フォークシンガーの
森山直太朗さんが、全国各地の
「商店街」を巡るという試みを、
ライフワークの一つとしてはじめたそうです。
直太朗さんが2025年に楽曲「さりとて商店街」をリリースし、
今年から同名のポッドキャストも開始されました。
商店街では、いまどのような変化が起きているのか、
「古き良きもの」と新しいカルチャーの融合を
実際に見て、体験されています。
それは、私たちが取り組んでいる
「ほぼ日GO!」と共通点が多いかも‥‥!
ということで、直太朗さんに同行して、
地域のおもしろい人、ユニークな取り組みを
紹介していくことにしました。
不定期連載です。


※ポッドキャスト「さりとて商店街」ほんまち商店街で
昔ながらと新しい風にふれる旅 Part1 Part2と
連動しています。合わせてお楽しみください。

 

ほぼ日GO
ほぼ日GO!とは、
ほぼ日が、日本全国の地域の方々と
幅広くて自由なコンテンツを作り、
更新していく場所です。

>森山直太朗さんプロフィール

森山 直太朗(もりやま なおたろう)

1976年4月23日東京都生まれ、フォークシンガー。2002年にメジャーデビュー以来、独自の世界観を持つ楽曲と唯一無二の歌声が幅広い世代から支持を受け、定期的なリリースとライブ活動を展開し続けている。近年は俳優としても活動の幅を広げる。
昨年10月から全国を旅するツアーを全国各地で56公演行った。今年10月からは自身初となるスタンディングツアーを全国のZeppにて行う。

文・藤田亜紗美

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──
15年前に「さりとて商店街」が生まれて、
去年リリースされたというお話だったんですけど、
その眠らせていた時間は、
どういう感じだったのでしょうか。
直太朗
不思議なもので、曲を作ったときは、
それを「曲」だと考えてなくて、
ただ目の前にある景色とか、
景色の向こうにある感覚みたいなものが
エネルギーのようなものとして
あっただけなんです。
曲のラフスケッチができたとき、
もちろん「歌おう」とは思うんですが、
まだ作品に対して自分の営みが
追いついていないという感覚もありました。
まあ、タイミングって言えばそれまでの話なんですが、
自分自身の生活だったり、価値観だったりが
追いついたときに、はじめて曲と
合流できる、みたいな‥‥。
それが、たまたま去年だったということです。

──
いろんなことが合致したのが去年だった。
直太朗
そう。もちろん十何年の中で、
微調整を重ねてはいるんです。
こんなにじっくり曲と関係性を
深めていける曲はめずらしいですね。
パッと出して歌う、というのが
商業音楽の常だとは思うんですが、
これだけ時間をかけたのは、
多分それぐらいの時間が
必要だったんだろうなと思います。
曲自体はすごくシンプルなんですが。
──
その間も、100ヵ所以上で公演されたり、
今もいろんな場所を巡られたりしていますよね。
たくさんの景色を見て、その曲と、
表現したいものが合っていった‥‥
という感じでしょうか?
直太朗
そう、なんか、最初は、
あまり興味ないなと感じた人でも、
5年も10年も近くにいると、
なんか好きかも‥‥みたいな気持ちになるじゃないですか。
「さりとて商店街」はまさにそんな曲でしたね。
何かのタイアップになっているわけではないんですが、
普遍的なテーマを持った曲だし、
じっくり伝えていきたいです。
──
はじめはタイトルが違った、ってお話も。
直太朗
そうそう。最近「さりとて」っていう
言葉がついたんです。
それまではまた全然違う言葉だったんですよ。
「寂れた商店街」っていう曲だったのかな。
なんか、ただ悲しいだけの曲で、
それは自分が見たままの商店街だったんですけど、
「もっと奥にあるんだよな」って思ってたんです。
──
奥に。
直太朗
そう。だって、寂れたくて寂れたものじゃないから。
時代の流れでそうなってしまったわけで。
今日もこの商店街のフランス洋菓子屋さんに、
この地域で育った方が
久しぶりに帰って立ち寄った、という瞬間を見て、
たかが商店街、されど商店街というか、
いろいろあっても、ここなんだよな、
という感覚があって。
なんやかんやで日本の高度経済成長、
いい時代みたいなものの象徴でもあるし。
──
そうですね。
直太朗
都心の一等地に新しいマンションが建ったり、
でっかい駐車場ができたりするのを見ると、
「これ以上、新しいものを建てる必要ってあるのかな」
と思う感覚って、どこかにないですか?
資本社会の中で、人間の欲が
行き着いた象徴でもあるんですけど、
その価値観だけで幸福度が測れるのかなと。
人間って、どんなに小さくてもいいから、
コミュニティを持って、時代と向き合って、
感性を育てていくことが大事じゃないのかなと。
そういう意味では、商店街には、
昔ほどの繁栄はなくても、商いもあって、
社会もあって、それぞれの尊厳もあって、
「ちょうどよさ」があると思うんです。
そこで新しいカルチャーをみんなで作っていくほうが、
大きなショッピング施設を作るよりも、
建設的でクリエイティブだと思うんですよね。
──
そういう感覚が、あのミュージックビデオに
なったんですね。すごくおもしろかったです。
直太朗
ありがとうございます。

