
災害が起こったとき、
私たちはどんな選択を迫られるのでしょうか。
ほぼ日乗組員9人で、
防災研究者の廣井悠先生等が開発した
「KUG(帰宅困難者支援施設運営ゲーム)」に取り組み、
災害時の行動を具体的に想像してみました。
帰宅困難者による混乱を生まないため、できるだけ
社内に人を滞留させることを第一に考えましたが、
いざ引き留めようとするとさまざまな難しさが明らかに。
強制力のある結論を出すものではないので、
ひとつの例として、乗組員たちの決断を
追っていただけたらうれしいです。
それでは、ゲームスタート!

大都市防災研究者、廣井悠先生と
SOMPOリスクマネジメント㈱が共同開発した、
帰宅困難者を受け入れ・滞留させる施設のための
図上訓練キットです。
架空の事業所のBCP要員(緊急事態発生時に、
事業継続を担うために指定された職員)として、
起こったトラブルへの対応を決めていきます。
今回は「都市で日中に地震が起こった」
という設定で取り組みました。
また、ファシリテーターとして、廣井悠先生と
SOMPOリスクマネジメントの宮田桜子さんに
進行いただきました。
- ゲーム内で、発災当日の夜が明けました。
二日目の朝からスタートです。
イベント⑨〈発災翌日08:00〉
朝になりました。
きょうはきのうに比べて気温がだいぶ上がり、
暑くなりそうです。
社会インフラの復旧の目処は依然立っていません。
ビルの管理会社から
下層階で下水管が詰まっているとの連絡が
入ってきました。
営業部営業1課の村上さん(社員番号145)から、
持病の薬が切れたがどうすればよいかとの
相談がありました。
必要な対応を検討してください。

- あやや
- 村上さんのように持病がある人には、
「1週間ぶんくらいの薬を
社内に常備しておいてください」と
事前に言っておくべきだったね。
- やまと
- そうですね。
今回は、医療機関を伝えましょうか。
- のなか
- 会社から行きやすい病院をピックアップして
伝えるとか。
- かのう
- 下水管の詰まりは、どうしましょう。
- あやや
- 災害用の簡易トイレって、
社内にいくつあるんでしたっけ。 
- かのう
- ええと、1600個あります。
- あやや
- つまり、200人の社員が
3日間会社に留まる場合、
ひとりがトイレを使える回数は
1日あたり約2回か‥‥
うーん、もつか不安だね。
なるべく水分をとらないほうがいいのかな?
ということは、五目ごはんとか、
しょっぱいものは食べないほうがいい?
- やまと
- 五目ごはん、最初に配っちゃいましたよ。
- かのう
- 気温が上がっているので、
水分をとらないのは危ないかも。
- やまと
- とにかく、まずは
「ふだんどおりにトイレを使わないでください」と
アナウンスして、
災害用簡易トイレを各個室に設置しないと。
下水管が詰まった状態で、
誰かひとりでもトイレを使ってしまったら、
取り返しがつかなくなります。
- あやや
- ということは、避難訓練のときに、
災害用トイレの使い方も
みんなでマスターしておいたほうがいいね。
- 方針
- 村上さんに医療機関を伝える。
トイレは、災害用トイレを使うよう
徹底して呼びかける。
- ゆーないと
- なんとー!
- しもー
- やばいやばい。
- ゆーないと
- 村上ちゃん‥‥!
これは、病院に行くしかないね。
- やすな
- 村上さんは自宅が遠いから、
会社の近くで受け付けている病院を探す感じかな。
- ゆーないと
- 日頃から、持病の薬は
数日ぶん持ち歩いたほうが安心だ。
薬を飲まないとどんな症状が出るかも
事前確認しておきたいね。
- しもー
- インスリンの注射を
会社に置いておくという手もあるかも。
- やすな
- それから、もうひとつの問題が下水管か。
やっておけばよかったこととしては、
みんなに「ふだんどおりトイレを使わないで、
災害用トイレを使ってね」という呼びかけですね。
- ゆーないと
- みんながバラバラのフロアにいる場合、
全館アナウンスで呼びかけないと、
なかなか全員に意識してもらうのは難しそう。
- さくま
- 一度点呼を取って、
そのタイミングで呼びかけておけばよかったなぁ。 
- やすな
- そうだね。
遅くとも、いまからは
災害用の携帯トイレだけを使ってもらおう。
- ゆーないと
- 災害用トイレで出たごみはどこに溜めておこう?
- やすな
- とりあえず、トイレのそれぞれの個室かな。
消臭の袋も一緒に置いておけば、
臭いの問題は深刻にはならないと思う。
- ゆーないと
- 個室がいっぱいになってしまったら、
ごみ袋にまとめて、
会社の駐車場の隅に置いておくことになるかな。
- 方針
- 村上さんは病院へ。
トイレは、災害用トイレを使うよう
徹底して呼びかける。
イベント⑩〈発災翌日09:00〉
自治体の発信情報によると、最寄りの総合病院では、
発熱外来を含め、
患者の受け入れを始めているそうです。
必要な対応を検討してください。
- あやや
- 後藤さんは病院に連れて行きたいね。
- やまと
- 後藤さん、ひとりで行けるでしょうか。
- あやや
- 付き添いの人がいたほうがいいと思う。
会社にマスクがあれば、マスクをつけて。
あと、骨折している松岡さんはどうする?
- かとう
- 病院に行かせてあげたいですね。
- 結論
- 後藤さん、松岡さんを病院に連れて行く
(付き添いをつける)?
- やすな
- 隔離部屋にいる後藤さんは、病院に行ってもらおう。
- さくま
- それから、骨折の松岡さんも。
- ゆーないと
- さっき糖尿病の薬が切れてしまった
村上さんを入れて、3人が病院に行くことになるね。
この場合、何人くらい付き添うべきなんだろう。
- やすな
- 後藤さんは感染症の可能性があるから、
付き添いにもリスクがありますね。
- さくま
- となると、付き添いはなるべく少なく、
できればひとりがいいんじゃないかな。
- やすな
- 3人の患者に対して、付き添いひとりは、
なかなか大変だね。
- ゆーないと
- ナイチンゲールをひとり見つけないと。
- やすな
- ナイチンゲールだと、
看護までしないといけないですよ。 
- しもー
- 看護までできる人は、
この会社にはいませんね。
- ゆーないと
- そっか、付き添うだけでいいのか(笑)。
- やすな
- でも、少しでも病気や怪我の知識がある人が
付き添ってくれたら安心ですね。
それか、人事総務課の人か、家が近い人か‥‥。
- 方針
- 発熱している後藤さん、
骨折している松岡さんを病院に連れて行く。
付き添いはひとり
(誰にするかは、タイムアップで決められず)。
(明日に続きます。またも、心配な報告が入ってきます)
2025-08-22-FRI