
スープ作家の有賀薫さんが
「ほぼ日の學校」に出てくれました。
ご自宅でサムゲタン風スープを作ってもらい、
そのできあがりを待つ間に、
お話をうかがったんです。
スープ作家と名乗るようになった理由や、
大切にしていること、
食卓や暮らしに対する考えなど、
さまざまなお話を聞かせていただきました。
料理をすることは、たのしくて豊かなことだと、
あらためて感じられる時間になりました。
レシピもご紹介しますので、
ぜひ作ってみてくださいね。
有賀 薫(ありが・かおる)
10年間作り続けた朝のスープをSNSで
発信し注目を集める。
2016年『365日のめざましスープ』でデビュー。
これまでに3000種類以上のスープを制作。
「引き算のレシピ」を確立し、
多忙な現代人に寄り添う活動が支持されている。
書籍、雑誌、ウェブ媒体でのレシピ発表や執筆、
NHK「きょうの料理」出演など幅広く活動。
また「つくる・食べる・片づける」を一台で完結させる
ごはん装置「ミングル」を開発し、
家の中でもキャンプのように、
みんなで料理して食べる
新しい食卓のかたちを提案している。
料理レシピ本大賞2020入賞の
『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』
『スープ・レッスン』など著書多数。
スープの実験室である「スープ・ラボ」主宰。
- ※この日は「ほぼ日の學校」の収録で、
スープを仕込むところから始まりました。
まずはキッチンでの様子から、お伝えしますね。
(材料やレシピは文末に掲載しています)。
- 有賀
- よろしくお願いします。
今日はサムゲタン風のスープを作ります。
- ──
- よろしくお願いします。たのしみです。
- 有賀
- サムゲタンというのは、
基本的に丸鶏で作るものなんですが、
普通、丸鶏はなかなか買えないですよね。
- ──
- そうですね、なかなか。
- 有賀
- でも私たちが普段買っている、
もも肉や手羽先や胸肉なんかは、
丸鶏を分解したものですよね。
そこで今日は、それらを元に戻すような感じで、
骨つきの肉と、食べごたえのある
もも肉を一緒に入れて作りたいと思います。
それから
サムゲタン(参鶏湯)の「参」は高麗人参のことで、
高麗人参やナツメを入れるのですが、
近所のスーパーで買えるものではないので、
なしでいきます。
今日はいつも家にあるような、
にんにくやしょうが、ねぎなどを使います。
ですので、サムゲタン「風」です。
- ──
- 身近な食材だけで作れるんですね。
- 有賀
- そうなんです。
では、鶏を下ごしらえしましょう。
もも肉1枚を用意して、
切っていきます。
鶏は脂が出やすいので、
スープにするときは、脂の部分や
皮のはみ出した部分は
切り落としたほうがいいです。
4人で食べるとして、
もも肉を4つくらいに切りましょう。
後で切る手間が省けるので、
今切っちゃってますけど、
切らずにそのまま入れてもいいです。
- ──
- はい。
- 有賀
- それから手羽先です。
手羽先は4本でも5本でもいいですし、
手羽元を入れてもいいと思います。
骨のついた部分を入れると、
スープがすごくおいしくなるので、
ぜひ入れてください。
- ──
- 骨つきだと、やっぱり違うんですね。
- 有賀
- そうなんです。
ちなみに胸肉は、それ自体は
おいしいスープがとれるんですけども、
胸肉だとパサッとしちゃうんですね。
このスープはちょっと長く煮るので、
もも肉のほうをおすすめします。
肉を鍋に入れたら、水を入れます。
量は測らなくて大丈夫です。
ちょうど肉にかぶるぐらいに入れて、
まず簡単に茹でます。
アクがたくさん出るんですけど、
後で、それをとっていきます。
この下ごしらえをすることで、
鶏の臭みが消えますし、煮えやすくもなります。
- ──
- はい。
- 有賀
- この間に、にんにくとしょうがの
下ごしらえをしておきましょう。
にんにくは皮をむいておきます。
しょうがは薄切りにしてくださいね。
少し多めに入れてもいいと思います。
ねぎも用意しておきます。
白い部分は、最後に薬味として入れますけど、
青い部分は、鶏の臭み消しになるので、
香味野菜みたいな感じで、
後で一緒に煮込んでいきます。
汚れている部分はカットしてくださいね。
- ──
- ねぎは青い部分だけ先に使うんですね。
- 有賀
- そうです。
それと、本来のサムゲタンは、
