
みうらじゅんさんと糸井重里は、
40年以上のつきあいで、10歳違い。
なんだかんだでタイプのちがうふたりですが、
いろんな世界に飛び込んでは大きく口を開き、
何ごとも飲み込むようにつとめたことは、
共通項なのかもしれません。
いつもの思い出話からはじまり、
変わり目をともに振り返るおしゃべりは、
「ええかげんにしなさい!」
という漫才の最後の声がかかるまで、
終わることはありません。
みうらじゅん
1958年、京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。
以後、作家、ミュージシャンなど多方面で活躍。
1997年にはみうらさんの言葉「マイブーム」が
新語・流行語大賞のトップテンに選出。
「ゆるキャラ」の名づけ親でもある。
2018年、仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。
著書に『マイ仏教』、『「ない仕事」の作り方』
(2021年本屋大賞「超発掘本!」に選出)、
『アウト老のすすめ』、『ブツゾー・キッド』、
『老いるショック大賞』など
- みうら
- 今日、ほぼ日が28周年なんですよね。
(この対談は2026年6月6日に行われました)
「みうらさんは糸井事務所の先輩なので、
ぜひ創刊記念日に来てください」
と、ほぼ日の人に言われて、
今日来ることになったんですが、
言っときますけど僕は一度も
糸井さんの会社に勤めたことがないんですよ。
- 糸井
- それはないですね。
みうらはよくいましたけど、勤めてません。
- みうら
- 勤めさせてもらってないのに、
勤めていたと思わないでくださいよ(笑)。
- 糸井
- あの頃は、林真理子さんがいた時代ですね。
- みうら
- 林さん、いらっしゃいました。
- 糸井
- よくフライドチキンを食べてました、林さん。
- みうら
- 林さんも僕の友達の石井くんも
糸井さんの事務所に勤めていたけど、
ぼくは遊びに行ってただけです。
たしかにしょっちゅういましたけど。
- 糸井
- まあ邪魔でしたけど、我慢してましたよ。
- みうら
- いや、けっこうよろこんでおられましたよ、
僕が行くと(笑)。
- 糸井
- 好きだからね。
- みうら
- 好きだから。
で、今日の話は
「変わり目」の話ですよね。
- 糸井
- ああ、そうだったそうだった。
- みうら
- ていうか、さっき楽屋で糸井さんが
「テーマ、変わり目だからな!」と
念を押されたじゃないですか。
- 糸井
- あのー、みうらさんの
最初の変わり目は
なんだったんですか?
- 会場
- (笑)
- みうら
- あ、もう入るんですか。
いきなりですか。
- 糸井
- まず、生まれました。
生まれてから、そして?
- みうら
- あのー、基本的に、
司会者はこんなふうに
ふんぞり返るんですか?
- 会場
- (笑)
- みうら
- ふんぞり返る人を前に「変わり目」を、
ちょっと、言いにくいじゃないですか。
- 糸井
- いやぁ(笑)、
自分であとで映像チェックするとね、
「なんで俺はあんな楽にしてるんだ?」
といつも思うわけですよ。
- 会場
- (笑)
- みうら
- 糸井さん、僕としゃべるときは
すっごくリラックスなさいますよね。
- 糸井
- します。
- みうら
- もしかして僕以外にもやってるんですか?
- 糸井
- どうやら、やってるんですよ。
つまり「司会者の姿勢」を取ることって、
いわば、段取りですよね。
- みうら
- まぁ、そうですね。
- 糸井
- 僕はとにかく
「そういうものですよ」
ということをやるのが、
苦手なんですよ。
- みうら
- 段取りが苦手なのは、存じあげてます。
- 糸井
- だからつい、
「自分のまま」でいると、
こうなってしまうのです。
- みうら
- それ、逆に腰に悪いですよ。
- 糸井
- いや、腰には気をつけてます、
ですから心配しないでください。
変わり目はいつですか?
- 会場
- (笑)
- みうら
- なんで「変わり目」という
テーマにしたんですか。
- 糸井
- だって、なんかテーマをつけないとさ、
また若いときの高円寺時代の
しょうもない話を
ずーっとすることになるからさ。
- みうら
- ちょっと待ってくださいよ、
さっきの高円寺の話は、
どちらかといえば糸井さんが
振ってこられたんですよ。
- 会場
- (笑)
- 糸井
- いや、高円寺の話も、やればできますよ。
だけど、いまほら、
こういう会場にいらっしゃってる
みなさんにしても、
「いま何したらいいんですか!」
という声があるわけでしょう。
- みうら
- 「いま何したら」ですか?
- 糸井
- さんざめいてます。
- みうら
- 「いま何したらいいか」という場合、
「いま」がいったいいつを指すのか、
僕はわからないんですよ。
- 糸井
- あっ、これはいま
仏教の何かを、
みうらさんはおっしゃって‥‥
- みうら
- いえいえ、仏教は関係ありません。
ふつうに言葉の問題でして、
「いま」といっても意味は広いですよね。
「いま」の感じ方が人によって違うので。
- 糸井
- みうらさんのおっしゃる「いま」というのは、
いつごろからいつごろまでですか?
- みうら
- いや、そんなことを
考えてるわけなくて。
- 糸井
- 考えてないですね。
- みうら
- なんとなく流れで言ってるだけなんですよ。
- 会場
- (笑)
- 糸井
- 目の前に麩が来たら、
パッと前に出る鯉のような。
- みうら
- それです、鯉です。
「来たらとりあえず食らいつく」
ということは、昔からやってます。
もう、つねにやってますよ。
- 糸井
- その分、口はでかいですね、
鯉だから。
- みうら
- それはもう、ずっと大きく開けています。
開けてないと、
何も飛び込んでこないので。
- 糸井
- 水ごと、吸い込みますもんね?
- みうら
- そうとう水も飲んでますね。
口を閉じてるようじゃ何も来ないですよ、
あっちからは。
- 糸井
- 逆に、口閉じた鯉、見たいものですね。
- みうら
- 口閉じてすましてる奴には、
餌のやりがいもありませんから。
口を開けたほうに
ポイッと麩はやるもんでしょ。
- 糸井
- だいたい、口を閉じた鯉は
気取って見えますよね。
- みうら
- 「鯉の気取り」って
いちばんキツいですよ。
「あらい」だったらいいけど、
気取りはダメです。
- 会場
- (笑)
- みうら
- もともと鯉は、池のなかでも
ちょっと気取ってますし。
- 糸井
- ええ、色つけてるし、
模様を入れたりしてる。
入れ墨みたいなもんですもんね。
- みうら
- 知らず知らずのうちにね、入れて。
- 糸井
- 知らず‥‥♪
- みうら
- 知らずのうちに‥‥♪
ダウン・タウン・ブギウギ・バンドですね。
- 糸井
- 今日はミュージカルで
お届けしています。
(明日につづきます)
文中写真:池ノ谷侑花(ゆかい)
2026-09-13-SUN