▲ミュージックビデオ(MV)の一幕。 ▲ミュージックビデオ(MV)の一幕。

──
ちんどん屋さんみたいな、
お祭りのような楽しさと、物悲しさとが両方あって。
でも「続いていくんだな」という感じもあって。
直太朗
そうなんです。音楽自体は、
カントリーやブルース、ブルーグラスの
スタイルを取りながらも、
MVは、まさに今おっしゃったように、
ちんどん屋さんスタイルなんですよね。
おちゃめで、どこかおどろおどろしい感覚って、
とっても「メイド・イン・ジャパン」だなと思います。
──
はい、伝わってきます。
直太朗
「なんで音楽やってるんですか」
という質問もよく受けるんです。
さきほど、生きている実感がほしいと
言ったこととも似通っているんですが、
自分の根底にあるアイデンティティを
失わずにいるために、
音楽や舞台表現をやっている気がします。
それと、ぼく自身の経験でも、
近所のおじさんに怒られたこととか、
他人様の家族はこうだけど、
ぼくの家族はこうだなっていう対比も含めて、
今回のMVにあるくらいの距離感で
周りの人を見てきた経験が、
ものづくりの肥やしになっているような気がして。
──
ああ。
直太朗
今日も、はじめて会った人に、
ちょっと踏み込んで失礼なことを言ってみたら、
実は全然大丈夫だった、みたいな。
この年齢になっても新しい経験をさせてくれて、
やっぱり「商店街ならでは」だなと。
──
どういう経緯で、ポッドキャストを
はじめることになったんですか?
直太朗
ぼく、ライブで前日入りすると、
だいたい商店街を巡るんです。
それで、そのへんの飲み屋に入って、
大将と少しおしゃべりをする‥‥
みたいなことなら、ライフワークの延長線上で
続けられるかもしれないってことで。
ポッドキャストにするかYouTubeにするかの
議論はあったんですけど、
音で楽しむことでより
想像できるかなと思って、
音声メディアを選んだんです。

──
たしかに、聴く側もすごく想像がふくらみますし、
森山さんが見た世界を見てみたいって思いますね。
私も過去の放送を聴いて、ついカレー
(※東京の西原商店街にある
「カレーの店 スパイス」のカレー)
を食べに行ってしまいました。
直太朗
本当ですか?
ありがとうございます。
結構多かったでしょう。あそこのカレー。
──
びっくりしました。
あと、森山さんだからじゃなくて、
お母さんが他の方にも同じように接されていて、
私にも同じくらいの距離感で接してくださったので、
本当にうれしかったです。
直太朗
「いらっしゃい」って言ってね。
うれしいです。
あと、テレビ番組やYouTubeみたいになると、
映像だし、皆さんどうしても
緊張されるじゃないですか。
商店街で、どんな人が暮らしているのか、
ライブ感を持って伝えるためには、
音声メディアのほうが、
カメラで映されている意識がないぶん、
言葉もダイレクトだったりして、
いいかなと思ったんです。
──
商店街という場所で、
その方たちの日常の話を聞くという形だと、
音声メディアはすごく合ってると
今日改めて思いました。
直太朗
そうですね。
──
チームの皆さんの、フットワークの良さも
すばらしいですよね!
直太朗
ぼくたちも手探り状態ではあるんですけど、
スタッフと仕事をしている、というよりは、
みんなと旅をしている感じに近いです。
同じ心拍数を感じられる人と、
共有できる景色を増やしているような
イメージがありますね。
──
これから先も、また商店街を
巡っていかれると思いますが、
今後のことで何か決まっていることはありますか?
直太朗
もう、町の数だけ商店街があるし、
そこにいる人の数だけドラマがあるので、
時間の許す限りアグレッシブに、
いろんな場所に行ってみたいです。
やっぱり、ぼくらができることは、
お祭りの余興とかそういうものだから、
音楽を媒介にして、盛り上げたいですね。
今日、「昨日が夜市だった」という話も
ありましたけど、
そういうお祭りにも出てみたいですよね。
「さりとて商店街」とか歌いに行きたいなぁ。
──
これから新しいコラボレーションが
生まれることもありそうですね。
直太朗
そうですね。
これは期間限定のプロモーションとかじゃなくて、
ライフワークの延長ですから。
いつまでできるかわからないですが、
地域の人たちと、有機的に生まれた関係の中で、
「これをやったらおもしろそう」という感じで、
楽曲を通して、物語みたいなものが
生まれていったらいいなと思います。
──
次の有機的な出会いを私たちも楽しみにしつつ、
引き続き追わせていただけたらと思います。

直太朗
もう、いつでもいらしてください。
すごく楽しかったです。
──
私たちもすごく楽しかったです。
ありがとうございました!

(このインタビューの後、 「さりとて商店街」と「ほぼ日GO!」の コラボレーションによる 不定期連載が決定しました。 全国の商店街などをゆっくり巡っていきますので、引き続きお楽しみに!)

2026-09-19-SAT

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