ほぼ日

この写真展の会場内の写真は、
基本的に時系列で並んでますか？

西澤

ざっくりとですけど、なんとなく撮影した順番に、
会場をぐるっと１周している感じです。

ほぼ日

いちばん最初にご自分で取材して撮影したのは
どの現場ですか？

西澤

それは、首都高さんですね。

ほぼ日

知らなくて、かっこよさそうだって
思ったんですよね、おそらく。
どんな取材依頼をしたんですか？

西澤

ちょっと順番はあんまり正確じゃないんですけど････、
今でいう中央環状線っていうのがあるんですけども、
そこで大規模な工事をやっているという話を誰かから聞いて、
首都高さんへ取材をお願いすることにしたんですよ。

実際に何をやっているかは情報がないので、
近くへ見に行ったんです。
看板にも、工事の現場の方が撮った
写真とかが貼ってあるじゃないですか。
あれを見ても、なんかね、よくわかんないんですよ。
まあちょっと行ってみようかと思って行ったら、
この写真のようなことになっていて。
またそこで「おおー」って思うわけですよ。

ほぼ日

その取材依頼は苦労されました？

西澤

首都高さんは割と苦労は
しなかったかもしれないですね。

ほぼ日

へぇー。「写真家の西澤です」と
アプローチしたわけですよね。

西澤

首都高の担当の方が、
共同溝でぼくが撮ったことを、たまたまご存じで。
「あのときのあいつが来た」みたいな、
確かそんな感じで受け取ってくださったと思います。

ほぼ日

あ、そうだったんですね。

西澤

ええ。まあ工事現場同士じゃないですか。

ほぼ日

まあまあ、そうですけど（笑）。

西澤

だからどこかでご覧になってたんでしょうね。
「あ、あいつか」みたいな。

ほぼ日

「人もたくさん呼んだ写真」っていう感じで
有名になってたかもしれないですね。

西澤

たぶん、ええ。

ほぼ日

ちょっと細かい話ですけど、
依頼はメールでされたんですか？

西澤

当時はたぶん電話だと思います。
最近はメールベースも多いですけど、
取材先の中には電話番号しか
書いてないところもあるんです。
それは、もう、電話するしかないですもんね。

ほぼ日

そうですね。

西澤

あれ、いちばん怖いですよね。
誰が受話器を取るかによって
勝負の分かれ目になっちゃうっていう。恐ろしい。

ほぼ日

本当に。それで、一発でいけちゃったんですか。

西澤

ラッキー。運がよかったんでしょうね。

ほぼ日

そんな１枚目があったんですね。
では、ちょっと移動しましょう。

西澤

ああ、はい。どっちのほうへ？

ほぼ日

ロケットのほうへ行こうかなと思うんですけど。

──移動をはさみました──

西澤

････あ、照明はたぶん
ここに来た方がいいんじゃない？

ほぼ日

（笑）。プロが。

西澤

あっちだと、サイド光になりすぎるもんね。
そうすると、そっちのカメラで光っちゃうのかな？　
大丈夫か？　うーん、難しいねえ。

ほぼ日

光りますね。どうしようかな。
もうちょっと上に逃げられそうです。

西澤

ライティングは結構、大変なんですよ。
あ、うん、そのぐらい行けば
もう違和感あんまりないんじゃないの？

ほぼ日

ああ、いい感じ、いい感じです。

ほぼ日

ありがとうございます（笑）。

西澤

いえいえ。

ほぼ日

さて、整いました。
20年間の撮影でいちばん苦労したのは、何ですか？

西澤

ロケット。これ。
これは「イプシロン」っていう
固体燃料ロケットの1号機を撮影したんです。
この７年ぐらい前に、
最初は「H2B」か何かをお願いしたのかな？　
で、断られて。
またその２～３年後にお願いして、断られて。
３回目でようやくオッケーが出たという感じです。

ほぼ日

ロケットを何かしら撮りたかったんですか？

西澤

そう、ロケットであれば、
とりあえずなんでもそのときの機種でよかったんですよ。
たまたまオッケーが出たのは、
そのときの最新鋭の機種だったっていうことですね。

ほぼ日

ちょっと話がずれるんですけど、
ロケットは「見えて」ませんか？

西澤

この写真は完成形なんですけど、
取材する過程では、普段は見られない
町工場で部品をつくってるところから、
組み立ての過程や、テストの過程やらも撮って、
で、ここに来てるんですよ。

ここに並んでる写真は50枚ちょっとなんですけど、
その後ろには猛烈な数の写真があって、 　
泣きながら厳選したのが並んでるんです。
ちなみに、この射場の周りは入れませんよ。

ほぼ日

あ、立ち入り禁止ですね？

西澤

そうそう。

ほぼ日

どうやって撮ったんですか？　
そんな立ち入り禁止の中。

西澤

打ち上げの当日は、
半径２、３キロメートルぐらいは立ち入り禁止で、
かつ電波も飛ばせないっていう状況なんです。
当然、コードなんかも這わせられないので、
音センサーか、光センサーか、
あとはタイマーで撮るしかなくて。
ロケットの打ち上げは時間がズレることが多いので、
タイマーはリスクが高いじゃないですか。
じゃあ音センサーか、光センサーかということになって、
ぼくは音でシャッターを切る装置を
前の日にカメラにくっつけて、
ここにセットして、それで撮ってます。

ほぼ日

前の日だったんですね。

西澤

当日はさすがに近づけないですもん。