災害が起こったとき、
私たちはどんな選択を迫られるのでしょうか。
ほぼ日乗組員9人で、
防災研究者の廣井悠先生等が開発した
「KUG(帰宅困難者支援施設運営ゲーム)」に取り組み、
災害時の行動を具体的に想像してみました。
帰宅困難者による混乱を生まないため、できるだけ
社内に人を滞留させることを第一に考えましたが、
いざ引き留めようとするとさまざまな難しさが明らかに。
強制力のある結論を出すものではないので、
ひとつの例として、乗組員たちの決断を
追っていただけたらうれしいです。
それでは、ゲームスタート!


大都市防災研究者、廣井悠先生と
SOMPOリスクマネジメント㈱が共同開発した、
帰宅困難者を受け入れ・滞留させる施設のための
図上訓練キットです。
架空の事業所のBCP要員(緊急事態発生時に、
事業継続を担うために指定された職員)として、
起こったトラブルへの対応を決めていきます。
今回は「都市で日中に地震が起こった」
という設定で取り組みました。
また、ファシリテーターとして、廣井悠先生と
SOMPOリスクマネジメントの宮田桜子さんに
進行いただきました。

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第1回 発災当日 11:30~12:30


はじめに、2チームに分かれて、
役割分担と滞留方針、対策本部の場所を決めました。
災害時は、行政のガイドラインに従いつつ、
その場に応じた判断をすることが求められますので、
どちらのチームの選択が正しい、ということはありません。
自分だったらどんな選択をするかな、と考えてみてから、
各チームの選択をご覧いただけたらと思います。


◎対策本部長…あやや
◯記録係…かとう
・その他…やまと、かのう、のなか
☆対策本部…3階広場


◎対策本部長…さくま
◯記録係…しもー
・その他…いしざわ、やすな、ゆーないと
☆対策本部…7階Mtgルーム




対策本部の場所は、Aチームが3階、
Bチームが7階ですね。
低層階がよいか、高層階がよいかは、
なにを重視するかによりますが、災害時、
エレベーターが使えないことも想定されるので、
下の階がいいかもしれません。
ただ、とくに都心では、家に帰れず
行き場をなくしてしまった人々を
受け入れる場合もあるので、
対応のために本部が混雑する可能性もあります。
その場合は、建物の入口から離れた高層階に
本部を置いたほうが、4階ぶんの差くらいでしたら、
建物内が慌ただしくならずに済むという
考え方もありますね。

なので、どちらの選択も間違いではありません。
「発災直後に、すべての面で最善の行動をする」
ということは不可能なので、
状況に対応して本部の場所を変えるなど、
フレキシブルに動くことが重要ですね。

〈練習問題〉
以下の3名が、
「自宅がどうなっているか心配なので帰りたい」と
訴えています。
必要な対応を検討してください。


 
やまと
帰りたいのかぁ。
たぶん、帰りたい気持ちはみんな持っているけど、
一斉に帰ってしまうと道路が大混雑して
群集事故が起こるかもしれないんだよね。
かとう
私は、吉田さんの、怪我している娘さんが心配です。
あやや
保育園のほうが、救護の先生もいるから、
安全かもしれないね。
吉田さん自身の安全を考えると、無理に移動せず、
社内に留まってもらったほうがいいんじゃないかな‥‥? 
方針
3人と、なるべく帰らないよう相談する。

 
ゆーないと
娘さんが怪我しているなら、
吉田さんは帰ったほうがいいんじゃないかな。
やすな
でも、夫は北海道にいるから、
吉田さんはひとりで娘さんの手当を
しなきゃいけなくなりますね。
保育園に留まったほうがいいかも? 
ゆーないと
たしかに。
さくま
だけど、保育園でも園児ひとりひとりへの対応が
間に合っていなかった場合、
夫はすぐには向かえないので、
娘さんの怪我に対応する人が
いなくなってしまいますね。
会社から吉田さんの自宅までの距離は5kmと、
けっこう近いから、やっぱり吉田さんを
帰らせたほうがいいかもしれない。
やすな
そうだね、吉田さんは帰っていいことにしよう。
方針
吉田さんに帰宅許可を出す。
ほかのふたりとは、なるべく帰らないよう相談する。
宮田さん
その調子です。では、本番に入っていきましょう。
発災から約30分後、
最初のイベントが発生しました。

