TOBICHI京都ではたらくスタッフ、
kahoさんがTOBICHI京都で個展をひらきます。

kahoさんは、絵を描くアーティスト。
個展のタイトルは「andante」です。

この個展の開催を記念して、
kahoさんへのインタビューを行いました。
場所は、kahoさんのいつもの職場、TOBICHI京都。
ただ、いつもと違うのは、
kahoさんのとなりにイラストレーターの
福田利之さんが座っているということです。

kahoさんにとって福田さんは、
あこがれのイラストレーターであり、
学生時代に客員教授として
絵を教えたくれた先生でもあるのです。

じゃっかん‥‥いや、かなり緊張するkahoさんに
なんとかリラックスしてもらおうと、
福田さんと進行役のほぼ日・山下が
ついついしゃべりすぎているインタビューです。
ですが、すこしずつkahoさんは、
じぶんの言葉を見つけて話してくれます。
ゆっくりと、今回の個展に対する思いが
浮かび上がってくるやりとりを、お読みください。

>kahoさんプロフィール

kaho(かほ)

アーティスト。

大阪芸術大学卒業。
モルモットとking gnuが大好きです。
ペンとインクで絵を描いています。

2022.2個展「つよがり」アイギャラリー
2023.8個展「kaho Solo Exhibition」ギャラリー住吉橋
2023.12個展「I MY ME MINE」ART HOUSE
2024.8 個展「今日あの子は。」unimocc
2024.12 個展 「spring ephemeral」ART HOUSE

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>福田利之さんプロフィール

福田利之(ふくだ としゆき)

イラストレーター。
1967年、大阪生まれ。
エディトリアル、装丁、広告、
ムーンライダーズやスピッツのCDジャケット、
絵本、テキスタイルなどなど、
さまざまなビジュアル表現を手がける。
「ほぼ日」では、読み物、商品問わず、
様々なコンテンツにご登場いただいています。

『あのこはね』(ポプラ社)、
『くりさぶろう』(ケンエレブックス)、
『ぼくはうさぎ』(あかね書房)、
『福田利之作品集』
『福田利之作品集2』
『福田利之作品集3』(すべて玄光社)
など、著作物は多数。

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第1回 全身イラストレーター

───
かほちゃん、よろしくお願いします。
kaho
よろしくお願いします。
───
いつもは「かほちゃん」と呼んでいて、
音としては同じなのですが、
アーティスト名の表記は英文字で。
kaho
はい。
───
記事になるときには、
「kaho」という表記にしておきますね。
kaho
ありがとうございます。
───
そして、この場所、
kahoちゃんがいつもはたらいている
「TOBICHI京都」でお話を聞いていますが、
kahoちゃんのとなりには、
福田利之さんがいらっしゃる。

福田
ねえ(笑)、なぜかぼくが。
───
順を追ってご説明しますね。
kahoちゃんは、2024年の1月から
「TOBICHI京都」で働いてくれています。
彼女は絵を描くアーティストでもあります。
その彼女が「TOBICHIの京都」と、
それから「TOBICHI東京」でも
個展をひらくことになりました。
福田
はい。おめでとうございます。
───
ね、おめでとうございます。
ほぼ日のリアルスペースのスタッフさんには
優秀な方が多くて、
これまでにも正木ゆうひさんと、
蓮尾佳由さんという
クリエイターさんがTOBICHIで個展をひらいて、
その度にインタビューを行ってきました。
いままではぼくが作家さんに
お話をうかがっていたのですが、
今回はなんと福田利之さんのご登場です。
「フィーチャリング・福田利之」です。
福田
フィーチャリングってなんですか?  
───
「すばらしいゲスト」というようなことです。
福田
ありがとうございます。
でも、
なんでやねんと思われていると思います。

───
なんでやねんを解消するためにも、
おふたりのご縁を話してもらえますでしょうか。
福田
ご縁。
───
どういったご関係なのか。
福田
ご関係。
それは、あれです。
「大阪芸術大学」というところで
客員教授でちょっと教えるっていうか、
まあにぎやかしのような授業を
やってるんですけど、
そこのクラスにkahoちゃんがいました。
───
たくさんいる生徒さんのひとりだった。
福田
そうです。
でも、ちょっと気になる存在でした。
───
お、そうでしたか。
福田
いまもそうなんですけど、
あんまりしゃべらないんですよ。
しゃべらなかった、ほんとに。
‥‥ね?(kahoさんに)
kaho
‥‥‥はい。
───
そうだったんですか? 
kaho
福田先生は、先生である前に
好きな作家さんのひとりでしたので‥‥
どうしても、緊張‥‥。

