家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
ほぼ日の学校 オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。

オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。

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no.33

『どうぶつ家族』


岩合光昭

元気な地球に
元気などうぶつ家族。


『どうぶつ家族』
岩合光昭
クレヴィス 1800円

動物写真家・岩合光昭さんの写真は、
『地球動物記』『スノーモンキー』
『ネコライオン』『パンダ』『島の猫』などなど、
いずれも傑作ぞろいですが、
なかでも、特にオススメしたいのが、
この『どうぶつ家族』です。

アフリカの猛獣から近所の猫まで、
岩合さんがとらえる動物たちは、
岩合さんと「会話」しているのではないかと
疑うくらい表情ゆたかです。
動物同士の「会話」まで聞こえてきそうなほど、
人臭いというか……

(c)Mitsuaki Iwago 
ニホンザルの子は母親の口元に注目しています。
地獄谷温泉・長野県 (c)Mitsuaki Iwago  ニホンザルの子は母親の口元に注目しています。 地獄谷温泉・長野県

いったいどうすればこんな写真が撮れるのでしょう?
『どうぶつ家族』のあとがきに、
岩合さんはこう書いていらっしゃいます。

「自然と野生動物について語ろうとしても
ぼくはほんの少しのことを知るだけです。
謙遜ではなく、出来ることは彼らを
見続けることです。ただ、見ているのは
こちらばかりではなく、実は野生動物がとても良く
ヒトを見ていることにやがて気がつきます。
つまりヒトも見られているのです。(中略)
野生動物たちに見られていると感じ始めると、
こちらの行動にも気を配らなければなりません。
もし、対峙する野生動物が子であって
ヒトを見るのが初めてだとしたら
余計に神経を使います。つまりヒトとして
恥ずかしくないように真摯に対応する
努力をします。そのことが自然に対しての想いへと
結びついていくような気もしています。
野生動物同士であっても当然ですが
よく見ています。親子であったり、
オスとメスであったり、兄弟であったり、
グループであったり、群れであったり、
捕食者と獲物であったり、そしてそこに
何らかの感情が反射して交差するのを発見したときに
シャッターチャンスが訪れます。
それはこちらの意思によって考えた
構図というものではありません。
まさに自然のなかの一瞬なのです」

岩合さんの撮影の秘密の一端が
見えるような気がします。
だからといって、岩合さんのような
写真が撮れるわけではありませんが。

『どうぶつ家族』には、
こんな風にして岩合さんがとらえた
自然のなかの貴重な一瞬が詰め込まれています。
恋をささやくセキセイインコ、
連なってカナダの海を泳ぐホッキョクグマの親子、
気持ち良さそうにサーフィンするアシカ、
乾燥する大地で唾液を子に分けるカンガルー、
危険な大海に泳ぎだすアオウミガメの子……。
とりわけゆたかな物語を感じさせるのが、
親子の写真です。

(c)Mitsuaki Iwago 
狩りに出ていた母親が乾いた川床に隠している
子たちのところへ帰ってきます。
セレンゲティ国立公園・タンザニア (c)Mitsuaki Iwago  狩りに出ていた母親が乾いた川床に隠している 子たちのところへ帰ってきます。 セレンゲティ国立公園・タンザニア

「ダーウィンの贈りもの I 」第12回の
講師をつとめてくださった岡ノ谷一夫さんは、
「ダーウィンは時々動物を擬人化しすぎる」と
愛を込めておっしゃいましたが、
岩合さんの写真をながめていると、
擬人化したくなるのも無理ないなあと
思ってしまいます。

ただ、19歳のときに訪れたガラパゴス諸島の
自然に圧倒されて動物の写真を撮り始め、
半世紀以上動物たちの姿を追ってきた岩合さんは、
生き物たちをロマンチックにとらえたりはしません。

(c)Mitsuaki Iwago アカカンガルーの子が生きていけるかどうかは母親についていく体力で決まります。スタート国立公園・オーストラリア (c)Mitsuaki Iwago アカカンガルーの子が生きていけるかどうかは母親についていく体力で決まります。スタート国立公園・オーストラリア

母親についていけなければ、
生き延びることはできないという
厳しい現実もそこには映し出されています。

家で過ごす時間が長くなるいま、
遙か彼方の大地で必死に生きる「どうぶつ家族」に
想いをはせてみるのも一興ではないでしょうか。

岩合さんはこうも書いていらっしゃいます。
「元気な地球があれば元気などうぶつ家族と
今日もどこかできっと出会えるでしょう」
ヒトだけでなく、動物たちもどこかで
元気で、幸せでいますように。
そう祈りたくなる一冊です。

(c)Mitsuaki Iwago  家族であるもう1頭のメスから狩りに誘われますが、子を遊ばせているメスはためらっています。セレンゲティ国立公園・タンザニア (c)Mitsuaki Iwago  家族であるもう1頭のメスから狩りに誘われますが、子を遊ばせているメスはためらっています。セレンゲティ国立公園・タンザニア

(お知らせ)

南アメリカに広がる世界最大級の湿原
パンタナールの多彩な生き物をとらえた
岩合光昭さんの新しい写真集
『PANTANALパンタナール』が発売中です。

(つづく)

2020-06-02-TUE

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