丸鶏のおなかの中に栗やお米を詰めますが、
今日はスープに直接お米を入れます。
今この時点では、肉を下茹でしている段階なので、
まだ入れません。
後で、大さじ3のお米を入れます。
お米が入ると、サムゲタンらしく、
ちょっととろみがついて
白濁したような感じになります。
- ──
- 鶏肉と、にんにく、しょうが、ねぎ、
それからお米だけでいいんですね。
- 有賀
- そうなんです。
スープって、出汁をとらなきゃとか、
たくさんの野菜を刻まなきゃとか、
難しく思われがちなんですが、
基本的には、
「具材の味が出た水がスープ」というふうに
考えてもらえれば、幅が広がるかなと思います。
たとえば鶏のように味がしっかり出るものだったら、
他に何も入れずに、
塩だけでスープになりますし、
野菜みたいな旨味が少ないものだったら、
何か旨味の出るものを少し足すといいですね。
それはベーコンかな、ソーセージかな、
鶏肉かな、みたいな感じで足していく。
残り物を入れて調整することもできますし、
それがスープなので、
堅苦しく考えずにスープを作ってほしいです。
- ──
- 今は鶏と水だけが入っている状態で、
沸騰するのを待っている時間ですね。
- 有賀
- そうです。
「待つ」という行為がスープにはありますよね。
たとえばポトフも今日のサムゲタンも、
最初の下ごしらえだけすませてしまえば、
あとは全部、鍋に入れて、
ただひたすら煮るだけというスープなんです。
今は待つことが難しい時代ですけど、
でも、この待っている間に、
時間の有効活用ができますよね。
たとえば天ぷらだったら、
火にかけっぱなしはだめですけど、
スープなら、大きな鍋で弱火にかけておけば、
家の中で他の用事を済ませられますし、
そこがいいところだと思います。
- ──
- 待つ時間を有効活用して。
- 有賀
- そう。私はわりと夜中に
鶏ガラでスープを作ることがあるんです。
スープの表面にポコポコと泡が出て、
具材がゆらゆらと浮かんで、
その様子を眺めているだけで、
海辺で波とか雲の風景を
見ているような気分になることもあります。
格好つけたこと言っちゃいました(笑)。
- ──
- (笑)
待つときに、こういうふうに
人の目につくところに
鍋が置いてあるのはいいですね。
- 有賀
- そうですね。
このキッチンのいいところは、
リビングの、人が通るところにあって、
みんながちょっとのぞきにこれるんですよね。
テレビを見ていても、ポコポコ音がして、
鍋の様子がわかりますし。
日本でも海外でも、たとえば囲炉裏とか
ストーブに鍋をかけて、
それをおばあちゃんとかおじいちゃんが
ちょっと見張り番をしているみたいな
世界観ってありますよね。
そういうイメージなんです。
- ──
- 有賀さんがリビングに作られた
このキッチン設備についても、
後でくわしくうかがいますが、
この場所に設置したことに意味があるんですよね。
- 有賀
- はい。今もそうかもしれませんが、
私がスープ作家をはじめたころって、
「キッチンでの孤独」みたいなものを
皆さんから感じることが多かったんですね。
キッチンで料理する人が
一人で閉じ込められているような雰囲気があるなと。
じゃあリビングに持ってきて、
みんなで鍋の様子を見ればいいじゃない、
という思いがありました。
- ──
- ああ。
- 有賀
- もう一つ理由があって、
料理をしている側の孤独もわかるんですが、
そのとき、他の家族たちは、
キッチンに「入れない」って思っているんですよね。
作る人だけの城みたいになっていて、
どこに何が置いてあるのかわからないし、
邪魔しちゃいけないんじゃないか‥‥みたいな。
私もそういうことを夫に言われたことがあって、
「あ、そうか。じゃあこっちから出向きますか」
というふうに変えてみることにしたんです。
- ──
- 「聖域」みたいな感じで、入れないと。
- 有賀
- そうそう。
料理をはじめ、家事って習慣というか、
無意識でやっていることが多いんですよね。
たとえばよく聞くのが、
他の家族がお皿を洗うと、
汚れや洗剤がついたままになっていて、
「もう一回洗い直さなきゃいけない」
という話です。
それは単にやり方の違いなんですけど、
男女かかわらず、
いつもやっている側が正義みたいなところがあって、
それが家事を分担することの
阻害になっている面があるかなと思います。
- ──
- ああ、たしかに。
- 有賀