福田
え。
緊張しててしゃべらなかったんですか? 
kaho
そうです。
先生の講義を受ける前から画集を買ってました。
それで、画集の最後にあるプロフィール見たら
じぶんの学校で客員教授していると書いてあって、
わたし、めちゃくちゃ驚いたんです。
福田
はあー。
───
それで福田さんの講義を受けることになった。
kaho
はい。
───
そういうつながりがあるので
今回はkahoちゃんへの
お祝いのように福田さんをお招きしたのですが、
結果的には‥‥。
福田
ねえ。
───
かなり緊張させてしまいました。
kaho
‥‥すみません。
福田
学校で話すときもこんな感じなんです(笑)。
ほんとにしゃべってくれなくて。
最初の印象としては、
「自信がないのかな?」っていう感じでした。
───
それは何年くらい前の話ですか? 
kaho
4年前とかです。
福田
絵を見せてもらったらすごくいいんです。
なのに自信がなさそう。
周りにいる生徒たちにも
いい絵を描いてる人がいたんですけど、
そのなかでもいちばん自信がない感じでした。
kaho
‥‥はい。
福田
ぼくは、すごくおもしろいと思ったので、
「いや、このちょうしで描いてったらいいよ。
 もっと自信をもって」
って話したのを覚えてます。
キラリと光る個性があって。
で、なによりやっぱりいちばん大事な、
「その絵を描くのが好きだ」
っていうのがもう見てたらわかるんです。
───
絵を見ればわかるんですね。
福田
わかるし、描いてるところを横で見てたら
ほんとに一心不乱に描いてる感じがしました。
───
なるほど。
kahoちゃんはその当時、
福田先生から「いいと思うよ」って
言われたことは覚えてますか? 
kaho
覚えてます。
───
それはどういうふうに受け止めました? 
kaho
‥‥まさか好きな作家さんから
アドバイスがもらえると思ってなかったので、
めちゃくちゃうれしかったです。
「自信を持ちなさい」と言われたのも覚えてます。
福田
そんなに自信がなかったの? 
kaho
なかったです。今もないです。
福田
今もない(笑)。
うーーん、でもねぇ、
さっきも言いましたけど
うまい人はたくさんいるんだけど、
彼女の場合はとにかく「好きだ」
っていうところが見えたんで、
この子はいける、伸びる。
と思ったんです‥‥よ?(kahoさんを見る)
kaho
ありがとうございます。

───
先生からしてみると、
「好きだ」はやはり大切なものですか。
福田
もう、それしかないんじゃないですか。
───
若き日の福田さんもそうだった。
福田
ぼくはもうほんとに
いろいろなことがポンコツでしたけど、
絵だけは描いてたし、苦にならなかったです。
あ、最近思ったんですけど‥‥
って、ぼくの話になったらだめですね。
───
いや、いいです、話してください。
福田
最近、気がついたんですよ。
ほんと最近です。
むかし、『全身小説家』
っていう映画があったじゃないですか。
───
ドキュメンタリーのような。
小説家の井上光晴に密着した。
福田
「存在そのものが小説家、骨の髄まで小説家」
っていう。
───
それである、と。
福田
ご飯食べてても、散歩してても、
生活がイラストレーション。
ぜんぶつながってたんです。
ご飯のときには箸やおかずの
並べ方のレイアウトから
インスピレーションがわくこともあるし。
お風呂入ってれば天井のシミを見て
「おもしろい形だなあ」とか。
「お風呂あがったらこれ描いてみよう」
っていうふうに。
そういうのを繰り返して、今もう58年間。
───
すごいですね。
福田
そんなに長いことやってて最近やっと、
「あ、そうだな」と思ったんです。
生活ぜんぶイラストだ、と。
周りを見ても、
活躍している人はみんなそうだと思います。

───
ずっと自然にそうしていたから、
気づかなかった。
福田
そうなんだと思います。
───
kahoちゃんはどうですか? 
今のを聞いてどう思いました? 
kaho
天井のシミから
インスピレーションを得ることがなくて‥‥。
福田
(笑)
───
(笑)とはいえ、
絵のことはいつも考えてますよね。
kaho
考えてます。
───
でも、自信はない。
kaho
自信は‥‥そうですね。
───
‥‥先生(福田さんに)、
先生からアドバイスはないですか。
彼女が自信を持てるような。
福田
アドバイス?
───
はい。
福田
やっぱり、モチベーションづくりですかね。
なんかこう、
ちょっとごほうびがほしいじゃないですか。
なんでもいいんですよ。
人に見てもらって褒められるとか。
個人的なことでもいいんです。
あの人によろこばれたい、とか。
───
kahoちゃん、
今なにかモチベーションはありますか? 
目の前のニンジンのようなこと。
kaho
モチベーション‥‥。
福田
だから、ほら、
ここでの展覧会ですよ。
───
ああ‥‥。
じぶんたちから言うのもあれですけど、
今のこの状況、
先に個展があって、
それについてのインタビューを
福田さんといっしょに受けているって、
なかなかうれしい感じではないでしょうか。
kaho
ありがたいです。
あの‥‥
先生はたぶん覚えてないと思うんですけど、
最後の授業のとき生徒みんなに向けて
「いつかいっしょにお仕事できる日を
たのしみに待ってます」
とおっしゃっていて‥‥。
───
いっしょに仕事をしてますよ、今。
kaho
はい。
うれしいです。
───
じぶんが働いている場所での展示ですから、
とくべつだと思うのですが、
意気込みなどは、いかがでしょうか? 
kaho
‥‥意気込み。
───
ええ。
kaho
‥‥‥‥。
───
ゆっくり答えてください。
kaho
‥‥働いてる場所なので思い入れは強いですし。
───
はい。
kaho
‥‥きょうもみんなが見守ってくれてて‥‥。
───
先輩たちが応援してます。

kaho
‥‥‥たくさんの人たちが‥‥。
───
うん。
kaho
‥‥‥‥。
───
‥‥大丈夫。
ゆっくり。
ゆっくり考えて。
kaho
‥‥‥だから(声がつまる)。
───
どうした? 
だいじょうぶ、大丈夫だから(笑)。
福田
学校でも、2、3回泣いてますよね(笑)。
───
ど、どうしよう。
‥‥あのねkahoちゃん、大丈夫だよ? 
福田
ぼくがじぶんの話ばっかりしたのが
いけなかったです。
───
や、そういうことじゃないでしょう。
‥‥kahoちゃん、大丈夫? 
福田
でも、こういう気持ちを持っているのは、
すごくいいことだと思います。
───
落ち着いた? 
ちょっと、いったん落ち着こうか。
福田
水飲もう。
お水とか、大丈夫ですか? 

(おじさんたちあたふたしつつ、つづきます)

2025-10-21-TUE

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