2020年の年末、ほぼ日は
神田の町に引っ越してきました。
はじめてのこの町をもっと知りたいし、
もっと知ってほしいと思っています。
そこで、日本全国のすべての市町村を回った
若き写真家、かつおさんこと仁科勝介さんに
神田の町を撮ってもらうことにしました。
自由にやってください、かつおさん。

>かつおさんのプロフィール

かつお|仁科勝介(にしなかつすけ)

写真家。1996年岡山県生まれ。
広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2020年の8月には旅の記録をまとめた本、
「ふるさとの手帖」(KADOKAWA)を出版。
写真館勤務を経て2020年9月からは独立。

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#072


『神田駅のガード下』

神田駅西口と南口を結ぶガード下。
遠くからは、
どこかの路線の発車メロディーが、
絶えず鳴り響いている。

ありがたいことに、
70回ほど写真を掲載させていただいたけれど、
「神田駅」に関連する写真がまだ1枚もないことは、
ぼくの中での焦りであった。

神田駅。何度も歩いているし、
写真のストックもある。
けれど、どの写真もしっくりこない。
悪くはないというか、
普通というか、難しいというか。

神田駅の特徴を写真で捉えるなら、
ガード下に行き当たる。
上では中央線、山手線、上野東京ライン、
京浜東北線、さらには北陸新幹線や東北新幹線‥‥
何本もの路線が行き来している。
だから、ガード下の道がとにかく長い。
そして街灯はついているけれど、
昼間はびっくりするほど暗いのだ。
人間の眼は賢いから、
カメラほど暗さを感じないけれど、
写真なら、ここは一気に夜になる。
ガード下を撮りたいけれど、難しい、
という感じで毎回歩いていた。

グレーの鉄柱の隙間を覗いたり、
遠くから信号機を写したり、
居酒屋の窓ガラスに景色を反射させたり、
いろんな角度で撮ってみた。
結局、地面のコンクリートが光を
柔らかく反射していることに気づいて、
今回の1枚にさせてもらった。

場所柄、このガード下は暗くても、
いつも誰かが歩いている。
自転車が停まっている。
それは、とても大事なことだと感じる。
町が生きていると分かるからだ。
その安心感があるから、
暗いガード下を歩いていても、
怖さを感じない。
心が暗くならない。
歴史とまではいかなくても、
町がつくり出す雰囲気というものがある。
ガード下トンネルを抜けると、
今度は神田の町がパッと明るくなる。
総じてガード下を歩くことは、
ひとつのワクワクなのだ。

ガード下の不思議な魅力。
今度は夜になって、
居酒屋へ行ってみたい。

2021-10-18-MON

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