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#35 深窓のあの子

この漫画のもとになった投稿

農村に住んでいたころ、
タロウと名付けて犬を飼っていた。
ある日、いつもの土手を散歩していたら、
川向こうを、
ご近所の名家の奥さまが
上品なトイプードルを連れて
優雅にお散歩なさっていた。
飼い主どうしで軽く会釈していると、
タロウが「オオーーォン、バウバウ!!」と、
近所の雄犬を威嚇するのとは違う感じで
激しく吠え始めた。
あぁ、トイプーちゃんは女の子か。
タロウ、おまえ一目惚れか、
と察したわたしは
彼女を「キャロラインちゃん」と勝手に命名し、
会うたびにくるおしい感じで吠えるタロウに
「キャロラインちゃんは
深窓の令嬢だから思いは届かないよ」
とつぶやきかけていた。
そんなある日、名家の奥さまにバッタリ会った。

「おたくのわんちゃんお元気よね〜」
と明るく挨拶されたので
「うるさくてすみません。
おたくのわんちゃん、かわいいですよね。
女の子ですよね」
と言うと
「あらー、もう15才のおじいちゃんなのよー。
秋に生まれたから
豊作(はうさく)っていうのー」と。
え!?
おじいちゃんだったのか‥‥。
タロウはふつうに
戦闘モードで吠えていたのか‥‥。
わたしはひとり
ラブラブモードに浸っていたのか。
やはり恋愛にうといな、わたし。
(タロウは数年前19才の天寿を全うしました)

(匿名さん/いつかの「今日のいぬ・ねこ」より

2025-02-04-TUE

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    「今日の小ネタ劇場」とは

    2005年から連載を開始した読者投稿コンテンツです。2022年時点ですでに17年以上、「今日のコドモ」「今日のダンナ」「今日のじーばー」「今日の気になるあいつ」….などの20以上のカテゴリから、日替わりで毎日欠かさず3ネタを更新してきました。アーカイブを残していないため、その日のネタは、その日にしか読めません。2016年には、過去の傑作から選りすぐって書籍化もされました。ほぼ日に来たら、まずはここからという読者も多い、大人気のコーナーです。今日の「今日のコドモ」は、こちらからどうぞ。

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    今日マチ子

    漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に4度選出。戦争を描いた『cocoon』は「マームとジプシー」によって舞台化。2014年に手塚治虫文化賞新生賞、2015年に日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞受賞。コロナ禍の日常を絵日記のように描いた近著『Distance わたしの#stayhome日記』が、2022年1月『報道ステーション』にて特集された。

  • 漫画:今日マチ子

    編集:奥野武範(ほぼ日)

    デザイン:杉本奈穂(ほぼ日)

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