家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
ほぼ日の学校 オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。

オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。

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no.12

『イル・マーレ』

「愛しているのに離れている、
愛しているから離れている」

なんとも歯がゆいけれど、
今タイムリーな愛のカタチ

  


『イル・マーレ』
2000年韓国(日本公開2001年) 
イ・ヒョンスン監督作品
出演:イ・ジョンジェ/チョン・ジヒョン 

韓国映画というと、
最近の「パラサイト 半地下の家族」が
思い浮かぶでしょうか。
喜怒哀楽があまりに激しくて、暴力シーンとか、
とにかくどぎついからニガテ〜という方も
いらっしゃるかもしれません。
でも、韓国映画にも、落ち着いた
おしゃれな映画がたくさんあるのですよ。
なんといっても、ラブロマンス!

いまはコロナ自粛でね、
家族や恋人が、
あえて離れているということもありますよね。
今回はそんな今こそおすすめの韓国映画、
非接触系の愛のカタチです。

原題は「シウォレ」、漢字で書けば、「時越愛」。
つまりタイムリープ、時をかけるモノです。
イル・マーレとは、イタリア語で海のことですが、
この映画はイル・マーレという名の
海辺の家が舞台です。
新築のイル・マーレに引っ越してきた男性が
郵便受けに転送依頼の手紙を見つけます。
その手紙は2年後の2000年に書かれた
女性から「次の入居者」への手紙。
なんだこりゃ〜、まさか〜、ということから、
不思議な郵便受けを通じた文通がはじまります。
男性役は、イ・ジョンジェ、渋カッコいい俳優です。
女性役はこの映画の翌年、『猟奇的な彼女』で
キュートで暴力的なヒロインを演じて
大ブレークするチョン・ジヒョン。

彼は、イル・マーレの設計者でもある
偉大な建築家の父親との葛藤に苦悩しています。
建築家への道をためらい、
あえて建設現場で作業員として働いています。
結局、父親とは和解しえないまま死別……。
一方、彼女は、声優をめざしていますが、
アメリカに旅立った恋人に
彼女ができたようで苦しんでいます。
ふたつの孤独……それをつなぐように文通が、
ふたりにとって大きな存在になっていきます。
ただ、彼の方は、イル・マーレの孤独な暮らしを
楽しむこともできます。
美しい海辺の風景の中で思索し、
イタリアン料理をつくりワインを味わう。
(当時の韓国には美味いイタメシ屋なんか
ほとんどなかったな。まして、
男がイタリアンを自分でつくるなんて……)

生きることに不器用なのは、
どうやら彼女の方でした。
「人は隠せないことが3つある。
それは咳と貧しさと愛。
隠そうとすれするほど目立つ」と、
人づきあいの中でも、失恋の苦しみを隠せない。
そんな彼女をひたすら励ます彼。
たとえばこんな風に。
「恋をして恋を失った人は、
なにも失っていない人より美しい」。

やがて、二人は出会おうとします。
そのためには、1998年の彼が、
彼女のいる2000年まで2年間の時を
我慢しなければなりません。
彼女が向かったのは済州島……。
これ以上明かすことはできませんが、
映画は粋なラストシーンを迎えます。

映像が美しく、
印象に残るシーンがいくつも連なり、
何度観ても新しい発見があります。
韓国映画史上、僕映画史上、
燦然と輝くラブロマンスだと思います。

ちなみにこの映画は、
ハリウッドでリメイクされています。
日本では『イル・マーレ』という題名で
2006年に公開されました。
原題は「The Lake House」。
キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック扮する
男女による味のあるラブロマンスですが、
こちらは濃厚接触ありで、
今の気分とはちょっとちがいますね。

韓国版『イル・マーレ』は、とことん非接触です。
でも、僕なら2年が限界かな。

(つづく)

2020-05-04-MON

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