- (鍋の様子を見て)
今、ブクブクと泡が出てきましたね。
そしたら、一回、お湯を捨てちゃいます。
もったいないと思うかもしれませんが、
この時点ではまだ全然スープが出てないので
安心して捨ててください。
それで、水をさっと流して、
肉についたアクを流しちゃってください。
- ──
- 肉をザルにとって、
流水でアクを流すんですね。
- 有賀
- そうです。
本当にざっくりでいいです。
そしたらまた鶏肉を鍋に戻します。
- 有賀
- 今度はさきほど用意した、
にんにくとしょうがの薄切り、
ねぎの青い部分とお米を入れていきます。
そうしたら、1.3リットルぐらいの水を入れて
再び中火にかけます。
それで、沸騰したら、火を弱めて、
このままことことと煮ていきます。
- ──
- 塩はどうしましょうか。
- 有賀
- 塩は後で入れます。
これでほぼ、調理自体はおしまいです。
もう本当に他にやることなくて、
ごめんなさい、というくらいの。
後で少し薬味を用意するくらいで。
- ──
- すごくシンプルですね。
本来のサムゲタンには、さらにナツメとか
高麗人参を入れるということでしたよね。
- 有賀
- そうなんです。
ナツメとか高麗人参は、
本来は主材料になるんですけど、
普通はなかなか持ってらっしゃらないと思うので、
そういうものなしでいいと思います。
もしあれば、入れていただければ、
それはそれでまた、おいしい味になります。
- ──
- あるもので。
- 有賀
- 私がサムゲタンを食べたときに感動したのが、
鶏の骨というか、丸鶏から出た
奥深いスープというか、その味が
サムゲタンの魅力だなと思ったんですよね。
そのスープが本当に大好きで、
どうすれば簡単にできるかなと考えて、
いろいろやってみたんですが、
手羽先だけでもちょっとさびしい、
もも肉だけでも物足りない、というときに、
「あ、合体させればいいや」
と思いついたんですよね。
このスープはそういう意味でいうと
「サムゲタンの骨組み」みたいな感じです。
- ──
- サムゲタンの骨組み。
- 有賀
- はい。サムゲタンを漢字で
参鶏湯と書いたときの「参」は、
高麗人参という意味ですが、今回は入れないので、
本当はサムゲタンではないんですよね。
だからこれは、
サムゲタンをリスペクトというか、
オマージュして作った
「サムゲタン風スープ」です。
さて‥‥もう料理としては
これだけなので、何もやることがない。
どうしましょう(笑)。
- ──
- (笑)
鍋のフタは閉じますか?
- 有賀
- 閉じなくて大丈夫です。
理由がありまして、フタをしてしまうと、
鍋の中の温度が上がりすぎちゃうんですね。
ボコボコしてしまうんです。
サムゲタンとかポトフの場合、
食材からゆっくり出汁が出るような
イメージで作りたいので、
オープンのままで大丈夫です。
煮込んでいる途中で水分が減りすぎたら、
水を少し足してあげてください。
今たっぷり入っているので
大丈夫だと思いますけど。
- ──
- では、その間にお話をうかがっていきますね。
(つづきます)
中嶋愛:インタビュー 藤田亜紗美:構成
2026-08-13-THU
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◯材料(4人分)
鶏もも肉 1枚
鶏手羽先 4本
にんにく 2かけ
しょうが 2かけ
米 大さじ3(50g)
塩 小さじ1
こしょう 少々
ねぎ 適量
一味唐辛子・クコの実(あれば)お好み◯作りかた
1)
しょうがは皮つきのまま薄切りにして、
にんにくは皮をむき、
ねぎは青い部分をぶつ切りにする。
鶏もも肉は4等分に切る。

2)
鶏もも肉と手羽先を鍋に入れ、
かぶる程度の水を注いで火にかける。
煮立ったら、ザルに取り、流水でアクを流す。

3)
鶏もも肉と手羽先を鍋に戻し、
米、しょうが、にんにく、ねぎの青い部分、
水1.3リットルを加えて中火にかける。
煮立ったら火を弱め、
ふたをせず50分~1時間ほど煮る。
途中で煮汁が少なくなったら、適宜水を足す。
4)
ねぎの青い部分としょうがを鍋から引き上げ、
クコの実(あれば)を入れ、
塩、こしょうで味を調整する。
器に盛って一味唐辛子をふる。
お好みでしょうがの千切り、ねぎ(白い部分)も
薬味として加える。

レシピはお料理の「骨組み」です。
足したり引いたり、自分に合ったやりかたを
見つけてくださいね。
