entoanが「ほぼ日」に登場したのは、
2012年の秋冬シーズンのこと。
イラストレーターの大橋歩さんによる
「a.」(エードット)というアパレルブランドで、
「革のトートバッグ」をつくったのが、
“若き靴職人”、entoanの櫻井義浩さんでした。

そこからおつきあいがはじまって、
2015年からは「ほぼ日ストア」内で
独立した販売ページがスタート。
革靴をつくるさいにどうしても出てしまう「余り革」を
できるだけ無駄なく活用しようとつくりはじめた革小物
(ポーチ、お財布、トートバッグなど)を
紹介してきました。
「ほぼ日」で紹介した履物は、
通販でもサイズが選びやすい
ルームシューズとフリンジサンダルのみ。
本業である手づくりの本格的な革靴は、
櫻井さんたちによる対面でのフィッティングと
対話による微調整、そして発注してから
すこし長めの制作期間を必要とするため、
販売を展示会と直営店の実店舗にかぎっています。
そのため「ほぼ日」ではすっかり「革小物のentoan」の
印象が定着しているのですけれど、
今回、entoanのはじめてのスニーカースタイルの革靴を
「ほぼ日」で販売するにあたって、
櫻井さん、富澤智晶さんにお話をききました。
あわせて、あらためて
「革靴のentoan」がどんなブランドなのか、
entoanの靴をじっさいに履いている
三人のかたにお話をうかがうことにしました。

写真家、画家、都市経済学者、
それぞれのentoanとのおつきあいを通して、
彼らの創作姿勢に触れる連載です。

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01 2年半の充電期間で考えたこと。

──
entoanがこれまで
靴の通信販売をしてこなかったのは、
ひとりずつ対面でフィッティングをして、
微調整をしてお届けするという
スタイルだったからですよね。
そこから、今回の通販ができる靴が生まれたのには、
どんな背景があったんでしょうか。
櫻井
やっぱり休みをとったことですね。
2年半、展示会を開くのをお休みしていたんです。
2025年の9月に再開したんですけれど。
富澤
展示会をお休みした理由のひとつは、
一人ひとりに合わせて
しっかりした手づくりの革靴を作るという
私たちのスタイルの需要が減ってきたんです。
自分たちがブランドをはじめた2009年とは、
お客さんの反応も全然変わっていますし、
立ち上げた頃の革靴の「需要」や「流行り」が
なくなってきたように思います。
展示会でも、自分たちの得意とする、
しっかりした手づくりの革靴を履き込んで
だんだん足に合ってくる、みたいな履き方が、
世の中から淘汰されつつあるのかなと感じて。
実際に展示会でも苦戦をしてたんです。
お休みをする前の数年間は、
むかしからのお客様も、
もう何足もお持ちという状態で、
そんなに買い替えない、
それこそ10年、20年、履けるような靴なので。
──
それもあって、展示会をお休みされたんですね。
富澤
そうですね。
ありがたいことにずっと忙しくしてきたので、
櫻井自身も新しいところに行く余裕もなく、
製作に追われてきたものですから。
なので、櫻井が休みたいと行った期間を、
展示会のあり方とか、
靴の販売方法を見直す期間にもしようって。
──
じゃあ、2年半のお休みは、
櫻井さん個人の充電期間というよりは、
entoanとしての見直しをしたかったということですね。
櫻井
その期間に、通販のできる、
フィッティングをしなくても
スニーカーのサイズ感で購入することができる
革靴を、と考えたんです。

富澤
じつは以前も革靴でスニーカーみたいに履ける靴を
2型、出してるんですね。
でももうちょっと硬いというか、
革靴寄りのイメージです。
櫻井
その2足は、アッパーは革靴と一緒で、
ソールだけが革ではなくて、
スポンジ系のEVAになっていました。
──
革靴の底だけが違う、という印象ですね。
富澤
芯が部分的に入っていませんでしたね。
革靴って、つま先とかかとに硬い芯を入れて、
しっかり作ってるんですけど。
櫻井
1足目のときはつま先だけは芯を入れ、
2足目のほうはかかとだけでした。
それが試行錯誤とはいえないほど、
短命な商品でしたけれど。
実験的というか、
挑戦してみるっていうようなところもありました。
富澤
芯が入っていないことで、
逆にフィッティングが難しかったりで、
櫻井もあんまり納得いかなかったんじゃないかな。
櫻井
作ってちょっと経つと、
自分の中でしっくりこなくなって、
生産を終わりにしたんです。
──
今回、休んだ2年半の間につくったこのシューズは、
それをもう1回やってみようかなと思ったのか、
それともまったく別の発想だったんでしょうか。
櫻井
まったく別の発想ですね。
──
前回の2足を改良して伸ばしていったのではなく、
今回はゼロから作ったということですね。
櫻井
はい、そうです。
2年半は、展示会をしないだけで、
ネットで小物の販売をしていましたし、
工房に来てくださったかたには、
革靴の製作の対応をしていたんですよ。
その中で、販売方法とともに
革靴のこれからのあり方を
時代の変化とともにどうしていくのがいいんだろうって
考えた中から、この靴の発想が生まれました。

