
entoanが「ほぼ日」に登場したのは、
2012年の秋冬シーズンのこと。
イラストレーターの大橋歩さんによる
「a.」(エードット)というアパレルブランドで、
「革のトートバッグ」をつくったのが、
“若き靴職人”、entoanの櫻井義浩さんでした。
そこからおつきあいがはじまって、
2015年からは「ほぼ日ストア」内で
独立した販売ページがスタート。
革靴をつくるさいにどうしても出てしまう「余り革」を
できるだけ無駄なく活用しようとつくりはじめた革小物
(ポーチ、お財布、トートバッグなど)を
紹介してきました。
「ほぼ日」で紹介した履物は、
通販でもサイズが選びやすい
ルームシューズとフリンジサンダルのみ。
本業である手づくりの本格的な革靴は、
櫻井さんたちによる対面でのフィッティングと
対話による微調整、そして発注してから
すこし長めの制作期間を必要とするため、
販売を展示会と直営店の実店舗にかぎっています。
そのため「ほぼ日」ではすっかり「革小物のentoan」の
印象が定着しているのですけれど、
今回、entoanのはじめてのスニーカースタイルの革靴を
「ほぼ日」で販売するにあたって、
櫻井さん、富澤智晶さんにお話をききました。
あわせて、あらためて
「革靴のentoan」がどんなブランドなのか、
entoanの靴をじっさいに履いている
三人のかたにお話をうかがうことにしました。
写真家、画家、都市経済学者、
それぞれのentoanとのおつきあいを通して、
彼らの創作姿勢に触れる連載です。
> 森知也さんのプロフィール森知也
京都大学経済研究所 教授。
1967年生まれ。
専門は都市経済学、空間経済学。
岐阜大学工学部土木工学科卒業ののち、
ペンシルヴァニア大学大学院地域科学研究科博士課程修了。
2009年に現職に。
経済産業研究所・ファカルティでフェローを、
東京大学空間情報科学研究センター、
麗澤大学都市不動産科学研究センターで客員教授を務める。森さんの個人サイト
[都市を通して考える日本の未来]
- 靴をそんなにたくさん
持っているわけじゃないんです。
そんななかentoanは、2足あります。 - 彼らを知ったのは「ほぼ日」なんですよ。
スタンダードな真っ黒のプレーントゥが載っていて、
なんて言いますかね、丸い印象なんだけれど、
かわいすぎないところが好きだなあと思いました。 - その後、たまたま京都で受注会をなさったときに
お邪魔して、櫻井さんにお目にかかりました。
entoanでのオーダーは決まった木型とデザインの中から
サイズと革の色を選ぶセミオーダーなんですけれど
並んでいた靴を試着したものの、
ぼくにはどうしてもぴったり合わなくて。
というのもぼくは足幅が狭いので、
男性物の内羽根は中敷きなどで
調整できる限度を超えていたようなんです。
デザインはとても好きでしたが、
それで購入にはいたりませんでした。 - それが、あるとき彼らのインスタグラムに、
すごく足幅の細いデザインの革靴が発表されていて、
「これがいい!」と思いました。
でも「それは女性用の靴なんです」と。
以前お目にかかったとき、
櫻井さんって話しやすいかただなあと感じたので、
「それでもぼくは履いてみたい、
大丈夫なはずだ」とお願いして試着させてもらいました。
そこからぼくの足に合うように
木型を調整して作ってもらったのが、
今、ぼくがすごく気に入って履いているこの靴なんです。
- そんな経緯があったものですから、
完成までには時間がかかりました。
まず試作品を、とお渡しくださって、
「気が済むまで履いてみてください」と。
それに対して、ここがこう、
というフィードバックをして、
本番のものを作ってくださったんですよ。
だから発注から完成までに
1年ぐらいかけているんです。 - そのときのフィードバック内容は、
「ホールド感が違う」ということが主でした。
靴の内側で足が当たって気になる箇所は、
左右の足で違うんです。
それで京都から東京に仕事で来るとき、
越谷(埼玉)のアトリエに寄って相談し、
「じゃあ、ここはこうしてみましょうか」というふうに
調整をしていきました。
やっと完成、となってからも、違和感があると
「まだちょっとここが‥‥」と持って行って、
もう一度調整をしていただいたりしました。
その結果、今は、ほんとうに、いいものができました。
下から支えられてる感じ、
持ち上げられてる感じで履けるんです。
こんな経験を、革靴でしたことはありません。 - 色は、試作品を履いたあとで決めました。
もともとInstagramで見たのは真っ黒。
色の組み合わせを替えられますよと
櫻井さんが提案してくださって、
いくつか勧めていただいた色の中から
ぼくが選んで、という工程でした。
最終的にはこの茶と黒のコンビにしたのは、
黒の革靴を履く機会はそんなにないからなんです。
ぼくらの仕事は、スーツを着てネクタイをする、
ということがほとんどなくて、
そんなスタイルは冠婚葬祭くらい。
今日は、一般のかた向けの講演があったので
こうしてジャケットを着てこの靴を履きましたが、
ふだんはチノパンとシャツに、
