
ストラップとかカラビナを付けていただいたり、
使い方を自由にアレンジしてほしいと思いまして。
それと、骨の構造ですね。
折ってそのままピタッと収まるようにしました。
こういうの、折り畳みではなかなかできないんですよ。
- ──
- なんかすごいですね。
傘を閉じるときもちょっと違いますね。
- 山口
- そうですね。
この真ん中のパーツ‥‥下ろくろといいますが、
これを、押し上げれば開いて、
閉じるときは手前に引くだけでいいんです。
ちょっと言葉では説明しづらい構造ですけど。
ただこれ、よそではほとんど採用されていないと思います。
この傘の一番マニアックなところかもしれない。
- ──
- おもしろいですねー。
ぜひ、体感してみてほしい機構ですね。
たたむときは、下ろくろをすっと
上から下ろしてくるだけなんですね。
下ろくろを上げたら開いて、手前に引けば閉じる。
今までの傘でこんなのありました?
- 山口
- あるにはあるんですけど、
フルカーボンでやってるところって
ないと思います。
- ──
- 何でそうしたんですか?
- 山口
- できるだけ鉄を使いたくなかったんです。
鉄ならノッチを作って引っかけられるんですけど、
カーボンの繊維と樹脂でできたパーツなので、
それができないんですよね。
それでこういう機構を開発したわけなんです。
- ──
- なるほど。フルカーボンにしたかったから、
ここが特別な構造になったんですね。
鉄を入れるのが嫌だったのは、
錆がきてダメになるのが早いからとか?
- 山口
- 軽くしたかったから。
軽さと強度を出すためです。
- ──
- あ、軽い。
やっぱり鉄は重たいんですね。
強度も鉄よりもカーボンのほうがあるんですか?
- 山口
- この傘の重さでこの強度を出すんだったら、
もう圧倒的にカーボンが優れてますね。
鉄は力が逃げにくいから、
軽くすると曲がりやすくっちゃうんです。
カーボンファイバーはしなるので、力が逃げる。
よほどの強風じゃないと、
折れるところまではほぼいかないんです。
というところで、より強く軽くしたかった。
- ──
- より軽くて丈夫なんですね?
- 山口
- しかも8本骨ですから。
8本骨の60センチでこの重さは、
なかなか意外性があると思います。
- ──
- 確かにそうですね。
最近の夏の日差しには、
60センチくらいおおきな傘が必要ですね。
スッポリ膝下ぐらいまで影ができるから、
「MOTHERのひがさ」を使うのがたのしみです。
- 山口
- 親骨の長さ60センチの折りたたみというのは、
今ある晴雨兼用傘の中では
一番大きい部類に入ると思います。
- ──
- その大きさのわりには
本体280gというのがうれしいです。
大きさの割には軽くかんじますよね。
8本骨にしたのも強度のためですか?
- 山口
- 強度ですね。
その分ちょっと
たたむのが面倒くさいですけど。
- ──
- でもそれで強度が得られるなら、
ちょっとの手間ですよね。
- 生地を着せ替えて、長く使える傘に。
- 山口
- あとは、ユーザーさんが生地の交換を手軽に行える。
こういう機構そのものがたぶん、
世界でもほぼほぼ使われてないものでして。
しかも折りたたみ傘で、
っていうのはほとんどない。
ごく稀です。
- ──
- それはどういう考えから?
- 山口
- この傘は、カーボンという高価で丈夫な骨ですから、
構造自体はすごく長持ちするはずなんですよね。
なんですけど、先に生地が傷むんです。
- ──
- 傘の生地ってどのぐらいで傷むものなんですか?
- 山口
- ほとんどの生地がだいたい、2~3年ぐらい。
撥水が落ちてきたり、汚れたり、という
機能の低下、審美性の低下が起きる。
せっかく強くて高級な骨を使ってるんで、
それを長く使っていただくために
生地交換式にした、という経緯があります。
- ──
- 生地が傷んだからって、骨ごと捨てちゃったら
それは本当にもったいない話ですよね。
そうか、傷んでなくても、着せ替えのように
生地だけチェンジもできるわけですね?
- 山口
- そうなんです。
気分に応じて、色を変えて遊んでみたりとかね。
夏ならサマーシールドで遮熱性の高いものを使う。
ほんとに雨だけ防げばいいとか、軽いのがいいなら、
機能は限られるけど薄い生地のものにするとか。
そういうアレンジができるように、
互換性、拡張性を持たせたようなかたちですね。
- ──
- なるほど、確かに骨は軽いから、
生地を薄いものにしたら
傘そのものはもっと軽くなるってことですね?
- 山口
- メチャクチャ軽くなりますよ。
生地の重さって、1平方メーターあたりのグラム数、
「目付」っていうのであらわすんですけど、
今回のこのサマーシールドが130g /㎡ぐらい。
傘用で軽いものだと
50 g /㎡くらいのものからありますから。
- ──
- へえ〜。
そんなに違うんですね。
- 山口
- 軽量を好まれる人はもっと薄く薄くっていうのが、
用途に応じて、可能になるんです。
なのでそういうふうにアレンジしてもいいし。
とは言うものの、このサマーシールドみたいな、
しっかりした多機能の生地、
それなりの重量が出てしまうようなものでも、
しっかり支えられなくちゃいけない。
そこをちゃんとクリアできるように、って
考えて設計したのがこの傘なんですよね。
- ──
- 軽くて丈夫なカーボンファイバーを長く使えて、
余ってしまう生地の再利用もできる、
すばらしい傘になりましたね。
- 山口
- 僕らが傘を作ろうと思った最初の頃、もともとは
サマーシールドを使う前提ではなかったんです。
初号機、621って言うんですけど、
621では、あくまでも使われなくなった生地、
東レグループで発生した使われなくなった生地を
もう一度活用したいというのがスタートで。
だからこそ、交換機構を持った形状、設計に、
っていう発想が生まれたんだと思います。
そこが、やっぱり一番のポイントですね。
- ──
- どんどん夏が暑くなっているので、
ぜひ使ってみたいです。
待ち遠しいです。
ありがとうございました。
(おわります。)
2026-05-13-WED