イベント①〈発災当日12:05)
以下の方から、
「家族と連絡がとれず、心配なので、帰宅したい」
との要望があがっています。
必要な対応を検討してください。


 
あやや
帰りたい気持ちはとても理解できるけど、
帰ったとしても、
家でできることはあまりなさそうだよね。
やまと
うん、家族が心配なのはよくわかるけど‥‥。
せめて、連絡だけでも通じれば、
帰る必要はなくなりそうだね。
家族と連絡がとれなくなったときのために、
普段からいくつか
連絡手段を用意しておけばよかったのかな。
あやや
栃木さんは、学校にいる娘と息子の無事が
わかっているんだ。
自分の子が通っている学校が、
災害時に安否の連絡をくれるのかも
確認しておきたいね。
かのう
夫婦のどちらが子どもを迎えに行くかも、
事前に話し合っておいたほうがよさそうです。
方針
遠藤さん、栃木さんと、
帰らなくて済むように相談する。

 
さくま
遠藤さんも栃木さんも、自宅が会社から
10km以上離れているから、
歩いて帰るのは大変だよ。
途中で行き倒れてしまうかも。
やすな
そうだね。
「それでも帰る!」と言う可能性も高いけど‥‥。
さくま
家族が家にいるかもわからないから、
「家族の安否が不明であること」が、
遠藤さんたちが帰る
直接の理由にはならないんじゃないかな。
ひとまず、ふたりとも残ってもらおう。
家族のぶんまで
安否確認システムに入ってもらうよう、
事前にお願いしておけばよかったですね。
やすな
高齢の家族や、子どもの通う学校と、
災害時にどうやって連絡をとるか把握しておけば、
不安が軽減したかもしれません。
方針
遠藤さん、栃木さんと、
帰らなくて済むように相談する。

イベント②〈発災当日12:30〉
TVの報道情報です。
公共交通機関は当面運転を見合わせ
復旧には数時間を要するとのことです。
ひがしの市内の主要幹線道路では交通規制が敷かれ、
緊急車両以外の通行ができません。」
必要な対応を検討してください。

宮田さん
時刻は12時半なので、
そろそろおなかがすいた人もいるかもしれません。
どうしますか? 

 
やまと
宮田さんのおっしゃるとおり、
ふだんならお昼ごはんの時間ですね。
あやや
‥‥お米にはふりかけとか要るよね? 
やまと
え? 
あやや
これを見て。
あやや
白米だけ渡されても、
それだけで食べるのってけっこうきついよ。
やまと
‥‥たしかに。
あやや
でも、今後どれだけ食糧が必要になるか
わからないから、
この時点でおかずごと渡すと
あとで足りなくなるかもしれないね。
まずは、サッとそれだけで食べられるものを
配っておこう。
五目ごはんとか。
やまと
そうだね。
なにを言い出したのかと思ったけど、
意外と論理的でした。
方針
味のついたごはんを配る。

 
さくま
公共交通機関がいつ復旧するかわからないから、
少なくとも24時間は社内に留まる想定で
考えていきましょう。
‥‥でも、
ひとりひとりに配られている備蓄品のなかで、
すぐ食べられそうなものが
ようかんしかない。
ゆーないと
会社全体の備蓄品には、
3日分のいろんな食糧があるよ。
やすな
しかも、半分くらいの社員は外出中だから、
量には余裕がありそうだね。
ゆーないと
それなら、おなかすいた人は食べ始めていいかも。
方針
おなかがすいた人は食べ始める。

(明日に続きます。次回、体調不良を訴える人が‥‥)

2025-08-18-MON

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