
フードスタイリストの飯島奈美さんがプロデュース、
デザイナーの児玉洋樹さんといっしょにつくった
ジップエプロン、ジレエプロン、シャツエプロン。
使いやすさとかっこよさ、かわいらしさで
たいへん好評をいただいています。
肩に重さがかかりにくいので長時間着ていてラク、
ポケットやループなど実用的なアイデアがいっぱい、
着たまま外出できるエプロンらしからぬファッション性で、
家庭での用途はもちろんのこと、
料理や家事関係の仕事をしているかたなど、
プロのかたがたも仕事着として着ているんです。
このコンテンツでは、そんなプロのみなさんに、
着心地、使い心地をおたずねしました。
登場するのは飯島奈美さんの事務所
「7days kitchen」のみなさん、
東京・池袋のハンバーガーショップの長谷川シェフ、
プロの片づけ集団である
「TEAMたけまな」のみなさんです。
「7days kitchen」(セブンデイズキッチン)には、
飯島奈美さんがひきいる
4人のフードスタイリストが在籍しています。
入った当初はアシスタントだった
板井うみさん、岡本柚紀さん、
吉川由以さん、日高ゆうさんの4人は、
経験を積み、いまやそれぞれ
フードスタイリングのプロとして活躍。
ひとりで現場に行くこともあれば、
大掛かりな撮影のときはチームで出かけることもあります。
そんなとき、なくてはならないのがエプロン。
ジップエプロンと、ジレエプロン、
どちらも飯島奈美さんのプロデュースなのですけれど、
デザイナーの児玉洋樹さんとつくりあげていく過程では、
チームのみなさんの意見もたくさん取り入れています。
それだけに、愛着もひとしお。
それぞれに「好きなエプロン」があるそうです。
このエプロンができる前は、
デニム素材のワークウェアタイプのエプロンを愛用していた
岡本柚紀さんは、いま、ジレ派。
ジップも使うそうですが、
仕事に出かける前、
つい手にとってしまうのがジレなのだそう。
「肩が凝るのは現場で仕事に影響しますから、
ぜったいにNGなんです。
ジップエプロンもジレエプロンも、
そこがとても考えられていて着ていてラクなんですが、
より肩のストラップの幅が広いジレエプロンを
自然と、選んでいるのかも?」
ウエストを、ストラップでキュッと
締めることができるのも、
ジレエプロンのお気に入りポイント。
「フードスタイリングの現場では、
しゃがんだり、かがんだりする動作も多いんです。
そんな時、ウェストが固定されていると、
動きやすいんですよ」
仕事柄、ポケットにキッチンばさみや
トングなどを入れて動くこともあり、
そんな道具たちがウェストのストラップで
きちんと留まり、ポケットの中で暴れないのも
ストラップがあるゆえ、なんですって。
飯島さんもその意見に賛同。
「そうそう、私たち、調理道具やペン、台本など、
すごくたくさんポケットに入れるものね!」と言います。
「ほんと、撮影に行く時、エプロンを忘れたら、
スマホを忘れたくらい困っちゃいます。
言い換えると、このエプロンさえあれば、
さあ仕事だ! っていうスイッチが入るんです」
板井うみさんは、この日、シャツエプロンを着用。
「はじめにエプロンができてから、
ずっとジレ派だったんですが、
このシャツエプロンが完成してから、
こればかり着ているんです」
その理由は? とたずねると、
「着た時の心地よさ」だと板井さん。
ジップ、ジレ、シャツの3つの型を比べると、
シャツの肩はストラップではなく、
ヨーク全体で支えるので、
いちばん身体になじむつくりになっています。
「板井さんもポッケにものをたくさん入れるので、
重さが分散されるという意味で、
ラクなんじゃないかな」と飯島さん。
フードスタイリングの仕事は、時間がまちまちで、
ときにはかなり長い時間現場にいて
料理をすることもあるのだそう。
そんな環境では「重く感じるかどうか」は
快適に仕事をする上で、とても重要なんです。
「シャツエプロンは、
下に着ているものが隠れるのもいいんです」
たしかにシャツエプロンは、出るのは袖と、
裾からのぞくパンツやスカートのみ。
ジップ、ジレは、下に着る洋服との組み合わせで
コーディネートが楽しめるエプロンですが、
逆に言うと、シャツエプロンなら、
あんまりそのことを考えなくて良いのですね。
「スタジオではなく、屋外のロケの日など、
今日の現場はたいへんだぞ、
汗をかいちゃうかも、という日は、
Tシャツやジャージで、っていうこともあるんです。
そんな日、シャツエプロンを着ていると、
それだけで『きちんと感』が出ます」
同じ料理関係の仕事でも、
現場にケータリングのかたがいらっしゃることも。
そんな時も、このエプロンを着ていれば、
スタッフのみなさんが『料理の人だ』と
すぐにわかってくださるのだそうです。
「ところが、最近、ある現場で
助監督さんがジレエプロンを着てらして!
