けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。

>けんすうさんプロフィール

けんすう

起業家、エンジェル投資家、
アル株式会社代表取締役。

1981年生まれ。
学生時代に「ミルクカフェ」という
大学受験サービスを立ち上げたあと、
レンタル掲示板の「したらば」を運営。
その後リクルートに新卒で入社した後、
起業してハウツーサイトの「nanapi」をリリース。
2014年にKDDIグループにM&Aされる。

現在は「クリエイティブ活動を加速させる」ために、
きせかえできるNFT「sloth」、
成長するNFT「marimo」などを手掛けている。

Twitter:@kensuu
note:kensuu

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第1回

けんすうさんは何者ですか?

糸井
今年はこんなことしてみたいとか、
いろいろあるのですが、
そのひとつが知り合いなんだけど、
ふだん会わない人の話が聞きたいなと。
けんすう
ほお、なるほど。
糸井
そういう人の中でも、
話すテーマの目星がつく人と
そうじゃない人がいるんですけど、
まったく目星がつかなそうな人の代表が‥‥。
けんすう
えっ、ぼくですか?
糸井
うん(笑)。
共感したりする分量が多いのに、
ぜんぜん目星がつかない。
けんすう
じゃ、なんの話をするのか、
糸井さんもまだ固まっていないんですね。
糸井
わかんない(笑)。
けんすう
なるほど(笑)。
糸井
ただ、あえてタイトルを付けるなら、
「ぼくは何を学んだらいいですか?」
っていうのがテーマかなと思っていて。
けんすう
あぁ、なるほど。
糸井
ぼくぐらいの年齢になると、
先にいろんなことをやってるから、
みんなから「どうなんですか?」って
訊かれることがすごく多いんです。
けんすう
ええ、ええ。
糸井
それをずっとやってるんだけど、
ぼくも知らないことはたくさんあるし、
「俺こそ訊きたいよ」とも思うし。
それでそういう話ができそうで、
話の取っかかりが
いろいろありそうだなと思ったのが、
けんすうさんだった(笑)。
けんすう
ははは、なるほど。

糸井
けんすうさんのこと、
たぶんみんな本名も知らなければ、
なんにも知らないと思うんです。
けんすう
そうですよね。
何者かの説明も難しいでしょうね。
糸井
ですよね。
で、案外ぼくもそう見られてて。
けんすう
あ、たしかに。
糸井
だからきょうは、
お互いに「そうそう」って言い合ったり、
あるいはぼくとけんすうさん、
どこが違うんだろうも含めて、
お互いキャッチボールをしていると
何かが見えてくるかなと。
けんすう
ぼくもけっこういろんな人から
「どういう人を目指しているのか」
とか訊かれたりするんですけど、
最近わかったのは、
「ロールモデルは糸井重里さんです」っていうと、
これ、全員に納得してもらえる。
糸井
そうですか(笑)。
けんすう
「ああ、それならわかる」って。
なんとなく延長線上に
糸井さんがいらっしゃるっていうが、
まわりから見てもそうなんだというのは、
おもしろかったですね。
糸井
広告をやってる人が
ぼくを目指すといのはまだわかるけど、
けんすうさんもぼくも
どっちもわからない者同士で(笑)。
けんすう
ははは、そうですね。
糸井
じゃあ、まずスタートのところで、
ぼくもよく訊かれて困る質問なんだけど、
「あなたはなんなんですか?」と言われたら、
けんすうさんはなんて答えますか。
けんすう
ぼくは、一貫してインターネットで
おもしろいことをやるという、
そういう立場の人だとじぶんでは思ってます。
10代後半くらいで
はじめてインターネットに触れて、
これまで20年以上、個人でも会社でも、
インターネットらしい
コミュニティサイトをつくったり、
メディアをつくったりしながら、
いろんな形で関わってきているので。
糸井
インターネットっていうものを、
どんなふうにとらえているんですか?
けんすう
それまで本とかテレビとかでないと
発信できなかった情報とか、
人の頭の中の考えが出せる場所、
というイメージがいちばん近いですね。
それはメディアともいえるし、
メディアにはならないような雑多な、
ほんとにくだらない投稿とか、
その両方が合わさったみたいなイメージですね。
糸井
形さえわからない
「超容れ物」ですよね。
けんすう
そうですね。
糸井
それをすごい近視眼的に見れば
ウジ虫が湧いてるみたいにも見えるし、
宇宙の広さ分あるぞっていわれても、
そうだろうなって思うし。
けんすう
はい、まさにそういう感じです。
糸井
ぼくもけっこう似たイメージで、
インターネットっていうものを
はじめて眺めてビックリしたのは、
「なんでも言えるんだ」っていうことで。
けんすう
そうなんですよね。
90年代のインターネットとか、
言っちゃいけないようなものとか、
たくさんあったじゃないですか。
そういうのが出てたのは衝撃的でした。
糸井
最初にインターネットに触れて、
突っ込んでいった場所ってどのあたりですか。
けんすう
ぼくは16歳ぐらいのときに
「呪いのホームページ」っていうのを作ったんです。
糸井
ませてますね(笑)。

