Miknitsのオリジナル毛糸は、
良質な素材を使い、国内で丁寧に作られています。
その中で、
ブランドの代名詞とも言える糸「Miknitsアラン」と
ロングセラーの「カシミヤシルクウール」の紡績を担うのが
大阪府泉大津市にある
泉州羊毛工業株式会社(以下、泉州羊毛)さん。
Miknitsのカラーバリエーションも増え、
リピーターの方も増えてきたタイミングで
あらためてじっくりと、
毛糸のこと、羊のこと、あれこれお話を
5代目社長・今井康隆さんにうかがってきました。

聞き手は、Miknits担当のシブヤです。
チームには途中参加のため、
ようやく工場に伺うことができました。
日々毛糸に触れ、理解していたつもりでしたが
オリジナルの糸が生まれた経緯や、糸作りの工夫など
新鮮で心に響くお話ばかりでした。

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後編:1000年以上、生き残る糸。

 
「カシミヤシルクウール」「Miknitsアラン」
それぞれの開発秘話を聞いたところで
ひとつ気になることがでてきました。
ウールもシルクもカシミヤも、天然のもの。
年によって風合いが違うはずなのに、
いつも均一な品質になっているのはどうしてだろう?

 
今井さんに率直にお尋ねしてみると、
そこには地道な努力がありました。
「同じ品番の羊毛でも
仕入れる時期によって、かなり違いがあります。
でも僕はできる限り、同じクオリティのものを
買い付けるようにしていますね。
海外の輸出業者から、サンプルを事前に複数送ってもらい
いくつも試作をしてみる。
過去の糸と見比べて、納得いかない場合には、
追加で他のサンプルを送ってもらう‥‥。
良質なものが見つかるまで、その繰り返しです。
うちは工業製品用の糸も作っていますが、
特に、品質の均一さに厳しいんです。
そこでだいぶ、鍛えられました」

 
泉州羊毛さんと共にMiknitsの糸作りに取り組んでくださり
この日も取材に同席くださっていた、
株式会社アヴリルの井上さんも、口を添えます。
「わたしが今井さんから以前お聞きして
『なるほど』と思ったのは、
品質の安定には、ブレンドが大事ということです。
たとえば、1種類の原料で作られた糸だと
その原料の個性が変われば、
糸もまったく違うものになってしまいますよね。
息の長い商品にするためには
複数の種類の糸を混ぜて、補い合って、
品質を保つことが必要だと教わりました。」

 
同じクオリティの糸を届けることに
一番心血を注いでいる、と話す今井さん。
原料選びの大事さをあらためて感じるお話でした。
さいごに、東西さまざまな羊毛を見てきた今井さんに、
ウールの魅力をお聞きしました。
「まずは機能性ですね。
湿気や汗は吸うけれど、
外からの水気は弾いて、中に染みてこない。
そして燃えづらく、汚れにも強いです。

 
「合成繊維などに比べて価格が高いのですが、
それは羊を育てるところから
編む人、着る人の手に渡るまで
たくさんの加工が必要なので、やむをえないんです」

▲この日見せていただいた、毛糸の紡績の様子。
部屋全体を使って原料をまぜ、すいて、
糸状に細くして、それを撚って‥‥。
これでもまだ過程の一部です。
このあとさらに、染色、巻き分けなど
6〜7社で加工されて、
やっと毛糸ができあがります。
(協力:吉野毛糸紡績株式会社)

 
「ウールはとても長持ちします。
たとえば正倉院には
1000年以上前の、羊毛の絨毯が残っています。
それくらい壊れにくい繊維です。
うちの糸も、1000年とは言わないけれど
長くお使いいただけたらうれしいですね」
良質な素材、とは常々思っていましたが、
まさか1000年以上も持つなんて‥‥。
ウールが永く愛されてきた理由と
その歴史に思いを馳せつつ、
泉州羊毛さんをあとにしました。
今井さん、たくさんのお話をありがとうございました。
そしてこれからも、良質な糸のお届けを
よろしくお願いいたします!

(おしまい)

Photo:川村恵理

2023-01-12-THU

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