ポケットが便利だとおっしゃるんです。
たしかに助監督さんもこまごまとした持ち物が多いので、
このポケットの多さは助かりますよね。
そうしたらそれを見たある女優さんが
『いいな、わたしもほしい』っておっしゃって」
現場でそんなふうに拡がっているんですか!
エプロンの制作側からすると
このうえなく嬉しいお話でした。
吉川由以さんも、この日はシャツエプロン。
「ふだんはジップも、ジレも着るんですよ。
いわば、まんべんなく着る派、です。
ただしジレとシャツは、
ウェストのストラップを外して、締めずに。
私の作業のクセなのか、ストラップを締めていると、
端っこを水につけてしまうことが多くて」
なるほど。
シャツについては、
児玉さんが、ストラップを外してもきれいに見える
デザインをしているので、
なくてもおかしくありません。
そしてジレのほうは外さずとも、端をポケットに格納して
締めずに着ることができますよね。
吉川さんは「その日のエプロン」を決めるとき、
色についても考えるそう。
「色の濃い調味料や食材を使う撮影のときは、
跳ねたときにシミになっても目立たないように、
黒やカーキを持っていこうかな、みたいな感じで選びます。
白だと漂白ができるので、安心ではあるんですが」
シャツエプロンは「初めての現場」に行くときに
選ぶことが多いそう。
ん? 初めての現場?
「ちょっと戦闘服的な感覚かもしれません。
仕事しますよ! っていう印象が、
この衿で、出る気がするんです」
なるほど、ちょっとかしこまった場所には、
Tシャツではなくポロシャツやワイシャツなど
衿つきの服を着て行く感覚ですね。
「これから食材の買い出しに行ってきます」
と、アトリエから出かける吉川さん、
エプロンを着たままのすがたです。
「洋服感覚で着られるので、
着たまま出かけちゃうんです」
「私は、ジップエプロンを着ることが多いんです」
と日高ゆうさん。
理由は、着脱のラクさ。
そうなんです、ジップエプロンは
「ミリタリーオーバーオール」という
フロントのファスナーで脱ぎ着ができるウェアから
着想を得たかたち。
下からも開けられるダブルジップですし、
ストラップも、調整しやすくワンタッチで外せる
大型バックルを採用していますから、
まさしく「着脱がラク」なんですよね。
「そしてこのへん(デコルテ)がスッキリしているのと、
肩も広く開くのが、ファッションとして、好みなんです」
さらに、ワークウェア的なデザインゆえ、
洗って干しっ放しで、アイロンをかけずに着ても
3つのなかではいちばん大丈夫、
というところもお気に入りだそうです。
でも作業着としてのエプロンなら、
3つの型、どれも、アイロンなしでOKですよ。
洋服として着るときは、
ばしっとアイロンをかけると、かっこいいですけれど!
ちなみに飯島さんは
「洗濯したらハンガーにかけて、
10回ぐらい振って、裾だけちょっと広げて干します。
シャツエプロンの場合は衿を立てて、
ボタンを留めておけば、
乾いたときにシワはほとんど気にならないですよ」
とのことでした。
さて最後に、こんな写真をご紹介。
飯島さんが自ら描いた「ペインティングエプロン」と
「韓国みやげのアップリケをつけたエプロン」です。
わぁ、これは楽しい!
「毎日、調理の仕事で使っているので、
シミやよごれがつくことがあります。
もちろんすぐにお洗濯をして、
日々きれいに使っているんですが、
どうしてもとれない、気になるシミができることも。
その対策として、これをつくってみたら、
『いいじゃない?!』って思いました。
みなさんも、もし汚れが気になることがあったら、
こんなふうにアレンジするのもおすすめですよ」
と、飯島さん。
たしかに洋服だとちょっと躊躇するこんなアレンジも、
作業着で遊ぶ、と考えるとできちゃいそうですね。
(つづきます)
2025-08-26-TUE
この日のみなさんは、
じっさいに撮影現場に持って行くための
料理の下ごしらえをしている最中でした。
その様子の、きびきびしていることといったら!
リーダーである飯島奈美さんを中心にしながらも、
各々が考えて動き、
どんどん料理ができあがっていく様子は、
まるで何かの試合を見ているようで、
めちゃくちゃかっこよかったです。
そんな現場で、
このエプロンをリアルに使ってくださっているのを
直に見られたのは、
今回の取材で一番の収穫でした。
というのも、デザイナーの仕事って、
デザインして製品が完成したタイミングには
既に次のデザインに取り掛かっていることが多いので、
実は作り出した商品の使われている姿と
その後までを見られる事は案外少ないんです。
しかしながら、飯島さんのリクエストに応え、
自分なりの『用の美』を意識してデザインしたエプロンが、
自分の想像以上に、様々な使い方に寄り添って、
エイジングを重ね、成長した姿を見られたのは
素直に嬉しい気持ちと共に、
若干の改善点や、次に作るならこんなデザインかな?
‥‥といった具合に、
想像力まで掻き立てられる、そんな取材でした。