けんすう
「このページを見た人は
10人に教えないと呪われます」みたいな、
そういうページを作ったら、
どのぐらい人が来るんだろうと思って。
糸井
うん、うん。
けんすう
結果、そのページ自体は
それほどヒットしなかったんですけれども、
そこに「呪いの掲示板」っていう、
昔のホームページによくあった掲示板を置いたら、
日本中から「あの人を呪いたい」という
投稿がものすごく集まったんです。
それがぼくのインターネットの原体験で。
糸井
すごい体験ですね。
けんすう
すごかったですね。
そのうち霊媒師の人からメールが来て、
「よくない気が集まってるので
ページを削除した方ほうがいい」って。
霊媒師じゃなくてもわかるくらい
よくない気が集まってましたから(笑)。
糸井
気分は悪くなりますよね。
けんすう
それでページは消したんですけど、
インターネットはこんなことが起こるんだっていう、
そういう衝撃はありました。
糸井
それを16歳の子が受けとめたら、
ちょっと歪んだりしませんでしたか。
けんすう
ただ、それと同時に、
インターネットのいい面も体験していたんです。
当時、友だちのバンドがじぶんたちの曲を
ホームページにアップしていたんですけど、
福岡にいるまったく知らない人から、
メールで感想が届いたりするんですよね。
糸井
あー、はいはい。
けんすう
それまでアマチュアバンドの曲を、
遠くにいる人が聴く手段ってなかったわけで、
インターネットってすごいなって。
そういうポジティブな体験もありました。
糸井
それは、いつ頃ですか。
けんすう
1995年とか96年とかだったと思います。
まだヤフーが日本にできたくらいの時代でした。
ホームページを探すにも、
いろんなリンクをたどっていくみたいな。
糸井
まだ検索エンジンが、
ぜんぜん頼りにできない時代ですよね。
けんすう
そうです、そうです。
その概念自体がまだほとんどないときでしたね。

(つづきます)

2023-06-12-MON

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  • けんすうさんが選ぶ、
    インターネットのいまとこれからを
    考えるための本。

    ふだんからビジネス本を
    たくさん読まれているけんすうさん。
    インターネット関連のおすすめ本を、
    解説付きで5冊教えていただきました。
    もっと深く知りたい方は、
    ぜひ参考にしてみてください。

    『ツイッター創業物語 
    金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP) 
    著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃

    ツイッターは歴史的にみても、
    かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
    トラブルつづきの企業です。
    それは、いまもつづいているとも言えます。

    経営、運用、技術、どれをとっても、
    極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
    サービスが魅力的であるために、
    世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
    とてもおもしろいなと思っています。

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    『ソーシャルメディア・プリズム 
    SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房) 
    著:クリス・ベイル 訳:松井信彦

    ソーシャルメディアによる
    影響について書かれている本です。
    短い書籍ではありますが、
    ソーシャルメディアによる
    社会の分断についての問題から、
    インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。

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    『ネットは社会を分断しない』
    (KADOKAWA/角川新書) 
    著:田中辰雄、浜屋敏

    10万人規模の調査をして、
    いまのインターネットと
    社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
    インターネットによって
    社会が分断されているように感じたりしますが、
    実はそんなことないよ、
    という内容が書かれています。

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    『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) 
    著:アダム・オルター 訳:上原裕美子

    依存症ビジネスについて書かれた本です。
    現在のインターネットの主流である
    ソーシャルメディアやゲームなどで、
    依存症ビジネスの仕組みは
    良くも悪くも活用されています。
    ここを知っておくことで、
    いまのインターネットについてより理解できるかなと。

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    『イーサリアム 
    若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP) 
    著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー 
    訳:高橋聡

    歴史に名を残すであろう
    ヴィタリック氏のコラム集です。
    暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
    極めて頭がいいんだろうな、というのと、
    それをわかりやすく美しい文章で
    表現できる稀有な存在です。
    インターネットを次の段階に
    引き上げた人の名文がたっぷり読めます。

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