
『MOTHER』と『MOTHER2』には、
発売当時に雑誌や攻略本などで使われていた
キャラクターたちの粘土フィギュアが存在します。
ドット絵で描かれたゲームのキャラクターたちを
粘土や針金をつかって立体物として表現したもので、
それぞれのゲームの取扱説明書に記載され、
『MOTHER』シリーズの世界を象徴するものとして
多くのファンの記憶に残っています。
この粘土フィギュアの作者・トットリさんは、
攻略本で紹介されていたり、
以前から糸井が「作者はトットリくんでね‥‥」と
言っているのを耳にしてきましたが、
本名も連絡先もわからず、
長い間、謎の人でした。
2025年7月、
『MOTHERのかたち。』展を催すにあたり、
なんとかしてお話をうかがいたいと思い、
当時、交流されていた
みうらじゅんさんにお尋ねしたところ、
すぐにトットリさんにつないでくださって、
いっしょに遊びに来てくれました。
『MOTHER』開発当時のおふたりのお話は、
知らないことがいっぱいで、
混乱するほどおもしろいです。
- ──
- そんなこんなで『MOTHER』は35年周年、
『MOTHER2』は30周年を迎えました。
- みうら
- このトットリの粘土フィギュアも
そろそろ国宝指定を受けますね(笑)。
- ──
- ほぼ日の中でも、すごいお宝です。
- みうら
- 「ほぼ国宝」ですね。
- ──
- ファンにとっては、この粘土フィギュアが
大事なキャラクターの
イメージそのものですから、
まさに「ほぼ国宝」ですね!
ていねいに、ていねいに時間をかけて、
手をかけて作ったものですから、
すばらしいですよね。
実物を見ていただきたいです。
- みうら
- ほぼ国宝はやっぱ、
実際見ないと、わかんないよねえ。
- ──
- 写真だと平べったくなっちゃうんですよね。
トットリさん、ありがとうございました。
なんか、産んでいただいて。
- トットリ
- イメージをつくるってことを
狙っていたんですよね。
ゲームをしているときに
ドット絵じゃなくて、
立体のイメージをこう思い起こさせるために、
立体を作ったんですね。
- みうら
- それって、映画みたいな発想だよね。
- ──
- 当時、3Dアニメとかもない時代ですね。
本当にすごいなあ。
- トットリ
- 新しい『MOTHER』を作ろうっていう話は、
ないんですか。
- ──
- はい。
- みうら
- トットリ、そんなことを言ったら、
また、「粘土フィギュアを作れ」の
依頼がきちゃうよ(笑)。
今から100体って20代の頃、想像できない
“死ぬかも知れない”キツさだろうし。
- トットリ
- キツいよねえ。
でも、30代になってたよ。
- みうら
- そっか。
- ──
- じゃ、糸井さんは40歳ぐらいの時ですか?
- みうら
- そうなりますね。
- トットリ
- 糸井さん、若いよね。
- みうら
- 糸井さんはフォーエヴァー・ヤングだからなあ。
初めて任天堂にゲーム企画を持ち込んだ
っていう話を聞いたとき、
「俺でもまだまだ通用しない世界が
あるんだよ、みうら」って、言ってた。
糸井さんはもうバリバリな有名な人だったのに、
まだ持ち込みをするんだと思って、
ビックリしたんです。
僕が“ない仕事”の意識を
強く持ったのはきっと、
それが大きかったと思います。
- ──
- 自分からねえ、提供していこう、
プロポーズしていこうっていうのは、
糸井・みうらさんの、こう、流れですよね。
- みうら
- いや、僕はその配下です(笑)。
糸井さんから教わったことは、
「基本、持ち込みだからね」でした。
だから、トットリのスカウトっていうのも
その流れだと思います。
- ──
- 本当に。
今回、お声がけして、
実際にお会いすることができてよかったです。
トットリさんは、もう伝説化していて。
- みうら
- トットリ伝説(笑)。
- ──
- 「作者はトットリさん」ということは、
みんなが知っているけど、
「何をしている人か?」とか、
「どこにいるのか?」とか、一切、情報がなくて。
- みうら
- 「昭和の運慶」なのにね(笑)。
- ──
- 唯一のプロフィールが、
『MOTHER』の攻略本のこの部分です。
△『MOTHER百科』(小学館)
- トットリ
- こんな丸いメガネしてた、俺。
誰が、書いたの? この文、石井さんかな。
- みうら
- 石井でしょうね(笑)。
- トットリ
- 絶対、そうだよね。
- みうら
- ここには「たった1人で約10カ月」って
書いてありますね。
- トットリ
- あ、ほんとだ。
- みうら
- 「なにしろ、彼は3歳の頃には、
もうすでにゴジラの人形を
作っていたという天才‥‥」とまで(笑)。
- トットリ
- すっごいな。
- みうら
- 「ところで、トットリ君の顔写真が
『MOTHER』のおじさんに
差し替えてあるのは本人がシャイなため、
でも、『かなり似てる』とは、本人の弁」
って書いてあるけど?(笑)。
- トットリ
- 似ていないよねえ。
- みうら
- 言った覚えもないでしょ?
- トットリ
- そうだねえ。
- ──
- ずっと似ていると信じていました。
- みうら
- でも、これが、トットリ伝説の始まりかもね。
- トットリ
- そうだねえ。
- ──
- 今日はトットリさんにお目にかかれて、
実在していることがわかって、
みうらさんとお話をうかがえて感激でした。
たくさんのファンの方たちに、
お話を届けすることができてうれしいです。
ありがとうございました!
- みうら
- 最後に一言いいですか?
石井が書いてるように
“本人がシャイなため”
僕がこうして付き添いをしたんですよ(笑)。
(おわります)
糸井重里が、『MOTHERのかたち。』展に
寄せて書いた直筆メッセージ。

2025-07-29-TUE


