ボールペンで絵を描く中村隆さん。
ひたすら点をうち、ひたすら線をひき、
カラフルで心地よい世界を
フリーハンドで描きだします。
どうやったらこんな絵が描けるのか、
ちょっと気になりませんか?
そこで、日々の作品づくりのようすを、
3ヶ月ほど連載してもらうことにしました。
中村さん、よろしくお願いします。

>中村隆さんプロフィール

中村隆(なかむら・たかし)

画家、イラストレーター。

1976年、新潟県生まれ。
98年日本デザイン専門学校卒業。
以後、フリーのイラストレーターとして活動しながら、
定期的に個展をひらいて作品を発表している。
作品は「Ondo online store」などで販売中。

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#12

ヘルシンキ

 
 
今回はひと休みの回で、
先日あったことを書きます。
フィンランドの首都ヘルシンキにある
「Veli スタジオ」のヴィーラさんから、
ある日こんなメールが届きました。
『ヘルシンキ市がスポンサーの
「ヘルシンキ キュリアス」という
キャンペーンの仕事をやりませんか?』
(公式サイト:https://helsinkicurious.fi)
参加条件は、
ヘルシンキに行ったことがなく、
ヘルシンキについて検索したこともなく、
ヘルシンキに興味があるアーティスト。
参加者のやるべき仕事は、
ヘルシンキに行ったことのある人に話を聞き、
それをもとにヘルシンキの作品をつくる。
後日、答え合わせ(?)のようにヘルシンキに行く。
というような内容でした。
作品は観光促進(?)や
グローバルマーケティング(?)
などに使われるそうです。
日本からは自分が参加して、
あとはロンドンとベルリンから
1人ずつ参加するとのこと。
海外の仕事は最近すこしずつ増えているのですが、
この仕事はあまりにもよくわからない。
はじめは「え‥‥?」という感じでしたが、
参加条件はクリアしていたし、
こんなことでもないと
今後フィンランドに行くこともないだろうと思い、
やってみることにしました。
メールでやりとりをして、
オンラインミーティングを経て、
お願いして借りた友人の事務所に先日、
ヘルシンキから4人の撮影隊と、
日本から音声さん、通訳さん、の計6人が集まりました。
(ちなみに、私はまったく英語が話せません)

 
灼熱の暑さの中、丸2日間、
友達の事務所、その近所や公園、
新宿御苑、高円寺のバーなどをまわり、
ヘルシンキをよく知っている
イラストレーターのAya Iwayaさん、
写真家の松岡一哲さんから
ヘルシンキのお話をうかがいました。
みんなすごく真剣に撮影をしていて、
フィンランドの人は
真面目なんだなぁと思いました。
この2日間で撮った映像と、
絵を描いているところ(自分で撮る)を合わせて
ようやく完成となるそうです。

 
丸2日もかけて撮影したので
けっこう長めの映像なのかなと思ったら、
なんと「5分」だそうです。
こんなに時間をかけて丁寧に撮って、
たった5分!? 短いっ!
ということで、
とても不思議な2日間でした。
撮影中も「これはなんなんだろう」
「なぜ自分はカメラに撮られているんだろう」
「この人たちはなぜ海を渡ってきたんだろう」
「ほんとうに自分でいいのだろうか」
などいろいろ思ったりもしました。
この先の仕事内容も含めて
いまだによくわからない部分が多く、
撮影が終わったあともポカーンとしています。
「ヘルシンキに行けていいね」と、
まわりの人には言われるのですが、
だいぶん人付き合いが苦手なうえ、
英語もできず、旅行も普段ほとんど行かないので、
かなり心配してたりします。
でも、ヘルシンキはとても良い街な気がします。
今回の絵のテーマは「都市と自然」です。
ヘルシンキは緑の多い街のようで、
人口は多くなく、治安も良いらしいです。
人の性格はすこし内気なところがあり、
日本人に似ているところもあると聞きました。
それぞれ個人が尊重されていて、
冬が長い分、夏をとても謳歌するようです。
どんな絵を描けるのか不安もありますが、
とりあえず描いてみます。
ヘルシンキ旅行も1人で行くので、
「はじめてのおつかい」みたいになりそうですが、
大変なことも含めて楽しみたいです。
海を渡るのはすこし先ですが、
とりあえずパスポートは新しくしました。

(次回は7月12日に更新します)

2022-07-08-FRI

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