次第に日差しがあたたかくなってきました。
きれいで、やさしくて、おいしいものが
大好きなわたしたち。
親鳥であるニットデザイナー・三國万里子さんの審美眼に、
ときめきに花を咲かせる4人が水鳥のようにつどい、
出会ったもの、心ゆれたものを、
毎週水曜日にお届けします。
「編みものをする人が集える編み会のような場所を」と、
はじまったmizudori通信は、
ニットを編む季節の節目とともに一旦おやすみします。
ニット風景も一挙ご紹介です!

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♯014

2021-02-10

 
「編みものけものみち 三國万里子展」の
巡回展が渋谷パルコで始まりました。
ワークショップなどのイベントもしたいところですが、
諸般の事情を考慮して今回はしません。
それでも渋谷はうちから通える距離にありますし、
来てくれた方と同じ場所に居合わせたいので、
「巣穴」と名付けた小さな仕事場を
会場の奥に作ってもらいました。
今、この原稿もその巣穴の中で書いているのですが、
仕切りの窓を通して会場の様子がよく見えます。
会場の方からもわたしが見えていて、
お客さんが通りがかりにニコニコと手を振ってくださいます。
ちょっと自分が動物園のパンダになったようで楽しい。
というわけで2月28日までの会期中、他に用事がない日は
11時過ぎに「巣穴」に入って仕事を始め、
お昼になったら持参したおにぎりを食べて、16時くらいに帰る、
というのを日課にしようと思っています。
時々会場を回って来場者の方とおしゃべりをしたり、
素敵なニットをお召しの方の写真を
撮らせていただいたりもしているので、
ご来場のタイミングが合えば、
わたしとちょっと交流していただけると、うれしいです。
編みものの仕事を始めてから今まで
様々な展示会、展覧会をしてきましたが、
それらのルーツは幼い頃、
保育園で年に一度開かれた「バザー」です。
どんなバザーかというと、
子ども1人に紙の50円だまを二つ支給されて、
お母さんたちが作ったセロファンのお花やら、
これまたお母さんたちが作った
ドーナツとオレンジジュースのセットを買うという、
大変手作りな催しでした。
それがなぜだか、ずっと忘れられないのです。
セロファンの花の色形も、いたずらに舐めてみたときの
奇妙な味まで思い出せますし、
ドーナツの卵色の生地にじゅーっとしみた油の風味も、
オレンジジュースが、ドーナツの甘さに負けて
すごく酸っぱかったなんてことも、何度でも蘇ってきます。
おもちゃもお菓子も不自由なく与えられていた中で、
バザーで買った素朴なものたちが群を抜いて、
記憶に残っているのはなぜだろうと、
ずっと不思議に思っていました。
バザーが忘れられなかったのは、
一歳違いの妹(なかしましほ)も同じだったようで、
のちにその思い出をもとに、二人で「長津姉妹店」という
お菓子と手編みの展示販売イベントを開くようになりました。
それは数年続き、結果的にそれぞれの今の仕事に繋がっています。
自分たちでイベントを開くようになって知ったのは、
お客さんがよろこんでくれると、本当にうれしくて、
もっとよろこばせたくなるということです。
とはいえ、お客さんの反応だけをあてにすると方向を見失うし、
結果あまりおもしろいものは作れない。
じゃあ自分だからこそできるいいものって何だろう、と
地道に模索しているうちに、
作ることの楽しさが加速していったように思います。

 
自分のものづくりの経験と
無理にすり合わせることもないけれど、
保育園のバザーが特別な思い出として残っている理由は、
今ならなんとなくわかる気がするんです。
それはきっと準備してくれた大人たちが、
子どもたちのよろこぶ姿をみたくて、
色々手作りで工夫してくれていたからじゃないかしら。
本当のところはわからないですけどね。