──
櫻井さんはいわゆるスニーカーはお好きですか。
櫻井
好きですよ! 
数を持ってるのはニューバランスです。
富澤
古着屋さんに行って、
メイドインフランスのアディダスとか、
そういう古いスニーカーも見てましたね。
櫻井
ああいう靴って自分で作れないんです。
──
自分で作れないものなんですか。
櫻井
まずあのソールが作れないですし、
ロットがものすごい数になるので、
まったく現実的ではないんです。
──
大量生産の工業製品だから、ですね。
でも今回はentoanとして
それに近いものを作ろうと思った? 
櫻井
そう‥‥ですね。でも自分の中では、
この新しい靴は、
スニーカーだとは思っていないんです。
革靴とスニーカーの中間というか。
──
「これは○○です」という言い方が、
むずかしい靴ですよね。
櫻井
商品名にもそれは入れていないんです。
「オパーズワン」と呼んでいるんですけど、
その「オパーズ」もかなり昔に考えた造語で。

富澤
靴の製法から来てたんじゃなかったかな。
櫻井
そうですね。ソールの縁をアッパーの上に巻き上げて
縫い付ける「オパンケ製法」が由来でした。
ルームシューズを作ったとき、
「オパンケルームシューズ」を略して
「オパーズ」にしたんです。
──
「ほぼ日」では
「entoanが初めてスニーカーを作りました」
っていう紹介の仕方を
するんだろうなと思っていたんですが、
どうやら違いますね。
櫻井
そうですね、スニーカーそのものだとは思ってなくて、
「スニーカーのような履き心地で、
革靴のようにお手入れをし、修理をしながら、
長く履いていただける」靴です。
富澤
そう、オパーズワンのいいところは、
修理ができることです。
ふつう、スニーカーは修理がむずかしいので。
だけど、これはそもそも、
櫻井が修理をしやすい構造として考えたんですよ。
「こぐつ」も同じつくりになっていたんですが、
これ、縫い目を外すと、
アッパーがパコッて取り外せるんです。
もちろんソールも張り替えられるので、
「スニーカーのようなスタイルなのだけれど、
修理ができる革靴なんです」っていう謳い文句です。
──
櫻井さんたちは新しい靴を作るとき、
デッサンをしてから立体にするんですか。
櫻井
デザイン画は描いていないんです。
絵が下手なので、描くと、
頭の中にあるイメージが崩れちゃう。
──
じゃあ、頭の中のものをいきなり靴にする?
櫻井
そうです。
──
じゃあ、1作目はもう、
富澤さんも何ができるか知らないんですね。
富澤
あはは、そうなんです。
もう、いきなり木型に線を引いてます。
entoanの靴は木型がベースなので、
そこに線を入れるんです。
それを見てこういうのができるんだろうな、
みたいな感じです。
櫻井
元にした木型は
「こぐつ」を大きくしたものなんです。
あれを大人サイズにグレーディングしたらどうなるか、
木型屋さんに計算してもらったら、
数値的にはそのまま大人も履ける形だとわかって。
それを自分で試してみたら「いける」と思って。
もしいけなかった場合は部分的に細くするとか
太くすることを考えてたんですけど、
大丈夫だったんですよ。
──
じゃあこの靴は
「こぐつ」の大人バージョンとも言えるわけですね。

▲左の靴が「こぐつ」 ▲左の靴が「こぐつ」

櫻井
そうなんすよね、木型に関しては。
──
じっさい、どんなふうにつくっていくんでしょうか。
櫻井
具体的に言うと、木型の上に白いテープを貼って、
中心のラインを引いて、
そこからいろいろ自分でデザインを描いていきます。
で、そのテープをはがして、パターン用紙に貼り、
型紙を作り、それを立体化するんです。

──
洋服の立体裁断と同じですね。
櫻井さん、昔からそのやり方を?
櫻井
そうです。
学生の時はデザイン画を描く授業もあったんですが。
富澤
靴を作るのって基本的には分業なので、
デザイナーがいて、職人がいる。
だからデザイナーは必ず絵を描き、
職人さんはそれを木型に乗せて立体にする。
櫻井はそこが一緒なんでしょうね。
──
洋服でいうとデザイナーであり、
パタンナーであり、お針子であり、
ということなんですね。
そう考えたら、
木型から考えた革靴の作り方で、
スニーカーのような履き心地を目指したら、
ああいう立体造形になった、ということなんですね。
「革靴でスニーカーを作ろう」というような
コンセプト優先のものじゃ、ないってことですね。
櫻井
はい、そうじゃないですね。

(つづきます)

商品写真:神ノ川智早

2026-02-06-FRI

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    [商品の展示について]
    2月6日~25日のあいだ、
    神保町のTOBICHI東京にて実物を展示いたします。
    そのなかの2月13日~15日の3日間のみ、
    サイズサンプルのご試着をしていただけます。
    (お試しいただけるサイズ:22.5cm~27.0cm)
    お近くにいらっしゃることがありましたら、
    ぜひお立ち寄りください。
    ●TOBICHI東京
    東京都千代田区神田錦町3丁目18
    ほぼ日神田ビル 1F
    営業時間 11:00〜19:00
    (2月13日のご試着可能時間は
     14:00〜19:00となります)