
TOBICHI京都ではたらくスタッフ、
kahoさんがTOBICHI京都で個展をひらきます。
kahoさんは、絵を描くアーティスト。
個展のタイトルは「andante」です。
この個展の開催を記念して、
kahoさんへのインタビューを行いました。
場所は、kahoさんのいつもの職場、TOBICHI京都。
ただ、いつもと違うのは、
kahoさんのとなりにイラストレーターの
福田利之さんが座っているということです。
kahoさんにとって福田さんは、
あこがれのイラストレーターであり、
学生時代に客員教授として
絵を教えたくれた先生でもあるのです。
じゃっかん‥‥いや、かなり緊張するkahoさんに
なんとかリラックスしてもらおうと、
福田さんと進行役のほぼ日・山下が
ついついしゃべりすぎているインタビューです。
ですが、すこしずつkahoさんは、
じぶんの言葉を見つけて話してくれます。
ゆっくりと、今回の個展に対する思いが
浮かび上がってくるやりとりを、お読みください。
kaho(かほ)
福田利之(ふくだ としゆき)
イラストレーター。
1967年、大阪生まれ。
エディトリアル、装丁、広告、
ムーンライダーズやスピッツのCDジャケット、
絵本、テキスタイルなどなど、
さまざまなビジュアル表現を手がける。
「ほぼ日」では、読み物、商品問わず、
様々なコンテンツにご登場いただいています。
『あのこはね』(ポプラ社)、
『くりさぶろう』(ケンエレブックス)、
『ぼくはうさぎ』(あかね書房)、
『福田利之作品集』
『福田利之作品集2』
『福田利之作品集3』(すべて玄光社)
など、著作物は多数。
- ───
- TOBICHIでの個展の、
タイトルを教えてください。
- kaho
- 「andante(アンダンテ)」です。
- ───
- アンダンテ。
これはぼく、意味を知ってますよ。
音楽の速度をあらわす記号で、
「歩くような速さで」
という意味ですよね。
- kaho
- そうです。
- ───
- 新作たちは、そういうイメージなんですね。
- kaho
- はい。
25歳が節目な感じではあって。
- 福田
- 四半世紀、歩んで来た記念に。
- kaho
- はい。
わたしは常にちょっと焦ってきたので、
この節目に、落ち着いて。
- ───
- 落ち着いて、歩く速度で、アンダンテ。
いいタイトルですね。
- kaho
- ありがとうございます。
- ───
- 焦ってしまうのは、
つまりやはり、自信がもてないから?
- kaho
- ‥‥そうだと思います。
- 福田
- いい絵ですよ?
完全にkahoちゃんの世界観があるし。
- ───
- ほんとうに‥‥。
- だからぼくも‥‥
ぼくは先生じゃないので生意気なんですが、
kahoちゃんは自信をもっていいと思う。
- 福田
- もっと言ってあげてください(笑)。
- kaho
- ‥‥ありがとうございます。
- 福田
- というようなことを
ぼくも何度も伝えているんですが‥‥。
- ───
- なかなか自信をもつまでには‥‥。
- kaho
- ‥‥はい。
- ───
- 絵だけじゃなくて、
基本的にいろいろなことに
自信がない性格だったり?
- kaho
- そうですね。
- ───
- そっかあ(笑)。
- 福田
- (笑)
- kaho
- ないんです(笑)。
- 福田
- うーーーん‥‥。
でも、その性格が
この絵に出ててるんですよね。
心がちょっとささくれている感じが、
kahoちゃんの色というか。
- ───
- ‥‥ああーーー、たしかに!
- 自信たっぷりのkahoちゃんだと、
これらはきっと違う絵になりますね。
- 福田
- そう。
- ───
- そうかぁ‥‥そうですねえ。
- 福田
- でっしゃろ?
- ───
- ということは、ありのままでいい。
- 福田
- ありのままでよかった(笑)。
「自信をもて」とあんなに言ってきたのに、
コロッと意見を変えます。
- ───
- いろいろ言いましたがkahoちゃん、
自信のないままでいいそうです。
- kaho
- はい(笑)。
- 福田
- でも、もっともっと、いまよりもっと、
描くことを好きになったほうがいいです。
- kaho
- はい!
