家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
無料公開中の
ほぼ日の学校オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。

オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。

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no.22

『薬屋のひとりごと』


日向夏/倉田三ノ路

「後宮」という一大ジャンル。

天皇や皇帝の何人もの妻が住む場所が「後宮」ですな。
基本的にはその妻たちも天皇や皇帝に使える役割で、
位があり建物や部屋をもらって住んでいて、
天皇や皇帝はそこに通いでやってくる、
というシステムが営まれている場所です。
しつこく「皇帝」と書いたように、
もともとは中国にあった制度で、
のちに日本はそれを手本として導入したものです。

オンライン・クラスには
「たらればさん、SNSと枕草子を語る。」という、
その後宮という場所で生まれた
『枕草子』についての特別講義があります。
たらればさん(@tarareba722)は、
ツイッターで18万以上のフォロワーを持ち、
幅広いジャンルについてのツイートをされますが、
特に『枕草子』や『源氏物語』のものが
特に楽しいと感じた学校チームが
「特別講義」をお願いしたという次第です。
入り口がSNSという身近さなので、
スルッとはいっていきやすい、すばらしい講義でした。

さて、で、ですよ。
この「後宮」という場所。
非常に魅力的な設定の場所で、
『枕草子』以外にもここで生まれた作品も
たくさんありますし、
ここを題材や舞台にした現代の作品も
どっさりあります。
今日はそのうちの一つを紹介しようと思います。
私がその作品を知ったきっかけは、
「次にくるマンガ大賞 2019」の
「コミックス部門第1位」になったということが
観るともなく観ていたテレビから聞こえてきて、
ちょうどスマホを手にしていたので、
気まぐれで全巻を購入して
ダウンロードしてみたのでした。


「薬屋のひとりごと」
小学館 607円(税込)

この作品は、もともとは「小説家になろう」という
投稿サイトに連載されていたもので、
そこで「おもしろい」と話題になりまして、
のちに「主婦の友社」の
いわゆるティーンむけの文庫にはいり、
さらにそれを原作とした
マンガが2種類出版されています。
マンガを購入されるときは混乱するので要注意です。
ちなみに、上の画像はマンガの
「サンデーGXコミックス版」のほうの
1巻の表紙です。

こっちが、「ビッグガンガンコミックス版」。

「薬屋のひとりごと」
スクウェア・エニックス 618円(税込)

で、文庫版

「薬屋のひとりごと」
主婦の友社 638円(税込)

これ系の絵は無理、という人もいるかなと思うのですが、
まあお待ちあれ。
趣味で無理することはないので
強くは引き止めないわけですが、
少々もったいないのではないかと。
ここはいっちょう、
警戒心よりも好奇心を多めにして
お付き合いいただけたらうれしいです。

あらすじは、近代にならんとしている
中国の王朝のどこかの宮廷に、
花街で薬剤師をしていた主人公が
街で人さらいにあって、
宮廷の下女になり、陰謀渦巻く後宮で、
持っている薬系の知識を使って事件を解決、
というもの。

舞台装置と設定が本当にうまくできています。

まず、後宮は事件が起こりがち。
なぜならば、奥さんno.1の座を射止めれば、
一族郎党優遇されて、
富と権力を手に入れることができるわけで、
そのために陰謀が渦巻くという前提があります。
そこに、毒と薬の知識を持った、影がなくもない、
なんか大きな背景も背負ってそうな
ぱっとしないルックスにみせかけている主人公。
そして、そこに絶世の美人も顔負けの面相の
偉そうな宦官、
実は高貴な身分の兄さんが事件を持ってくる。

なにこのキラキラの設定! 『源氏物語』やん!
マンガで読む源氏物語の『あさきゆめみし』なんかで
乙女ファンタジー鍛えられてるんだったら、
たまらないやん!
せっかくだから、この設定、
(いい年してるけど)醒めちゃうより突入したほうが、
たのしいやん!

ということで、あっという間にマンガは読了。
もっと読みたくなって、
物語が先行している文庫版も読破。
さらに物語が先行している投稿サイトにも
手を出す始末でした。
こんなにちゃんと読めるということは、さては‥‥。

そうです、事件のトリックと
設定のディテールがしっかりしているからです。
作品の構成要素として、事件が起こるなら、
事件がしっかりしていなければなりませんが、
ここは問題ありません。
そして、通奏低音のようにひびく、事件の背景にある
物語のうねりもちゃんとあります。
中国の宮廷の仕組みや国の支配の仕組みなども
ちゃんとしてるなーという印象です。
主人公たちは宮廷で過ごすほかにも、
北方にも遠征にいくし、
ベトナム風の南にも、
ウイグル的な西域にも出張ります。

この作品で中国歴史世界の雰囲気を
ざっくりつかんでおくと、
他の歴史背景作品を手に取るとき、
かなりハードルが下がるんじゃないでしょうか。
こういう、お得感があるマンガ、最高!
高校のときに読めてたら、世界史の中国の歴史の部分、
もうちょっと興味をもって覚えられたかもしれません。
「アルプス一万尺」で、
中国歴代王朝を覚えるなんて不毛を
しなくてもよかったかも!

そんなこんなで、夢中になりすぎて、
いったん連載の先頭においついてしまい、
さびしくなったので、
ほかにも「後宮」ものはないかと
Amazonで検索してみたら、
どっさりでてきました。
正統派からファンタジーからエロまで。
小説、マンガもさることながら、
もちろん映像作品だって
わんさか出てきます。

すごいよ、「後宮」というジャンル‥‥。

 

(つづく)

2020-05-18-MON

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