
災害が起こったとき、
私たちはどんな選択を迫られるのでしょうか。
ほぼ日乗組員9人で、
防災研究者の廣井悠先生等が開発した
「KUG(帰宅困難者支援施設運営ゲーム)」に取り組み、
災害時の行動を具体的に想像してみました。
帰宅困難者による混乱を生まないため、できるだけ
社内に人を滞留させることを第一に考えましたが、
いざ引き留めようとするとさまざまな難しさが明らかに。
強制力のある結論を出すものではないので、
ひとつの例として、乗組員たちの決断を
追っていただけたらうれしいです。
それでは、ゲームスタート!

大都市防災研究者、廣井悠先生と
SOMPOリスクマネジメント㈱が共同開発した、
帰宅困難者を受け入れ・滞留させる施設のための
図上訓練キットです。
架空の事業所のBCP要員(緊急事態発生時に、
事業継続を担うために指定された職員)として、
起こったトラブルへの対応を決めていきます。
今回は「都市で日中に地震が起こった」
という設定で取り組みました。
また、ファシリテーターとして、廣井悠先生と
SOMPOリスクマネジメントの宮田桜子さんに
進行いただきました。

はじめに、2チームに分かれて、
役割分担と滞留方針、対策本部の場所を決めました。
災害時は、行政のガイドラインに従いつつ、
その場に応じた判断をすることが求められますので、
どちらのチームの選択が正しい、ということはありません。
自分だったらどんな選択をするかな、と考えてみてから、
各チームの選択をご覧いただけたらと思います。
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◎対策本部長…あやや![]()
◯記録係…かとう![]()
・その他…やまと
、かのう
、のなか
☆対策本部…3階広場
![]()
◎対策本部長…さくま![]()
◯記録係…しもー![]()
・その他…いしざわ
、やすな
、ゆーないと![]()
☆対策本部…7階Mtgルーム




対策本部の場所は、Aチームが3階、
Bチームが7階ですね。
低層階がよいか、高層階がよいかは、
なにを重視するかによりますが、災害時、
エレベーターが使えないことも想定されるので、
下の階がいいかもしれません。
ただ、とくに都心では、家に帰れず
行き場をなくしてしまった人々を
受け入れる場合もあるので、
対応のために本部が混雑する可能性もあります。
その場合は、建物の入口から離れた高層階に
本部を置いたほうが、4階ぶんの差くらいでしたら、
建物内が慌ただしくならずに済むという
考え方もありますね。
なので、どちらの選択も間違いではありません。
「発災直後に、すべての面で最善の行動をする」
ということは不可能なので、
状況に対応して本部の場所を変えるなど、
フレキシブルに動くことが重要ですね。
〈練習問題〉
以下の3名が、
「自宅がどうなっているか心配なので帰りたい」と
訴えています。
必要な対応を検討してください。

- やまと
- 帰りたいのかぁ。
たぶん、帰りたい気持ちはみんな持っているけど、
一斉に帰ってしまうと道路が大混雑して
群集事故が起こるかもしれないんだよね。
- かとう
- 私は、吉田さんの、怪我している娘さんが心配です。
- あやや
- 保育園のほうが、救護の先生もいるから、
安全かもしれないね。
吉田さん自身の安全を考えると、無理に移動せず、
社内に留まってもらったほうがいいんじゃないかな‥‥?
- 方針
- 3人と、なるべく帰らないよう相談する。
- ゆーないと
- 娘さんが怪我しているなら、
吉田さんは帰ったほうがいいんじゃないかな。
- やすな
- でも、夫は北海道にいるから、
吉田さんはひとりで娘さんの手当を
しなきゃいけなくなりますね。
保育園に留まったほうがいいかも?
- ゆーないと
- たしかに。
- さくま
- だけど、保育園でも園児ひとりひとりへの対応が
間に合っていなかった場合、
夫はすぐには向かえないので、
娘さんの怪我に対応する人が
いなくなってしまいますね。
会社から吉田さんの自宅までの距離は5kmと、
けっこう近いから、やっぱり吉田さんを
帰らせたほうがいいかもしれない。
- やすな
- そうだね、吉田さんは帰っていいことにしよう。
- 方針
- 吉田さんに帰宅許可を出す。
ほかのふたりとは、なるべく帰らないよう相談する。
- 宮田さん
- その調子です。では、本番に入っていきましょう。
発災から約30分後、
最初のイベントが発生しました。
イベント①〈発災当日12:05)
以下の方から、
「家族と連絡がとれず、心配なので、帰宅したい」
との要望があがっています。
必要な対応を検討してください。

