「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。

最終回のゲスト中竹竜二さんは、
早稲田大学ラグビー蹴球部監督を経て、
ラグビーU20日本代表ヘッドコーチを
3期にわたって務めたスペシャリスト。
また、ラグビーだけでなく、
企業のリーダー育成トレーニングを行う会社や
コーチの学びの場を促進する団体を設立するなど、
ジャンルを超えて人を導いてこられた方です。

そんな中竹さんが話してくださったのは、
「行動」から「考え方」、「ものの見方」まで、
今すぐ挑戦できそうなことの数々。
そしてそれは、
これから就活をする人にも、
何十年も働いている人にも、
届くようなものばかりです。

出席者全員が体験した空気の変化や、
昨年のラグビーワールドカップで日本が強かった理由など、
糸井も何度も感心したお話を
全8回にわけて、「ほぼ日曜日」からお届けします。

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第1回

知ろうとする。それだけでいい

中竹
(開場を見渡して)
なかなかいい緊張感ですね(笑)。
糸井
真剣な若い人たち特有の緊張感で。
これまで2回、
僕はそれにのまれて、ヘトヘトになりました(笑)。
中竹さんと僕が知り合ったのは、
何年前でしたっけ?
中竹
前回のラグビーワールドカップ(’15年)の後なので、
4年半ぐらい前です。

糸井
もうそんなになるんですか!
ラグビー協会のひとりとして、
「ラグビーはこれからどうしたらいいんでしょうね」
という相談を受けたのが最初でしたね。
中竹
そうです。
糸井
そのときに
去年流行った「にわか」という言葉の
元になる考え方を言ったんですよね。
ラグビーのことをよく知らないけど
「うわ、面白い!」と思った人を、
とにかく大事にするべきじゃないかって。
詳しく知っている人が
「お前、にわかだろう」と
ばかにした言い方で言うから
みんな嫌になっちゃうんです。
「『にわかファン』を大切にするような
スポーツになったらいいんじゃないでしょうか」
というのを、
僕がまだ、にわかにもなってないくせに話したら、
中竹さんだけが大いに頷いて。
この人はわかってくれるんだと思い、
もうちょっとお話を聞きたいなって
だんだんと会うようになりました。
中竹
そうでしたね。
糸井
中竹さんは今、
ラグビーで培ったノウハウやメソッドを
ビジネスのコーチングに生かす
というお仕事もなさっています。
なので今日は持って帰れる情報や言葉が
かならずあると思いますよ。
さっき「ほぼ日」の25~26歳の女性が、
「就職する前の状況にいる学生は
本当に緊張して硬くなるんだ」
と僕に教えてくれました。
僕はわかんないんですよ、
そういうことをしたことがないので。
中竹
要は、就活生の気持ちがわからない(笑)。

糸井
みなさんがあんまり真剣だから、
もっと笑っていてください、と思うんだけど、
「無理です」って言われたの。
「ほぼ日」では、
合宿で人事採用を決めたこともあるんです。
一緒にミーティングしたり、お酒飲んだり、
焼肉食べたりしたんだけど、
後で「あの焼肉は味がしませんでした」って言われて。
中竹
焼肉どころじゃなかったんですね(笑)。
糸井
僕は楽しく食べていたのに。
だから最初に結論じみたことを言っちゃいますけど、
ほんっとーーーーうに、たいしたことないから!
中竹
ふふっ。
糸井
就職活動って、
会社が、あなた方を品定めしてるかのように見える。
「うちに入れてやる」というような、
なにか上からの圧を感じるでしょ?
でも、本当にたいしたことないですから。
それを怖がるのはやめてください。
‥‥と言っても、
簡単じゃないんですよね、きっとね。
中竹
そうですね。
糸井
「ふつうにする」ということが
やっぱりできなくなっちゃうんだよね。
だって相手が全部カードを持ってるんだもんね。
そういう事情はよくわかる。
よくわかるけど、
なにも良いことないですから、怖がっていて。
「怖がるな」というのは、
自分へのおまじないとして思っていたほうがいいです。
中竹
うん。
糸井
前に書いたこともあるんですけど、
矢沢永吉という人は、
誰も怖くないような顔してやってるじゃないですか。
だけど舞台が始まる前って怖いんだって、やっぱり。
そのときに矢沢は矢沢に
「楽しめ。楽しめ」って言うんだって。
という話を俺は何度も聞いていて。
真似したんだよ、それ。
そしたらね、本当にラクになったんです。
「怖くない」じゃないの、「楽しめ」。
どういう鬼が出ようが悪魔が出ようが、
「あ、鬼が出た」「悪魔が来た」
「俺を今落とそうとしてる」というのを
「楽しい」というふうに、
おまじないでいいからやっていると慣れるから。
今日は最初にそれを教えておきます。
「楽しめ」
これを最初に言ってから始めることにしたんですけど、
(客席を見渡して)まだ、楽しんでないようですね(笑)。
中竹
では、ちょっと僕に
3分お時間いただけます?
糸井
ぜひ。

中竹
みなさん、立ってください。
今から1分間で、なるべく知らない3人の方と
自己紹介をして、笑顔で会話してみてください。
はい、じゃあお願いします。
(客席のみなさんがそれぞれに自己紹介を行う)
中竹
はーい、ありがとうございます。
座ってください。
糸井
なんか空気が変わった!!
中竹
ここにいる方々って大体同じ目的で来てるわけですよ。
でも、始まる前に隣の人と喋った方っています?
話さないと相当もったいないです。
今日この場でしかできないことですよ?
「こんにちは。よろしくお願いします」
って言えばいいだけです。
これをやるかやらないかで、
みなさんの人生も全く変わります。
糸井
ああ、そうだね。
中竹
糸井さんが「にわか」の話をしましたが、
こういうときに、
「知る・知らない」を気にする人は多いです。
知らないことで恥ずかしい思いを
するかもしれないと思って、行動できない。
でも、物事を知っているか知らないかって
全然関係ないです。
わからないことは、教えてもらえればいいんですよ。
知ろうとする、それだけでいい話です。
自分の中で「知る・知らない」に
大きな基準を置いても、
人生においてほぼ関係ないです。
ということで次からは、
こういった場ではぜひ
隣の人に話しかけてみてください。
ということでじゃあ、始めましょうか!
糸井
はい(笑)。

(つづきます)

2020-05-12-TUE

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