- ───
- おお、ようやくはつらつとしたお返事が。
- では、だいぶリラックスしてきたので、
あらためて今回の個展の意気込み‥‥
というとまた泣いちゃうので(笑)、
展示する絵について話してもらえますか?
- kaho
- ‥‥絵について。
- ───
- はい。
- kaho
- ‥‥‥‥。
- ───
- 気負わず。
ゆっくりでいいです。
- kaho
- ‥‥‥‥。
- ───
- ‥‥どんな絵なのか‥‥。
- kaho
- ‥‥‥‥。
- 福田
- まあ、アンダンテですね。
- ───
- 福田さんが答えた!
- 福田
- ごめんなさい!(笑)
無言の緊張に耐えられなくて。
- ───
- でも、いいです福田さん、助けてあげて。
なにか答えやすい質問を。
- 福田
- ええと‥‥
基本的に女の子を描いているけど、
この女の子は?
- kaho
- ‥‥今回の絵は、いままでと違ってて、
耳がはえた女の子と、
耳がついた帽子をかぶってる女の子の
ふたりが登場する絵がメインなんです。
- ───
- はい。
- kaho
- 帽子をかぶってる方がわたしです。
人間のわたしが、
耳がはえてる女の子に
憧れたり嫉妬したり羨んだりしている感じ。
- ───
- ああー。
- 福田
- ほおー。
- ───
- 帽子をかぶってるのがkahoちゃん。
- kaho
- はい。
- ───
- 耳がはえているのが、
kahoちゃんが憧れる対象。
- kaho
- そうですね。
- 耳がはえている女の子は、
どんどん成功していってる友だちとか、
じぶんがなりたい容姿を持ってる人とか、
そういう人です。
▲ 左の女の子はkahoさんの憧れ。右がkahoさん自身。
- 福田
- ‥‥おもしろいですねえ。
- kaho
- 憧れの子を見ると
焦る気持ちが大きくなるけど、ゆっくり。
- ───
- 落ち着いて、歩く速度で。
- kaho
- そういう感じです。
- ───
- ‥‥福田さん、出ましたね。
- 福田
- 出ました。
これはすばらしいです。
- ───
- 今のお話を聞いていただけで、
実際の絵を見たときにどれだけおもしろいか。
- 福田
- がぜん興味が湧きましたね。
- うーん、
自画像とは思わなかったなぁ。
- kaho
- じぶんの気持ちがモデルっていう感じです。
- ───
- じぶんの気持ちがモデル。
いい言葉がどんどん出てきます。
- 福田
- すごい。
- ───
- いやー、まいりました。
「自信をもつべき」とか
「ありのままでいい」とか、
「イラストレーターかアーティストか」とか、
「焦るのは自信がないからでしょう?」
などと、おじさんたちが
さんざん話していましたけど、
「andante」というテーマの作品に
それらがぜんぶ入っていたという。
- 福田
- それに気づかんと、
絵の前でいきいきとしゃべってました(笑)。
- ───
- ほんとにねぇ‥‥。
- 福田
- ぼくなんかよりも、
よっぽど考えて絵を描いてますよ。
- kaho
- そんなことは(笑)。
- ───
- わかりました。
ありがとう、kahoちゃん。
いいお話が聞けました。 - 最後に、個展の開催に向けて
これは言っておきたい
ということはなにかありますか?
- kaho
- きょうのこの場もそうですが、
みなさんが来てくださって、
先輩たちも見守ってくれてて。
いろいろな人が協力をしてくださるので、
責任をもってやり遂げたいです。
- ───
- はい。
がんばりましょう。
- 福田
- うれしいし、しあわせですよね。
ほぼ日の人たちが、こんなに助けてくれる。
描くときはひとりでも
ひとりじゃなかったって思えますよね。
でも、この状況は
kahoちゃんがもってる絵の力が
連れてきたものです。
応援したくなる力。
あと、キュートな人柄(笑)。
- kaho
- ありがとうございます。
- ───
- ‥‥だいぶ、いい感じで、
ミルフィーユの薄皮を重ねるように、
自信がついてきたかも‥‥?
- kaho
- いや、自信はちょっと‥‥。
- ───
- わかりました、ありのままで!
- 福田
- ありのまんまで!
- ───
- 個展「andante」、たのしみにしています。
(個展、来てね! インタビューを終わります)
2025-10-23-THU
