2020年の年末、ほぼ日は
神田の町に引っ越してきました。
はじめてのこの町をもっと知りたいし、
もっと知ってほしいと思っています。
そこで、日本全国のすべての市町村を回った
若き写真家、かつおさんこと仁科勝介さんに
神田の町を撮ってもらうことにしました。
自由にやってください、かつおさん。

>かつおさんのプロフィール

かつお|仁科勝介(にしなかつすけ)

写真家。1996年岡山県生まれ。
広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2020年の8月には旅の記録をまとめた本、
「ふるさとの手帖」(KADOKAWA)を出版。
写真館勤務を経て2020年9月からは独立。

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#071


『風に揺れるススキ』

夕方5時になると、
町を歩く人々の足取りもどこか軽い。
横断歩道が青色になった途端、
1日を終えた喜びがパッと弾けていくように、
人々はずんずん交差していく。

はやく家路につきたい気持ちは全国共通だろうけれど、
自然を素通りしてしまうことは、多少もったいない。

御茶ノ水のオフィス街から神田川へ抜け、
淡路坂を歩いたとき。
撫でるようなそよ風に揺れるススキを見つけた。
根元から穂先まで全身で享受する秋の風は、
なんとも心地よさそうであった。

ここは御茶ノ水で、
ススキは高原に広がる黄金の海ではなく、
都会にポツンと漂流する黄金の粒子である。
前者なら大いに感動するだろうし、
後者なら「ほお」と、
感じる程度かもしれない。
ただ、両者のススキには、
なんの違いがあるだろうか。

都会の真ん中であっても、
天国だよと言わんばかりに
風に揺れるススキ。
写真を撮っている間、
サラリーマンの方々は
もちろん通り過ぎていく。
でも、もしお子さんがいて、
休みの日に一緒に散歩しながら、
「ねえ見て、ススキだよ!」
なんて言われたら、
同じようにハッと、
感動するかもしれない。

とにかく、偶然見つけた、
ただ今日の風を味わっている
ススキの純粋さに、
心を奪われてしまった。
鳥の鳴き声、植物の季節の巡り、
神田を歩いていても、
あたらしい自然に触れられると、
この上なく感動する。
この感動を詠めたらいいなあ、
なんて思う。
ということで、最後に一句。

足止めてすすきと揺れし淡路坂

2021-10-14-THU

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