次第に日差しがあたたかくなってきました。
きれいで、やさしくて、おいしいものが
大好きなわたしたち。
親鳥であるニットデザイナー・三國万里子さんの審美眼に、
ときめきに花を咲かせる4人が水鳥のようにつどい、
出会ったもの、心ゆれたものを、
毎週水曜日にお届けします。
「編みものをする人が集える編み会のような場所を」と、
はじまったmizudori通信は、
ニットを編む季節の節目とともに一旦おやすみします。
ニット風景も一挙ご紹介です!

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♯008

2020-12-16

この数日、憂鬱だったんです。
「暮れは帰省しないね」と実家に連絡をしたんですが、
電話を切った後で「あ、今年はわたしが正月料理を作るのか」
と気がついて、それからずっと。
料理が嫌いなわけではないんです。
むしろ好きです。
野菜や魚を触るのも、
いくつかの料理を並行して進める段取りを考えるのも、
湯気の匂いや鍋釜の音も、全部好き。
体を動かしているうちに頭に酸素が回る感じもいいし、
編みものに比べてあっという間に
たくさんでき上がるのもせいせいする。
ただ、今まで年末はいつも新潟に帰り、
母の年越し料理をありがたくいただいていたのに、
東京で正月の料理を作るなんて、どうすりゃいいの、
と軽く途方に暮れてしまったんです。
わたしの実家は新潟です。
大晦日の食卓のために母が準備をするのはまず、
「のっぺい汁」という、根菜と鶏肉の入った郷土料理。
大きな鍋で煮て4、5日食べ続けます。
あとは大きなカニを茹で、ブリやヒラメの刺身を切り、
銀杏を焼いて串に刺し、葛粉で胡麻豆腐を作り、
豚の角煮をし、数の子をダシ醤油に浸け、
戻した青大豆で松前漬け風の酢の物を作り、
ごまめをナッツと一緒に煎って
甘じょっぱく味付けし(これが実家の田作り)、
黒豆を煮て、あんこを煮て、買ってきたかまぼこを切り、
伊達巻きも切り…という、
「おせち」風ではありながら
母独自のひらめきを込めた大皿料理です。
おいしいですし、わたしも手伝うことが多かったから、
やり方は知っています。
でもねえ……。
それを東京の我々3人家族のために
同じように作ることを想像すると、
どうも気が進まないのです。
品数が多いとか、食べきれない、ということもあるけれど、
それよりはむしろ気分の問題です。
なんというか、寂しくなる気がするんです。
東京で実家のお正月をそのままコピーするのは
どうにもフェイクっぽいし、物足りなさを感じそう。
廊下に出るだけで思わず小走りになっちゃうような寒さや、
ピンクのセーターの上からエプロンをつけた母に、
青いジャージの上下にフリースのベストを着込んだ父と
実家の年越し料理は、セットであってほしい。
わたしがそんな風にうろうろ思いあぐねながら
「年越しに、なにつくろっか…」とぼやくと、夫は
「別に特別なものなんて作らなくていいよ、
いつもの夕飯で構わない」と言ってくれました。
いい人です。
でも、わたしはその申し出も受け入れたくないのです。
だって、つまらないじゃない、
大晦日にわかめ汁と豚の生姜焼きと
小松菜とお揚げのおひたしと納豆とごはんなんて。
元旦に豚汁とししゃもの焼いたのと
ほうれん草の胡麻和えとごはんなんて。
そういう当たり前のおかず用意するの、すごく好きだけど、
年末はもっと違うことがしたいの。
……ああ。
ここまできてようやく「したい」ことがわかりました。
せっかく東京で年越しなんだから、
わたしはやったことのない正月料理が作りたいのだ。
そういうわけで昨日、隣町の大きな本屋に
正月料理の本を買いに行きました。
時節柄ちゃんとそういうコーナーができていて、
あれこれ見比べて、これが良さそうと買ったのが
有元葉子さんの『有元家のおせち作り』と、
鈴木登紀子さんの『ばぁばのおせち』の二冊。
どちらも料理の写真がきりっと美しくて
作りたい気持ちをそそるし、
著者の言葉に強い説得力がある、というのが選んだ理由です。
おせちという同じテーマについて書かれているので
品目はある程度共通しているのですが、
お二人とも確信を持ってまったく違うことを言っていて、
読み比べながらぐっとくる。
わたしは自分の技量と使える材料を考慮して、
昆布巻きはこっちの本、のし鶏はもう一冊、
と選びながらトライすることに決めました。
(作りたい料理のページに付箋をつけていったら
いつの間にか17枚も貼っていました。
わたしが普段作るおかずの「いり鶏」も、
油抜きをするとすきっとした味に仕上がるそうで、試してみたい。
「ゆず羹」というデザートは初めて知ったけれど、
寒天を溶かしたり、ゆずの皮を削ったりする作業がしてみたい)
二冊を通してわかったのは、おせち料理というのは
まずは良い材料を買い揃えるのが
作る前の楽しいイベントであるということ。
わたしは早速「干し数の子」なるものを
インターネットで購入しました。
皆さんご存知でしたか、干し数の子って。
有元さんの本に載っているのですが、
「カンカン音がするぐらいに干しあげた数の子」で、
歯ごたえのある味わいが
塩漬けのものとは全く別物なんですって。
昔はポピュラーだったけれど、現代では
あまりたくさん作られておらず、なかなかお値段がする、
でもすごくおいしい、と。
たしかに普段なら食品にこの金額は出さない
というくらい高価でしたが、お正月だし、
数の子はわたしの好物だし、まあいいか、ということにしました。
そういえば去年の正月、
「数の子が好物なんて、昭和より前の人間って証拠だよ」
と母と笑い合いましたっけ。
新しい料理を覚えたら、来年母にレシピを
おすそ分けすることもできるんじゃない?
できるよ。
できるし、それは、なんかすごくうれしい。
あんなに憂鬱だったのが嘘みたい、
年越しが俄然楽しみになってきました。