スリッパを履いていることがあるくらいです。
- この靴は、ひとと大事な話をするときとか、
初めてお目にかかるかたがいるときに履いています。
どういう背景かわからない方が
自分に会いに来てくれるときに、
entoanの靴のいいところが発揮されるんですよ。
それは「そんなに強い主張がない」こと。
みんながみんな、
ぼくの靴を気にしてくれるかっていうと、
もちろんそうじゃないんです。
けれども10数人にひとりくらい、
後で言ってくれる人がいるんです。
「あのとき、あの靴で和みました」のようなことを。 - ぼくは人に会って緊張することが、そんなにないんですが、
相手からわりと硬質に捉えられるんです。
「怖い」と思われてることが多いらしくて(笑)。
そんなときにentoanの靴を履いていると大丈夫なんです。
丸みもあるし、けれども品もあるし、
なんていうんですかね、
あんまり砕けすぎてなくてきれいで、
(与える印象が)尖ってもいない。
相手にしてみると、
「自分と最初に話すときに、
ちゃんとした格好をして来てくれたんだな、
でもそんなに緊張をさせないような格好なんだな」
って思うらしいんです。
それも「がんばってきちんとした格好で来ました」
ではなく、けれども「緊張しなくていいよ」という
メッセージが、この靴にある。
- 今回の取材のように、
全然バックグラウンドの違うかたがたと会うときにも、
やっぱりこの靴って、いいんです。
このホールド感で、自分も安心するんですよ。
今回はentoanの話でしたけれど、
そうじゃなくてぼくの専門分野のお話で
みなさんとお会いする場合でも、
たぶんぼくはこれを履いたと思います。
もう1足持っているentoanはオールブラックなので、
黒じゃないといけないときに履きます。
でもぼくが好んで履くのは、大概はこれですね。
そんなふうに大事にしているものですから、
あんまりクタクタにならないように、
ふだんはもうちょっといい加減な格好なんです(笑)。 - 買った当初は、すごくたくさん履きました。
それは、足に馴染ませるため。
今は、いきなり履いてもすぐ馴染むようになっています。 - 歩きやすいです。
靴擦れもしないですし、
圧迫感も、すごくいい感じになってて。
つやつやなのは、自分で手入れをしているんです。
磨き方から、使うオイルから、
すべて櫻井さんに相談して。
- ぼくの仕事ですか。
都市経済学、
ひとが集まって都市ができる仕組みを解き明かすのが
ぼくの専門です。
だけど、いまはとくに人口減少の問題に興味を持っています。
人口はものすごい勢いで減ってるのに、
みんな呑気で、あんまり気にしていない。
この減っていく人口について、私たちはどうしたいのか、
考えるきっかけを作りたいと思っています。
多くの都市が消滅し、
東京でさえ近い将来急速に縮んでいく未来を示すことで、
問題の緊急性を伝えたいと思っています。 - 今の人口減少にはひとの価値観の変化が
大きく関係しているように思っています。
そんななかで、ぼくは村田沙耶香さんの書く小説を
興味深く読んでいます。 - 個人主義が先鋭化する現代は、
村田沙耶香さんの『消滅世界』や『世界99』で
描かれる世界と重なっているように見えます。
そこでは、そういう価値観の変化の結果として、
子どもが工業的に生産されたり、ひとがリサイクルされます。
人類消滅も未来の選択肢のひとつだとは思いますが、
そうでないなら、
こういうことを真面目に考えなければいけないでしょう。 - ぼくは、まずは自分の知ってる都市経済で、
人口が減っていったら地域はこうなっていきますよ、
っていうのを予測して発信することをしています。 - ぼくはずっとアカデミックな世界にいて、
ほとんど、多くの人に向けて日本語で書くことはなかった。
でも、もうこの年だし、ちゃんと社会に向けて
言っていかないと、と考えているところなんです。
(おわります)
2026-02-11-WED
-
- [販売方法]
受注販売
※制作できる数に上限があるため、
受付期間中であっても、上限に達し次第、販売を終了します。 - [お申し込み受付期間]
2026年2月16日(月)午前11時〜2月26日(木)午前11時 - [出荷時期]
6月中旬予定 - [商品価格(税込)]
ヌメ革 クリーム ¥49,500
オイルキップ ブラック ¥55,000
スエード グレーxブラック ¥55,000 - [展開サイズ]
22.0cm〜27.5cm(0.5cm刻み) - [商品の展示について]
2月6日~25日のあいだ、
神保町のTOBICHI東京にて実物を展示いたします。
そのなかの2月13日~15日の3日間のみ、
サイズサンプルのご試着をしていただけます。
(お試しいただけるサイズ:22.5cm~27.0cm) - お近くにいらっしゃることがありましたら、
ぜひお立ち寄りください。 - ●TOBICHI東京
東京都千代田区神田錦町3丁目18
ほぼ日神田ビル 1F
営業時間 11:00〜19:00
(2月13日のご試着可能時間は
14:00〜19:00となります)