- あやや
- 帰りたい気持ちはとても理解できるけど、
帰ったとしても、
家でできることはあまりなさそうだよね。
- やまと
- うん、家族が心配なのはよくわかるけど‥‥。
せめて、連絡だけでも通じれば、
帰る必要はなくなりそうだね。
家族と連絡がとれなくなったときのために、
普段からいくつか
連絡手段を用意しておけばよかったのかな。
- あやや
- 栃木さんは、学校にいる娘と息子の無事が
わかっているんだ。
自分の子が通っている学校が、
災害時に安否の連絡をくれるのかも
確認しておきたいね。 
- かのう
- 夫婦のどちらが子どもを迎えに行くかも、
事前に話し合っておいたほうがよさそうです。
- 方針
- 遠藤さん、栃木さんと、
帰らなくて済むように相談する。
- さくま
- 遠藤さんも栃木さんも、自宅が会社から
10km以上離れているから、
歩いて帰るのは大変だよ。
途中で行き倒れてしまうかも。
- やすな
- そうだね。
「それでも帰る!」と言う可能性も高いけど‥‥。
- さくま
- 家族が家にいるかもわからないから、
「家族の安否が不明であること」が、
遠藤さんたちが帰る
直接の理由にはならないんじゃないかな。
ひとまず、ふたりとも残ってもらおう。
家族のぶんまで
安否確認システムに入ってもらうよう、
事前にお願いしておけばよかったですね。
- やすな
- 高齢の家族や、子どもの通う学校と、
災害時にどうやって連絡をとるか把握しておけば、
不安が軽減したかもしれません。
- 方針
- 遠藤さん、栃木さんと、
帰らなくて済むように相談する。
イベント②〈発災当日12:30〉
TVの報道情報です。
「公共交通機関は当面運転を見合わせ、
復旧には数時間を要するとのことです。
ひがしの市内の主要幹線道路では交通規制が敷かれ、
緊急車両以外の通行ができません。」
必要な対応を検討してください。
- 宮田さん
- 時刻は12時半なので、
そろそろおなかがすいた人もいるかもしれません。
どうしますか?
- やまと
- 宮田さんのおっしゃるとおり、
ふだんならお昼ごはんの時間ですね。
- あやや
- ‥‥お米にはふりかけとか要るよね?
- やまと
- え?
- あやや
- これを見て。

- あやや
- 白米だけ渡されても、
それだけで食べるのってけっこうきついよ。
- やまと
- ‥‥たしかに。
- あやや
- でも、今後どれだけ食糧が必要になるか
わからないから、
この時点でおかずごと渡すと
あとで足りなくなるかもしれないね。
まずは、サッとそれだけで食べられるものを
配っておこう。
五目ごはんとか。
- やまと
- そうだね。
なにを言い出したのかと思ったけど、
意外と論理的でした。
- 方針
- 味のついたごはんを配る。
- さくま
- 公共交通機関がいつ復旧するかわからないから、
少なくとも24時間は社内に留まる想定で
考えていきましょう。
‥‥でも、
ひとりひとりに配られている備蓄品のなかで、
すぐ食べられそうなものが
ようかんしかない。
- ゆーないと
- 会社全体の備蓄品には、
3日分のいろんな食糧があるよ。 
- やすな
- しかも、半分くらいの社員は外出中だから、
量には余裕がありそうだね。
- ゆーないと
- それなら、おなかすいた人は食べ始めていいかも。
- 方針
- おなかがすいた人は食べ始める。
(明日に続きます。次回、体調不良を訴える人が‥‥)
2025-08-18-MON