さぁ、不思議な座談会がはじまります。
もともと『MOTHER』の大ファンで、
『MOTHER』にまつわるコンテンツやグッズを
YouTubeで紹介してくださっていたコアラさん。
そして、最近『MOTHER2』と『MOTHER3』の
ゲームの実況を生配信し、話題になった
VTuberのリゼ・ヘルエスタさん。
ふたりの『MOTHER』ファンによる
「あたらしい活動」を知った糸井重里は、
その取り組みにとても興味を持ち、
この日のおしゃべりが実現しました。
念のためにお伝えしておきますが、
ときどき、ゲームの大事な場面について、
遠慮なく話すことがあります。

>コアラさん プロフィール

コアラ

ヴィジュアル系ゲーム実況動画クリエイター。
鋭い突っ込みによるトーク、
テンポの良い編集に定評があり、
笑いや驚きを視聴者に提供する。
ゲームコレクターとしての顔も持ち、
とくに『MOTHER』グッズの収集は
質、量ともに世界トップレベル。

>コアラ’s GAME SHOW

>リゼ・ヘルエスタさん プロフィール

リゼ・ヘルエスタ(りぜ・へるえすた/Lize Helesta)

にじさんじ所属バーチャルライバー。
ヘルエスタ王国の第二皇女。
文武両道学園主席、真面目で
誰にでも優しくかなりの人望がある。
王位継承の資格者として日々鍛錬や
人とのコミュニケーションを大事にしている。

>リゼ・ヘルエスタ -Lize Helesta-

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第8回 リアルに想像しないほうがいい

リゼ
コアラさんは、
印象に残ってるキャラクターとかいます?
コアラ
ぼく、『MOTHER』のなかで
いちばん好きなキャラクターが、
『MOTHER2』のフランクさまなんですよ。
糸井
ああー(笑)。
リゼ
そうなんだ(笑)。
コアラ
もう、フランクさまの
何が好きかっていうと、その潔さ。
フランクさまって、オネットの
シャーク団のトップなんですよ。
地元の悪いやつらのリーダーで、
無敵といわれてるんですよね。
そんなフランクさまが、
ネスと戦って、負けてしまうわけです。
「はじめて負けた」と。
でもね、最後にフランクさまは、
「俺より強いネス、健闘を祈るぜ!」
ぐらいのことを言って、
ネスを認めちゃうんですよ、男として。
そこを見て、
「うわっ、カッコいい、この人!」と。

糸井
(笑)
リゼ
あれ、カッコいいですよね(笑)。
コアラ
そうなんですよ。
じぶんより、年下の子に負けたのに、
「いや、お前、すげぇよ」って
素直に言えるっていうのは、
自分も見習わなきゃいけないなって、
ほんとに思ってて。
糸井
そうだよね。
コアラ
だから、自分より後輩で
すごく才能あるやつに会ったときに、
そこに嫉妬するんじゃなくて、
「お前、すげぇじゃん、がんばれよ」って
言ってあげられる先輩になれるように、
フランクさまみたいな男になりたいなって、
俺、ほんとうに思ってるんです。
リゼ
わあ(笑)。
糸井
彼は、すっごいシンプルな男なんですよね。
コアラ
はい。ほんとにもう、わかりやすい。
だから、男が惚れる男っていうか。
カッコいいな、と。
糸井
で、地元の人なんだよね。
コアラ
はい、地元のヤンキーみたいな(笑)。
糸井
しかも、そういう人が、
オネットっていう最初の町に
出てくるのがいいんですよね。
コアラ
そうなんです!
いってみれば最初の強敵ですから。
糸井
最初のボスとしてそういう人が出てきて、
「お前、強いな、がんばれよ!」って
言ってくれるのは、いいよね。
リゼ
うん、うん。
コアラ
で、エンディングのあとに行くと、
ショップでアルバイトしてたりする。
そのへんも、ちょっと、かわいくて(笑)。
糸井
ああー(笑)。
コアラ
そういうのもあって、
いちばん好きなんですよね、フランクさま。
リゼ
私はポーキーがずっと気になってて、
コアラさんはフランクさまが好きで。
糸井
おもしろいよね、そういうのは(笑)。
リゼ
あと、糸井さんに聞いてみたかったのは‥‥
どせいさんって‥‥何者なんですかね?
糸井
どせい‥‥さん、なんじゃないですかね。
コアラ
(笑)
リゼ
なんか、当然のように、
サターンバレーに着いたら、いて。
このひとに関する説明は、
とくにない、みたいな(笑)。
糸井
そう‥‥ですね。
リゼ
当然のようにその世界いる、
不思議な生き物‥‥。
糸井
ぼくにもよくわからない。
一同
(笑)