駆け込み「co-」さん

 
わたしには長年着ているウールのアウターがありまして、
着る回数は多かったり、少なかったり
その年の気分によるのですが、
今年は例年に比べ活躍しています。
そんなよき相棒のボタンを先日なくしてしまいました。
ボタンをとめていた糸だけがびろーんととびだしていて、
とても悲しい気持ちだったのですが、
ハッとすぐに小坂さんの顔が浮かびました。
小坂さんは東京・東神田にあるヴィンテージボタン専門店「CO-」の
店主で、Miknitsでもとてもお世話になっている方です。
幸運にもちょうど「CO-」さんのお店の近くにいたので、
迷わず駆け込みました。
事情を知った小坂さんは「ボタンを一新しましょう!」
と一緒に合うボタンをご提案してくれたのです。
そこからはするするとボタンも決まり、
早速ボタンをつけてバージョンアップしました。
あたらしいボタンはゴールドの土台に四角いチョコレートが
うめこまれたようなデザインです。
程よく主張していて、また特別な1着になりました。
普段のカジュアルな格好にも、お気に入りのワンピースにも
合いそうなので引き続き活躍してもらう予定です。

果物のお菓子が好き。

 
先日、岡山県のおいしい大福を
友人たちと共同でお取り寄せしました。
お目当ては、柑橘がもりもり入った
フルーツ大福だったのですが
生ものをつかっている宿命で、
賞味期限がとても短い。
そこで、果物を使っていない
「豆大福」もいくつか買って
冷凍保存しながら楽しむことにしました。
お気に入りの食べ方は、杏の蜜漬けや
サンザシのドライフルーツなど、
すこし酸味のある果物と一緒に
豆大福をかじることです。
フルーツ大福ではないけれど、
足りないものは自分でおぎなう作戦。
あと、あんみつやみつ豆も好物で
ときどきスーパーで
寒天、豆、黒蜜だけがセットされた
シンプルなものを購入するのですが
そのときも、杏やいちごを乗せて
フルーツあんみつ/みつ豆にしています。
素朴なお菓子も、
一気に豪華になるのでおすすめです。

Miknits TO GOを買い、初めて編み物をしました。
可愛いので完成が待ち遠しかったです。
手袋が苦手なのですが、これなら使っていけそうです。
水曜日の更新、とても楽しみにしてます。
三國さんの展覧会も行きたいなと思っています。
急に寒くなりましたが、皆さんご自愛ください。
(夕やぎ)

 

完成おめでとうございます!
わたしもMiknits TO GOのアランニット帽子を
編んでいるのですがまだまだのよう‥‥
ぜひ、身につけて展示にいらしてください。

 

手袋、すごくすてきに仕上がりましたね!
あったかいココアを包む手袋の手を想像しました。
展覧会も楽しんでいただけますように。

 

“わたしのニット風景”を、募集します。
大人数があつまる編み会がかなわない今年ではありますが、
ほぼ日の中で編みものの進み具合やできばえを
みんなでたのしみあえたら、と思います。
完成した作品のコーディネート、お供のお菓子やお茶など
写真とひとこと添えて送付ください。

送り先→postman@1101.com 件名→わたしのニット風景

福岡県の三菱アルティアムで開催される「編みものけもの道 三國万里子展」。ついに今週の19日(土)からはじまります。ほぼ日でもコンテンツを鋭意製作中です!

2020-12-16-WED

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