昨年買ってよかったもの。

 
昨年購入した服で、ダントツにお気に入りの服を
ご紹介させてください。
80年代につくられた、Susan Freisという
アメリカのブランドのワンピース。
いま、ヴィンテージ好きにも人気が高いそうで、
「Susan Freis」、
または姉妹ブランドの「Diane Freis」で検索すると
惜しみなく柄と色彩を使った、
はっちゃけ気分のお洋服が
たくさん見られると思います。
わたしが持っているのは、比較的地味なものですが
それでも使われている生地はすべて、具象的な柄もの。
スカートは薔薇の模様が描かれている上に
生地の織りで、さりげなく水玉が表現されています。
そしてパイピングやウエストには、はためいているのは
黄金に輝く三角形の旗。
こんな大胆な構成、わたしには思いつけないし
ひらめいたとしても、なかなか勇気が出ない。
現代もののお洋服も、
今ならではのテクノロジーやデザインが楽しいのですが、
こうして、時間や土地をひょいっと飛び越えた
先人のセンスや思考に触れられるのが
ヴィンテージの魅力のひとつだと思います。
そんなことをつらつら思うと、
なんだかノスタルジックさを感じて
胸がきゅーんとなってしまいます。
このワンピースをクローゼットから出すたび
やっぱりわたしは古着が好きだなあ、と思うのです。

近藤作品を読み耽る

 
小学生や中学生の頃みたいに
嵐のようにぐわーーっと次から次に一気に
マンガを読む、ということがなくなってしまいました。
マンガ以外の娯楽が増えたとか、
なかなか時間の捻出が思うようにいかないとか
いくらでも理由を述べられそうですが、
そんな今日でも、近藤聡乃さんの
新刊の『A子さんの恋人』を手にとるとき、
わくわく、胸が踊る気持ちになります。
近藤作品の登場人物は生きてる感じがするというか、
登場人物としてマンガに出演していない時間をも
どんな顔で過ごしているのか
彷彿とするようなムードがあり、
どの人も普通にいそうなんだけど、
大げさにいうと少し狂気をはらんでいる。
でもそれって普段わたしたちが生きている
世界がそうなんだよね、と思うのです。
これまでのマンガが非日常と物語を楽しむ
エンターテインメントならば
近藤作品は自分のもう一つの日常の延長を
覗き込むようなひそかな楽しみなのです。
おしゃれで軽妙な魅力がある装丁も
描かれる女の子の体型がしっかりとしているのに
足首がすすーっと細くなっているシルエットなのも
わたしは好きです。
『A子さんの恋人』、終わっちゃってさみしいな。

こんにちは。
『ミクニッツ 小物編』から
アランのポンポン帽子を編みました。
針を一号細くして編んだこのニット
6歳の娘には、少し大きく、
かぶっていると白雪姫の小人のようで可愛いです。
昔に編んだmiknitsのキットのアランのカーディガンをほどいて
今度は娘の帽子に、娘は、ママこれ温かいと喜んでくれました。
これからどんどん大きくなる娘、すぐにぴったりになるかなと
楽しみでもあり寂しくもありなニット帽です。

 

わたしも小さなころは母に
洋服をよく作ってもらっていました。
その洋服が大好きで、
写真にはだいたいその洋服で写っていたこと。
幼い頃の記憶は今でもずっと残っています。
今は、わたしの息子が受け継いで着ることも。
アラン帽がどんな旅路を行くのか楽しみですね。

 

白雪姫の小人ガール、かわいいでしょうねえ…。
この帽子はいろんなレベルの
ニッターが編んでおもしろいように、
縄編みの方向やすべり目などあれこれアイディアを
盛り込んだ記憶があります
お嬢さんが大きくなったら、
また違うのを編んであげるのもいいですね。



「編み会をほぼ日の中で」とはじまった“わたしのニット風景”。
みなさんがたくさん送ってくださったことで、
編みものの進み具合やできばえをたのしみ合う、
交流の場になれていたらうれしく思います。
mizudori通信の最終回は豪華バージョンでお届け!
いただいたニット風景を、たくさんご紹介させてください。
完成した作品、今年の編みもののお供、

質問や編みものをして気づいたことなど
写真とひと言添えてお送りください。
締め切りは2月27日(木)です。

送り先→postman@1101.com 件名→わたしのニット風景

渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」にて開催中の
「編みものけものみち 三國万里子展」は、2月いっぱいまで。
詳細はイベントページをチェックしてください!

2021-02-10-WED

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