コアラ
そういえば、ぼく、友だちと、
どせいさんの手触りについて
すごく議論したことがあるんですよ。
リゼ
どういう議論ですか(笑)。
糸井
(笑)
コアラ
そのとき友だちは、どせいさんって、
「猫みたいな手触りだ」って言ったんですよ。
つまり、毛の生えた、皮っぽい部分があって、
そこがこう、触るとブヨブヨしている。
リゼ
あはははは。
コアラ
一方、ぼくは、もっとこう、
産毛が生えてるような感じで、
柔らかいんじゃないかって言ったんです。
で、もちろん決着はつかなかったんですけど、
それはそれで話すとおもしろくて。
糸井
まあ、あれです、
どせいさんの質感についてはね‥‥
その、どれを選んでも、
なにか弱点はありますよ。
リゼ
いま、糸井さんが答えを言うのかと思って、
一瞬ドキドキしてたんですけど(笑)。
コアラ
うん(笑)。
糸井
いやいや、やっぱり、そういうことって、
追っかけきれないですよ。
まあ、だから、なんだろう、
悪い人がどせいさんをこう持ち上げたとき、
「足をばたばたさせるだろうな」っていう
イメージくらいはあります。
一同
(笑)
糸井
でも、肌触りとかは、どうだろうなぁ。
うーん‥‥いま、聞かれたので言うと‥‥
犬の、子犬のお腹の感触っていうのが、
ちょっとぼくは、なんかいいなぁ、と思う。
リゼ
あー!
糸井
でも、その方向で、あんまり、
リアルに想像しないほうがいいと思う。
どせいさんが子犬のお腹っぽいって決めて、
さらにイメージしていくと、
今度は、内蔵がどうなってるのかとか
想像しなきゃいけなくなるから。
コアラ
ああ、そう、そう、そうですよ。
リゼ
内臓ですかー(笑)。
コアラ
ちょっと考えたくないです、
このかわいいフォルムから(笑)。
糸井
そう、ちょっと話がややこしくなるんで、
そのへんにしておこうっていう。
リゼ
なるほど、そうですね(笑)。
たしかに、内蔵とか背骨とか、あまり‥‥。
コアラ
そうですよね(笑)。
糸井
どせいさんに、温度はあってほしいけど、
内臓はちょっとねー、みたいなね。
リゼ
そこまで生っぽい感じがあると、
たしかにちょっと難しくなってきますね。

糸井
あの、ずいぶん前のゲームだから、
これまでに「実写で映画化したい」みたいな
持ち込み企画もそれなりにあったんですよ。
もちろん実現はしてないんですけど。
で、ぼくは、基本的には、
「実現するんだったらなんでもいいですよ」
っていうスタンスでいるんだけど、心では
「難しいだろうな」って思ってるんですよ。
それは、いまの内蔵みたいなことが、
あちこちで問題になるだろうと思うから。
コアラ
ああ、はい、そうですね。
糸井
「大きさ、どうすればいいですか?」
みたいなことでも、答えって出ないから。
リゼ
あー、そうですね。
「ハリウッドで実写化!」みたいになっても、
いったいどうすればいいのか。
糸井
たとえば、実写化するにあたって、
内臓を考えるようなアプローチっていうのは、
要するに、整合性が欲しいんですよね。
生物なんだとしたら、こうである。
内臓があって、生命活動をしてる。
生命活動をしてるとすれば、
これとこれとこれは必要だ‥‥って。
コアラ
はい、はい。
糸井
見えない場所にも全部、整合性をつけたい。
でも、それって、たぶん、
ある時代の流行だとぼくは思うんです。
だから、それをやりすぎちゃうと、
現実だと思えるもので、
全部が埋め尽くされちゃうんですよね。
そうすると、せっかく、
想像してあそんでた楽しいものが、
どんどん侵食されてしまう。
リゼ
ああ、だから、コアラさんが言ってた、
『MOTHER』というゲームには
「解釈や想像の余地がある」んですね。
糸井
そうそうそう。
コアラ
うん、『MOTHER』はそうですよね。
たぶん、そこでリアルを追求しちゃうと、
作品のよさというものが、失われちゃう。
それこそ「野暮だよ」ってことに。
リゼ
うん、うん。
糸井
そうだね。だから、もしも
『MOTHER』の世界を実写化する
っていう野暮なことをやるんだったら、
頭かきながら「野暮なんだけどね」って
言う人とやりたいですよね。

(つづきます)

2020-11-04-WED

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